大事なのは、つながること。一人で不安や悩みを抱えている家族介護者(ケアラー)支援という活動について。

家族介護者(ケアラー)という言葉や存在を、皆さんはご存知でしょうか?

今回ご紹介する、一般社団法人ケアラーアクションネットワーク協会(Carer Action Network/以下CANと表記)は、その家族介護者(ケアラー)を支援する活動を行っている団体です。

家族介護者(ケアラー)とは?

少子高齢化や8050問題などの社会問題を背景に障害や疾患のある家族を介護する人は増え続けています。
彼らのように家族を無償で介護している人を家族介護者(ケアラー)といいます。

ケアラーアクションネットワーク=CANは、兄弟や姉妹の面倒をみている「きょうだい」を中心にケアラー支援を行ってきました。

ケアラーは、終わりが見えない見守りケアや介護をしながら将来への不安を持ち続けています。
進路や職業選択、結婚、子供を産むか否かを悩み、時には親の介護と兄弟姉妹の面倒をみる多重介護をするために離職に至ることさえあります。

CANでは、こうしたケアラーが抱える不安を解消するために、彼らの居場所づくりと、ライフステージごとに直面する課題を解消するために情報を共有する機会を提供する活動を続けてきました。

CANを立ち上げたのは代表理事の持田恭子さん。
ダウン症候群のある兄をもつ持田さん自らが1996年に「ダウン症児者の兄弟姉妹ネットワーク」を立ち上げ、2013年に「ケアラーアクションネットワーク」を立ち上げました。

CANでは定期的に「きょうだいの集い」を開催し、個人事業主として活動を続けてきましたが、2019年11月に一般社団法人化することになりました。

CAN事業説明会の様子
2020年1月に行われたCANの事業説明会

日本ではまだ聞きなれない「ケアラー」という言葉や、障害当事者に比べると注目されることの少ない家族介護者の悩みなど、わたしたちが知らないことがまだ多くあります。

今まで知られることの少なかった家族介護の現状や、ケアラーへの支援。なぜこうした活動を続けてきたのか、そして法人化にあたってこれからどんな活動をしていきたいのか、持田さんにお話しを伺いました。

CAN代表持田恭子さん
CAN代表理事の持田恭子さん。
CANのシンボルCを表すポーズで。

CANの活動

持田さんがCANの前身である「ダウン症者の兄弟姉妹ネットワーク」を立ち上げたのは1996年10月。ダウン症候群のある兄をもつ持田さんご自身の経験からスタートした活動です。2013年11月に「ケアラーアクションネットワーク」として活動を始め、2014年3月から毎月「きょうだいの集い」を定期開催するようになりました。

「きょうだいの集い」に参加するのは障害のある兄弟や姉妹をもつ「きょうだい」や、幼い頃から親御さんの介護をし続けて来た「ケアラー」の方々です。

「きょうだいに悩みってあるの?」
そう思われることも多いかもしれませんが、年齢も関係性も近いきょうだいは、親亡き後もおそらく最後まで家族という立場で長い関係性を持ち続け、つきあっていく存在です。
けれども親に比べると、福祉の制度や障害について、生活についてなど深い知識を得る機会がないまま、漠然とした将来への不安を人知れず抱えていることも多いのではないでしょうか?

また、障害のある兄弟や姉妹がいる家族の中で、親を気遣い自分よりも家族を優先してきたため、自分の考えや想いを表現することを無意識に抑える傾向がある人もいるそうです。

そうしたきょうだい達が抱える、将来に対する『先取り不安』を解消するために始められたのが「きょうだいの集い」です。そこでは、自分の体験を話す、他のきょうだいの体験を聴くなどしながら少人数で語り合ったあと、自分や家族のことを客観的に見つめ直すワークショップを行っています。

きょうだいの集いワークショップ風景
きょうだいの集いで行われるワークショップの様子。

これまで持田さんが一人で行ってきたCANの活動ですが、事業として継続していくことを目的に2019年11月にCANを一般社団法人化しました。ケアラーに向けた支援事業を行っていくため、様々なプログラムを準備しているそうです。

