手話が公用語のスープカフェ。美味しいスープとスイーツが異文化を繋げる温かい空間。

スープカフェSign with Me。
美味しいスープとスイーツを提供するこのカフェでは、働いているスタッフは皆ろう者(聴覚障害のある方)。

自らもろう者であるオーナーの柳匡裕(やなぎ まさひろ)さんが立ち上げたSign with Meでは、公用語を日本手話と書記日本語にしています。

お店のオペレーションが手話で行われるため、アクター(Sign with Meではスタッフのことをアクターと呼んでいます)は自分達の言語で、力を存分に発揮して生き生きと働いています。

厨房
きびきびと働くアクター達。お店のオペレーションは全て手話で行われています。

2011年12月27日にオープン、現在は本郷店と春日店の2店舗で運営されています。
東京の本郷三丁目、東京大学のすぐそばに、Sign with Meの一号店である本郷店があります。
本郷店は階段を上った2F。

sign with me入口

控え目な音量でBGMが流れる落ち着いた店内は、程よい静けさが心地良く、女性が一人でも気軽にご飯が食べられることもコンセプトの一つです。
ろう者でも聴者でも、誰もが落ち着いた雰囲気の中で美味しい食事を楽しみながらくつろげる、居心地の良い空間です。

メインメニューはスープ

お店のメインメニューのスープはどれも具沢山でヘルシー。毎日通っても飽きないほど、種類も豊富。
茸とソーセージの5種野菜ポトフは栄養バランスも抜群で、お店のオープン以来不動の人気メニューです。

ポトフ
スープ+白胡麻ご飯or石窯ライ麦パン+ミニサラダorソフトドリンクのスープセット。写真は人気メニューのポトフのセット。

スープセットの白胡麻ご飯はなんとお替り自由。石窯でふっくらと焼き上げられたライ麦パンは特許で作られる特別なものを仕入れています。
スープはどれも具沢山でヘルシーですが、ご飯にも合うスープをコンセプトにしているので、食べ盛りの男性でも満足感はばっちりです。

エビ味噌水餃子スープ
取材時期のおすすめはもちもち水餃子の海老味噌スープ。奥行のある海老味噌の香りに、食べ応えのある水餃子が絡んだ主食になるスープ。

Sign with Meのスープはどれもフォークやお箸がないと食べられないことをコンセプトにしているそうです。具沢山のスープはまさに食べるスープ。食べ応えだけでなく栄養のバランスも考えられた一皿になっています。

スープは世界共通の料理

何故スープなのか?それはスープが世界共通の料理だからだそうです。
世界中どこに行っても必ずスープ料理があり、それがその土地の人達にとってソウルフードだったりすることが多いそう。日本だったら味噌汁が代表的なスープ料理、その人それぞれのおふくろの味があるソウルフードです。

Sign with Meでは海外からのお客様も多く、オープンしてから現在までで50か国を超える国の方が来店されているそうです。

店内の壁面にあるホワイトボードはSign with Meの特徴の一つ。筆談で使えるようにと設置されたボードは、今ではお客様が自由に寄せ書きのようにコメントを書くようになりました。
そのボードに様々な国からのお客様からのコメントが残されていくそうで、それが50か国を超えたということ。
場所柄、東大生のお客様も多いため、アラビア語やサンスクリット語など馴染みのない言葉でも翻訳してくれるそうです。

店内風景
壁面にある大きなホワイトボード。訪れたお客様によるイラストやコメントなどが沢山書かれています。中にはチェコスロバキアからのお客様も。

お店のメニューはスープ以外にもパスタやパエリヤなど食事メニューの他、デザートメニューも充実しています。
パンケーキやパフェの他、和デザートまで種類も豊富。
食事だけでなくカフェとしても楽しむことができます。

ティラミスパンケーキ
アイスクリームとクリーム、フルーツがふんだんに添えられたティラミス・パンケーキ。
カトラリー
可愛いカトラリー。ついつい笑顔になってしまいます。

手話の世界

今回の取材に応えて下さったオーナーの柳匡裕さん。
この日、手話が初体験の筆者に「ありがとう」「美味しかった」「いらっしゃいませ」「またお越しください」というお店で目にする簡単な手話を教えていただきました。

