知る・働く場について

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周囲の理解やサポートがあれば、企業で一般就労ができる人、特性=得意なことを生かした働き方ができる人、様々な特性をもつ障害者の、「働く」形にはその多様さに見合った多くの選択肢が必要ですが、まだまだ機会も選択肢も多くありません。まずは、その現状を知ることが大切ではないでしょうか。

障害者の働き方は、「一般就労」と「福祉的就労」に分かれる

障害者の働き方の選択肢は大きく2つに分かれ、企業や公的機関への就労(一般就労と呼ばれています)と、就労継続支援サービスを利用した働き方(福祉的就労とも呼ばれています)があります。

一般就労は、興味のある企業への直接応募、人材紹介会社やハローワークの求人を通じて就職するかたち、人材会社やハローワーク取材の合同面接会に参加するほかに、就労移行支援サービスや就労定着支援サービスなど、働くため、働きつづけるための支援サービスを利用して就労を目指す方法もあります。一般就労では、障害の有無にかかわらず言えることですが、企業の取り組み方や、周囲の理 解、サポートなど職場の環境によって、仕事内容や働きやすさも大きく変わってきます。

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一方、福祉的就労の場は、福祉支援サービスとして利用できるため、障害の特性に関わらず、 通所して賃金を得ることが可能です。福祉サービスの事業所であるため、障害に対する理解やサポートがあり、高齢の障害者や、重度の障害者でも利用することができ、多くの障害者の活動の場になっています。ただし、営利を目的とする企業と違い、低い工賃や、仕事内容の選択肢が少ないなどデメリットもあります。

障害福祉サービスの内容については、福祉が身近にない人にはわかりづらく、なじみのない名称が多数あります。 そこで、「知る・働く場について」では、働く場にまつわる基礎知識をまとめています。

【働く場について】

人材紹介会社

自社に登録している人材をクライアント企業に紹介する人材会社ですが、一般の人材紹介会社同様、障害者の人材紹介を専門とする会社も存在します。これまでは身体障害者の人材 紹介がほとんどでしたが、数年前から、精神障害者の紹介も手掛ける会社が増えてきました。また、紹介フィー(紹介料)も多様になってきており、年収の3割程度が相場ではあるものの、紹介者の年収に関わらず一律の紹介料にする会社もあります。人材紹介会社を使う際のメリット、デメリットは主に以下になります。

人材紹介会社を利用する企業側のメリット

メリットとしては、紹介会社が候補者の選定から面接設定まで行ってくれるため、企業は採用活動の負担を軽減できるほか、自社の条件に合わない転職者は事前に紹介会社のほうで見極めてくれるので、自社とのマッチング済の応募者と会うことができます。企業は担当のエージェントに自社の社風や求める人材を直接伝えることができるので、書面だけでは伝わらない温度感などもエージェントを通して求職者に伝えられることも特徴です。また、転職者が入社1か月など短期で退職した際は紹介会社による保証(返金制度)を受けられる場合もあります。(対象期間や料金は会社によって異なります)

人材紹介会社を利用する企業側のデメリット

一方のデメリットとしては、一定の紹介料がかかること、会社によっては、担当者(エージェント)が障害に詳しいとは限らない(キャリアアドバイザーとしての実績はあっても障害福祉の専門家ではない場合もある)こと、入社後の定着支援が見込めないことなどがあげられます。(紹介会社により企業や転職者の定期面談などのフォローはあります)

ハローワーク

各地域にあるハローワークでは、一般の求人以外にも障害者の専門窓口があり、職業紹介や就職に向けた指導を行っています。また、企業は無料で求人票を出すことができます。また、企業としては助成金申請の相談等で訪れることがあります。

ハローワークを利用する企業側のメリット

企業側のハローワークを利用するメリットとしては、無料で求人を出すことができることが一番でしょう。また、ハローワークには雇用指導官という担当者がいますので、その方を中心に、障害者雇用を計画している企業に対し、熱心に指導をしてくれるところもあります。必要に応じ、次に説明する修了支援事業所などとつないでくれることもあります。もちろんそれらの指導についても費用はかかりません。

ハローワークを利用する企業側のデメリット

デメリットとしては、必ずしも自社の希望するような人材が応募してくるわけではないこと、採用後の支援がほとんど期待できないこと、また地域や担当者ごとに温度差があることなどがあげられます。求人票も条件面などの項目を埋めることが主で、文章や写真で社風などを細かく伝えることはできません。ほか、紹介会社とは違いますので、面接設定や応募者とのやりとりなど様々な手続きは自社で行う必要があります。

就労移行支援事業所

ここ数年ほど各地で開設されている福祉事業所で、障害のある方が一般就労に向け、ビジネスマナーや PC スキルなどを身につける通所サービスです。利用期間は最長 2 年ですが、1 年間の延長が可能な場合もあります。全国で約 3300 か所、利用者数は 30,000人を超えます。なお、利用者の半数が精神障害者です。

障害のある方が就労継続支援事業所を利用するメリット

就労移行支援事業所を利用するメリットですが、最大の特長は、実習受け入れからの採用が可能なことでしょう。多くの支援事業所では数日から数週間の実習を経てからの採用という流れをとっていますので、企業としても採用前に就労希望者との相性をはじめ、障害特性や技能レベルを確認することができます。もちろん、採用は相互確認の上となりますので、実習の段階で不採用という判断を下すことも可能です。支援事業所による定着支援(半年から 3 年間)を得られるのも大きなメリットです。なお、支援事業所も基本的に利用費用はかかりません。

