発達障害やグレーゾーンにおける対人関係の悩みを軽減するアプリ『MADO』を解説。診断名に頼らない30の指標可視化や「二重共感問題」へのアプローチなど、障害福祉に関心のある当事者や支援者に役立つ相互理解の新しいヒントをお届けします。
この記事で分かること
- 障害福祉分野で注目される「発達障害グレーゾーン」と「生きづらさ」の現状
- 福祉・心理の専門用語解説(ADHD・ASD・HSP・二重共感問題・ニューロダイバーシティなど)
- 診断名に依存しない対人認知デバッグアプリ『MADO』の画期的な仕組みと8つのアプローチ
- 「ドア」ではなく「窓」を通した適切な対人距離と「優しい論理」による相互理解の深め方
- 『MADO』の利用方法・費用・医療機関との違いに関するよくある疑問(Q&A)
障害福祉領域で深まる「生きづらさ」の課題と発達障害グレーゾーンの現状
障害福祉やメンタルヘルスの現場において、「生きづらさ」を感じる人々の支援は重要なテーマとなっています。近年、周囲とのコミュニケーションや行動パターンの違いから生じる対人関係の悩みが注目される機会が増えています。
発達障害の診断数増加と「診断の線の外側」にいる人々
厚生労働省の「生活のしづらさなどに関する調査」によると、発達障害と診断された人の数は平成28年の約48万人から、令和4年には約87万人へと増加しています。この増加の背景には、大人になってから受診し、自身の認知特性に気づく人が増えたことが挙げられます。
しかし、医療的な診断に至らないものの、日常生活や職場で強い困りごとを抱えているいわゆる「グレーゾーン」と呼ばれる人々は、約10人に1人の割合で存在するとも推計されています。
- 発達障害の診断あり(約87万人):公的支援や医療ケアの対象となりやすい傾向にあります。
- グレーゾーン(約10人に1人):診断の境界線外のため支援枠に入りにくいものの、強い困りごとが存在します。
診断は制度上の利便性のために基準線を設けますが、人の認知や行動の特性は「あるかないか」の二元論ではなく、連続的なグラデーション(濃淡)として存在します。公的支援の枠組みに入りにくいグレーゾーンの人々は、名前のつかない困りごとに一人で向き合わなければならないケースが少なくありません。
障害福祉で知っておきたい重要キーワード解説
本記事を読み進めるうえで基礎となる、障害福祉や認知科学の専門用語について解説します。
- 発達障害(ADHD・ASD)
- ADHD(注意欠如・多動症):注意の持続や行動のコントロールに関する脳の特性です。
- ASD(自閉スペクトラム症):社会的なコミュニケーションやこだわりに関する脳の特性です。
- HSP(Sensory Processing Sensitivity / 感覚処理感受性)
- 環境からの刺激を深く処理し、感受性が高い気質のことです。学術的には「悪い環境から影響を受けやすい一方で、良い環境からも恩恵を受けやすい」という両方向の性質を示します。
- 二重共感問題(Double Empathy Problem, Milton 2012)
- 特性のある人とない人の間で生じるすれ違いは、一方の共感能力の欠如によるものではなく、互いに相手の見え方や認知の仕方を読み損ねているという「双方向の問題」であるとする認知科学の考え方です。
- ニューロダイバーシティ(脳の多様性)
- 脳や神経の働きによる異なりを「欠陥」ではなく「個性の多様性」として捉え、相互に尊重し合う考え方です。
対人認知デバッグアプリ『MADO』が提案する新しい相互理解アプローチ
このように診断の有無に関わらず存在する対人関係の摩擦に対して、新しい視点を提供するアプリとして登場したのが、対人認知デバッグアプリ『MADO(マド)』です。
『MADO』の開発背景と開発者自身の体験
『MADO』は、個人事業主Rodi(代表:鈴木聡氏)によって開発され、iOS版およびAndroid版が正式提供されています。
開発者自身、ADHDの強い特性、ASD傾向、HSP気質、そして16タイプ性格診断におけるINTJ(建築家)という非常に複雑な認知の組み合わせを抱えて生活してきました。論理的・客観的思考が強すぎるゆえに一般的な「感情的な共感」に難しさを感じ、「得意なことは人の5倍できても、簡単なことが人の5倍できない」という生きづらさを経験しています。
- 感情的な共感が難しく、周囲との認知のズレに悩む
- 「相手と自分の仕様(構造)を観察して分析する」処世術を模索
- 発達障害の診断データ(中立な第三者の事実)に接し、強い納得感と救いを得る