その中で特に印象深いのは、手話で大切なのは表情だということ。
手話を話す際聴者から、ろう者は喜怒哀楽が豊かでいいねと誤解されるそうなのですが、表情は文法の一つなのだそうです。
同じ「ありがとう」でも怒った顔や無表情では感謝の意味は伝わりません。
表情と動作が合わさって初めて意味を表すのが、手話の文法なのです。

手話を話す柳さん
表情による違いなど、手話の文法をわかりやすく教えてくれる柳さん。
美味しい手話
「美味しい」はほっぺたの脇に手を添えて。美味しい表情も大事な文法。

表情が言葉の一部になっている手話を言語にするろう者から見ると、聴者は自分の表情に無関心だと思うことがあるそうです。
表情が相手に与える影響をそこまで意識して話すことはなかったと、その話を聞いて初めて自分の表情について考える機会になりました。

逆に柳さんは、“音”という概念がわからないため、お店をオープンする際店内に流すBGMの必要性が全く理解できなかったといいます。
静かすぎると落ち着かないなど、聴者の意見を取り入れてBGMは導入することになったそうですが、導入した今でも、そもそもBGMというものがどんなものなのかがわからないのだそうです。
楽しい音、悲しい音、という感覚はわからないけれども、楽しい色や悲しい色、という感覚はわかるといいます。
けれども、それを視覚障害者に説明するのは難しい。
それが「文化の違い」なのだそうです。

聴者もろう者も、言語だけでなく、感覚も異なる文化がある、ということを柳さんのお話から改めて気づくことができたように感じました。

window sign
窓に描かれたイラスト。窓の外は東大の赤門に続く通り。

異文化コミュニケーションの場

自分達の日常の言葉である手話で働くことができる環境をつくりたいとオープンしたSign with Meですが、手話を学びたいというお客様もいらっしゃるそうで、そういう方たちのために毎週、火曜日と土曜日にアクター達と手話べりする機会「手話de茶話会」という企画を実施しているそうです。
アクター達と手話でおしゃべりするこの企画は大盛況で、受け入れ人数が増えすぎて入門者は本郷店、中級者は春日店に分けて行っています。

他にも、本格的に手話を勉強しながら交流する場として、“しかく広場”という団体に場所を提供して手話勉強交流会を毎週水曜日開催しています。

また、著名人などをゲストに囲んで呑む企画、月一で開催されるビアカフェもあるそう。
アルコール飲み放題ですが、会話は全て手話で行われています。
それでも毎回、全く手話の出来ない勇者が何名か参加されるそうです。
日本人の中にアメリカ人がいるような感じだといいますが、彼らも異文化コミュニケーションを欲している、理解を広げたい、というとても前向きな人たちなので、そういう人たちを大切にしたいと柳さんは話してくれました。

「いつの世でも、異文化に首を突っ込みたがる人はいます。けれどもその人たちが媒介になって文化は広がっていくんですよね。」

whitebord2

ろう者が主体となって働く場としてオープンしたスープカフェSign with Meは、誰もが心地よく過ごせる場でもあり、聴者にとっては異文化を知る機会を与えてくれる場でもありました。

世界各国から訪れる人々にとっては、スープという世界共通の文化で繋がる異文化とのふれあいの場でもあります。
世界共通のソウルフードであるスープ。心も体も温まる美味しいスープが媒介になって、ここから色々な文化が繋がり広がっていくのかもしれません。

【Sign wit Me】
スープとスイーツを通して手話空間を楽しむ場を提供するカフェ。
日本手話と書記日本語(筆談)を公用語として業務のオペレーションを行っています。

Website  http:// http://signwithme.in/

<本郷店>
〒113-0033 東京都文京区本郷5-23-11 野神ビル2F
営業時間:月~土曜日 11:00~20:00
             日曜日   11:00~19:00 ※連休の中休みは20:00クローズ
Fax: 03-6801-8820
Email: swm@signwithme.in

<春日店>
〒113-0033 東京都文京区本郷4-15-14 区民センター1F
営業時間:月~土曜日 11:00~20:00
             日曜日   11:00~19:00 ※連休の中休みは20:00クローズ
Fax: 03-5615-8764
Email: swm@signwithme.in