世代別のケアラーの支援の必要性

CANのスタートから6年間の活動を通して、様々な年代のきょうだいやケアラーが集まるようになり、世代によって抱える課題が違うことが見えてきたそうです。

スタート時は30代から40代以上の年齢の方が多く、これからやってくる介護や将来の生活についての不安が主な話題でしたが、最近は10代~20代が増えて、まわりの友人や恋人などに家族のことをどう話したらよいかわからない、という悩みが多くなっているそうです。

こうしたことからも、抱える課題の違うそれぞれの世代に合わせた支援サービスが必要になってきました。

ヤングケアラー支援

障害や疾患や病気を抱えている親御さんや祖父母の面倒をみたり、大人が担うような家事や介護を引き受けたりしている18歳未満の子どもや、障害のある兄弟や姉妹の見守りケアをしているきょうだい児のことを「ヤングケアラー」といいます。

小中学生に向けたきょうだい児支援を行っている団体は日本各地にあるそうです。10代は進学や将来の仕事など自分の人生を考え、決断する場面に最初に直面する大事な時期でもあります。

持田さんはこれまで、親を助けたい、期待に応えたい、障害のある兄弟や姉妹のこれからを考えたいと福祉の勉強をするヤングケアラーを何人も見てきたそうです。
彼らの中にはその境遇や環境から「福祉の道」以外の選択肢を知らず、きょうだいの集いで出会った多様な職業や生き方に触れることで、「こうした生き方もあったのか」「もっと早く知りたかった」と残念がっていました。

やがて、若いケアラーのひとたちにもっといろいろな選択肢があることを伝え、自分の人生を自分らしく生きてほしいと切実に感じるようになり、CANは中高生向けの「ヤングケアラーズ・プログラム™」に力を入れています。
このプログラムは、ケアラーとしてどんな気持ちもあっていいことを認め、家族や周りの人との関わりを再認識しながら、自分の未来像を描くプログラムで、イギリスで行われているヤングケアラー向けのプログラムを参考にして日本人に合わせて改良されたものです。

きょうだいの集いの風景
きょうだいの集い。写真でも分かるように不安や悩みを抱える若い世代が多く集まります。

新しい試み

福祉に関わる仕事をしていないケアラーにとって、社会福祉制度やサービスを知ることは容易なことではないので、せっかく使える福祉サービスがあるのに、それを知らずに介護やケアを家族だけで抱え込んでしまうことも少なくありません。

そういったケアラーの孤立を防ぐために、CANは、明星大学の人文学部社会福祉実践学科で社会福祉を教えている吉川かおり教授にプログラムの監修を依頼し、高齢者や障害者を支える福祉サービについて体系的に学ぶことができる講座を開講する準備を進めています。

事業として継続していく意義

CANを法人化するにあたって、持田さんはかなり悩んだそうです。
全国各地にきょうだいを支援する会は存在していますが、それらの多くは、地域ごと、ボランティアとしての活動が主流です。同じ境遇だからこそ共有できる悩みや不安を語り合い、気持ちを分かち合う場としてこうした活動があるのは当事者にとって救いになります。
しかしボランティア活動で課題となるのが、その活動を継続し維持することです。

一人の人が中心となって立ち上げても、環境の変化などで忙しくなってしまったり、後継者が現れず会がなくなってしまったり、セルフヘルプという自助による活動だけでは限界があるのも現実です。

持田さん自身もほぼ一人でCANの活動を行ってきたので、そうした課題を実感していました。
その課題を解決し継続していくための形を作っていきたいと事業化を決意したそうです。

「支援を事業にすることの難しさはありますが、善意の活動ではなく組織としてケアラーを支え続けていく形をつくっていくことがチャレンジでもある」と持田さんは語ります。

現在、「きょうだいの集い」は持田さんをファシリテーターとして東京で開かれていますが、参加者は北海道から沖縄まで全国から集まります。
これからは、対面に加えてオンラインで全国どこからでも参加できるようなインフラ整備にも力をいれていくそうです。

いままでひとりで課題を抱えていたケアラーが仲間と出会い、気持ちを分かち合い、知識を得ることで自分が変わって人生を自分らしく生きるための行動につなげる。
そして、今までの経験をポジティブに捉え活かしていく循環が起こることを持田さんは願っています。

大事なことは、つながること。
人生の場面に応じて直面する課題に向き合っていけるコミュニティづくりをCANは目指しています。

【一般社団法人ケアラーアクションネットワーク協会】
HP:   https://canjpn.jimdo.com/
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