- 「自分の仕様を知る救い」を誰もが日常で使えるツールとして『MADO』を開発
開発者は、感情的な話し合いではなく「中立な第三者(医療や検査データ)」から客観的事実として特性を示されたことで、「自分がダメだったのではなく、脳の仕様がそうだっただけだ」という納得感と救いを得たと語っています。この体験から、「自分を偽る必要も、相手を変える必要もなく、つくりの違いを客観的に理解できるツール」として『MADO』が誕生しました。
診断名を出さず「30の指標の濃淡」と「ひとつの窓」で可視化する仕組み
『MADO』の大きな特徴は、診断名やラベルを出さない点にあります。
診断名などのラベルは自己理解の助けになる一方で、「自分はこういう人間だ」という決めつけを生み、細かな特性のグラデーションを見えにくくする側面があります。例えば日本のHSPブームにおいては、「生きづらさ」の側面ばかりが強調され、学術的な本来の性質である「環境からの恩恵の受けやすさ」が見落とされがちであった反省も存在します。
そのため『MADO』では、ラベルによる分類を行わず、80の設問から導き出される30の指標によって個人の特性を示します。
| 領域名 | 含まれる要素の例 |
|---|---|
| 実行機能 | 計画性、動作のコントロール、課題への着手など |
| 感覚処理 | 視覚・聴覚などの刺激に対する感受性の度合い |
| 社会認知 | 他者の意図や状況の読み取り、対人距離感 |
| 構造化 | 情報を整理・体系化して捉える傾向 |
| 情動制御 | 感情の起伏やストレスへの対処傾向 |
指標はすべて両極で示され、数値が低いことを「欠如」と扱うのではなく、「反対側の性質が満ちている状態」として読み解きます。これらの30の指標の濃淡は、640万通りの組み合わせの中から「かたち・景色・色・飾り」を持つ「ひとつの窓」という絵に変換されて可視化されます。
人間関係の摩擦を軽減する『MADO』の8つのアプローチと福祉・日常での活用法
『MADO』には、日常生活や支援の現場で発生する対人関係の課題に対応するため、当事者視点で設計された8つのアプローチ(機能)が搭載されています。
当事者視点から設計された8つの実践機能
- 複合分析
- ADHD・ASD・HSP・16タイプなどの異なる枠組みを重ね合わせ、自身の脳内で起きている複雑な認知パターンを構造化します。
- 比較分析
- 自分と相手の特性パラメータを並べ、どこで認知のズレや摩擦が起きやすいかを客観的に視覚化します。
- 仮想分析
- 相手の行動傾向から推測して仮のパラメータを作成し、直接データを共有していなくても比較が行えます。
- 自己思い込み比較
- 自分がイメージしていた相手の像と、実際の分析結果との間にある差分を確認できます。
- データ受け渡し機能
- 分析結果(自分の窓)をカジュアルにやり取りし、相互理解のきっかけを作ることができます。
- 相互バイオリズム表示
- 自分の状態を開示する範囲をコントロールしながら、お互いのコンディションを確認できます。
- パーツ図鑑
- 接したことのない未知の思考パターンや認知特性を、エンタメ感覚で理解・収集できます。
- AI相談機能
- 実際に起きた対人関係の出来事やメッセージをAIに渡し、二人の間に何が起きているのか客観的な分析を受けられます。
なぜ「ドア」ではなく「窓」なのか?健全な距離感を作る障害福祉のヒント
対人関係における「心を開く」という表現では、しばしば「ドア」のイメージが用いられます。しかし、ドアは開放して相手を踏み込ませたり、逆に硬く閉ざして締め切ったりする性質を持ちます。
『MADO』が「窓」という概念を選んだ理由は、開けても直接行き来はできず、お互いに自分の場所に立ったまま理解だけをやり取りできる点にあります。
- ドアモデル:踏み込む・招き入れる・締め切る(距離感が過剰になりやすい)。
- 窓モデル:お互いの場所に立ったまま、適切な距離で理解だけをやり取りする。
過度に近づきすぎず、かといって排除もせず、お互いのつくりの違いを中立に眺める姿勢は、二重共感問題の解消や障害福祉支援における適切な境界線(バウンダリー)の構築に役立つ可能性があります。開発元では今後、一対一の関係にとどまらず、家庭や職場チームなど複数人の関係性にもこの仕組みを広げていく構想を掲げています。
よくあるQ&A
障害福祉に関心を持つ当事者、ご家族、あるいは支援者から寄せられやすい疑問とその回答をまとめました。
Q1. 『MADO』は医療機関での診断や心理検査の代わりになりますか?