障害のある方が就労継続支援事業所を利用するデメリット

一方のデメリットとしては、実習は有効ではあるものの、反面受け入れ態勢(業務の準備、担当者の設定、振り返り面談の設定など)を整える必要があります。また、就労移行支援事業所は急増した結果、玉石混交となった感は否めず、事業所により支援レベルに差があります。なかには、福祉的支援に力を入れる一方で一般就労(主に民間企業への就労の意)とのバランスがとれておらず、企業側のニーズがあまり把握できていない事業所もあります。

特例子会社

障害者の雇用に特別な配慮をし、一定の要件を満たした上で厚生労働大臣の認可を受けて設立される会社。 企業グループによる実雇用率算定が可能となるため、主に大手企業が設立しています。メリットとしては、大手企業ならではの福利厚生(バリアフリー環境、就業規則など)の充 実、指導員の充実、雇用の安定などがあげられます。

就労継続支援事業所

企業で働く一般就労が難しい場合、様々な福祉的支援を受けながら就労や就労訓練を受けることができる福祉サービスが就労継続支援です。一般的には福祉事業所や福祉施設という名称で知られています。就労継続支援は、事業所と利用者の間で雇用契約を結び、労働基準法に準じた業務を行う「A型」(雇用型)と、「B型」(非雇用型)に分けられています。

就労継続支援A型事業所

A型事業所は就労移行支援事業所と違い、利用期間の定めはなく、利用者との雇用契約が行われ、工賃は原則としてその地域の最低賃金を守ることが義務づけられています。企業への就職が難しかったり、個人の特性への配慮やフォロー、支援を受けながら働きたい利用者の方に適した働き方です。

令和3年度の全国のA型通所者の平均工賃(賃金)は月額 8万1,645円となっています。

厚生労働省「令和3年度工賃(賃金)の実績について」https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001042285.pdf

ここ数年でA型事業所は急増していますが、採算が合わずに閉鎖してしまう事業所や、自立支援給付費が賃金にあてられるなどの不適切な運営をしている事例があったり、利用者の意向に反して短時間労働にされてしまう、など急激な事業所の増加に伴い、様々な課題が見つかり、事業所の質やありかたも問われるようになってきています。

就労継続支援B型事業所

A型事業所は働くことを中心にした場ですが、B型事業所は働くこと以外にも、日中の活動の場の提供や、介護、支援が必要な人のために生活介護事業を併設した事業所なども多くあり、障害の重さにかかわらず様々な人が利用できるよう、多様なニーズにあわせて存在しています。

B型事業所での仕事や活動は、内職作業、自主製品の作成、パンや菓子の製造や店舗の運営、絵画や創作などの表現活動、など事業所によって多種多様です。障害の程度も様々な利用者の特性にあわせて、仕事や活動を行うため、個人にあわせたペースで利用できる反面、雇用契約を結ばないことから最低賃金が保証されず、一般就労やA型事業所に比べて工賃が低いところが課題でもあります。

令和3年度のB型事業所の工賃は、全国平均月額 1万6,507円(時給222円)で、B型事業所の収入だけで生活するお金を稼ぐのは難しい現状です。生産性や工賃のアップと、様々な障害特性をもつ利用者への支援や活動の場の提供という、一見矛盾した難しい課題を抱えるB型事業所ですが、既成概念にとらわれないユニークな活動や取り組み、工賃アップに向けての新しい取り組みなど、様々なやりかたで課題に取り組む事業所も多く存在しています。

厚生労働省「令和3年度工賃(賃金)の実績について」https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001042285.pdf

【法定雇用について】

今でこそ、障害者を雇用し戦力として活用することを考える企業が増えてきましたが、かつ てはそのようなことを考える企業は多くありませんでした。しかし、障害者の就労の場を与えることは常に議論されており、そこで大企業に対し、障害者を雇用すること義務付けていました。「雇わないといけない」というと、“義務だから仕方なしに雇う”というイメージがあるかもしれませんが、義務付けることで障害者の働く場所を確保してきたことも事実です。

障害者を雇用することは法律で決められている

ご存知の方も多いと思いますが、障害者を雇うことを義務付けた法律は「障害者雇用促進法」といいます。従業員43.5以上(※)の企業は、雇用する障害者の数が「法定雇用率」により定められており、民間企業における法定雇用率は 2.3%(令和5年度現在)となっています。つまり社員 48 人に対し 1 人を雇う必要があります。

(※)2024年4月から2.5%、2026年7月から2.7%へと引き上げられます。

なお、雇用率の計算の仕方は以下になり、2.3%を下回ると「未達」となります。

          身体障害者及び知的障害者である常用労働者の数
        + 失業している身体障害者及び知的障害者の数
障害者雇用率 = ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
          常用労働者数( + 失業者数)

※ 短時間労働者(週20時間以上 30 時間未満)は、1人を0.5人としてカウント。
※ 重度身体障害者、重度知的障害者は1人を 2人としてカウント。 ただし、短時間の重度身体障害者、重度知的障害者は1人としてカウント。
※ 精神障害者については、雇用義務の対象ではないが、算入できます。