A. 代わりにはなりません。『MADO』は医学的な診断・治療・予防を目的とした医療機器ではなく、提示される内容は医師や専門家による診断・助言に代わるものではありません。心身の不調や継続的な困りごとがある場合は、医療機関や各種福祉相談窓口へご相談いただくことが推奨されます。『MADO』は日常の相互理解を助けるセルフケア・コミュニケーションツールとして位置づけられています。
Q2. 医療機関で発達障害の診断を受けていない「グレーゾーン」でも利用できますか?
A. 利用可能です。『MADO』はまさに「診断の線の外側」で困りごとを抱えるグレーゾーン層や、自身の特性を深く知りたいと考えている方々に届く道具として設計されています。診断名の有無に関わらず、80の設問に答えることで自身の認知の傾向を確認できます。
Q3. 相手に自分の詳しい情報や診断名を知られずに比較できますか?
A. 知られずに利用可能です。『MADO』は結果画面に病名や診断名などのラベルを出さず、30の指標の濃淡とイラスト画像(窓)として表現します。また、相互バイオリズム機能では自分のプライバシーや開示範囲を調整できるほか、相手から直接データを受け取らなくても推測で確認できる「仮想分析」などの機能も用意されています。
Q4. アプリの利用料金はどのようになっていますか?
A. 基本機能は無料で使用できます。無料版でも80の設問による分析、自分の窓の作成、窓の保存(2つまで)、バイオリズム記録(7日間)が可能です。さらに詳細な機能を利用したい方向けに、有料のプレミアムプラン(月額1,200円/年額9,800円)や追加コイン等のアプリ内課金が用意されています。
まとめ:デジタルツールと「優しい論理」がひらく障害福祉と相互理解の未来

障害福祉の領域において、人間関係のすれ違いや生きづらさを「どちらかの努力不足や性格の問題」として捉えるのではなく、「脳の仕様やつくりの違い」として客観的に捉え直す視点は非常に重要です。
- 発達障害グレーゾーンや診断外の困りごとに対する認知可視化の重要性
- 診断名というラベルに縛られず、個人のグラデーション(30の指標)を捉えるアプローチ
- 二重共感問題を踏まえた、一方的ではない双方向の相互理解と適切な距離感(窓モデル)
- 当事者視点の8つの機能による、客観的データの共有と安心感の創出
対人認知デバッグアプリ『MADO』が掲げる「優しい論理」は、感情的な押し付けや冷たい切り捨てに頼らない、新しいコミュニケーションの選択肢を示しています。相手を変えようとするのではなく、お互いの違いをそのまま認識することから始まる相互理解は、今後の障害福祉や社会全体のニューロダイバーシティ推進に向けた大きな一歩となることが期待されます。
【参考・サービス概要】
- アプリ名称:MADO(マド)
- 対応OS:iOS / Android
- 価格:基本無料(アプリ内課金・プレミアムプランあり)
- 特許関係:分析手法について特許出願中
- 開発・運営:Rodi(事業主:鈴木聡)
- 公式サイト:https://mado-lp.com/




