「好き」から始まった少年とエアコンの物語

葵さんは自閉症スペクトラムと知的障害を抱えていますが、2歳で自宅の天井に取り付けられたエアコンに心を奪われて以来、その探究心は尽きることがありません。これまでに5,000点以上のスケッチを描き続け、図鑑やインターネットで構造を調べたり、段ボールでエアコンを再現したりと、多様な方法で「好き」を表現してきました。

彼にとってエアコンを描くことは、最高の「遊び」であり「学び」であり、周囲とのコミュニケーションの窓口となっています。この純粋な「好き」の気持ちが、彼の世界を豊かに広げているのです。

全国放映をきっかけに広がる反響

2025年夏に今治市内で開催された初の個展「葵電機展」は、多くのメディアで取り上げられ、NHK「おはよう日本」での全国放映へとつながりました。この放映をきっかけに、パナソニック株式会社 空質空調社の社員が葵さんの情熱に動かされ、同年12月には今治を訪れて出前授業を行うなど、交流が実現しました。

さらに、パナソニック社のエアコン製造工場への招待も決定しており、2026年4月には葵さんと支援スタッフが群馬県の工場を見学する予定です。

子供が絵を描き、大人が指導している様子

個展開催概要

今回の展示会では、エアコンをモチーフにした作品およそ10点のほか、これまで描いたノート類が展示されます。また、昨年8月に実施された初の展覧会の様子や、パナソニック株式会社との交流授業の様子などのパネル展示も行われ、葵さんのこれまでの歩みと反響を広く紹介します。

  • タイトル: 葵電機展からの軌跡~「すき!」からはじまったぼくだけの物語

  • 展示期間: 2026年3月4日(水)~3月30日(月)

  • 場所: 伊予銀行今治支店 1階 ギャラリー呑吐樋(どんどび)(住所:今治市常盤町4丁目2-1)

少年が机で絵を描く様子

「好き」を尊重し、共生社会を目指す取り組み

個展を主催する社会福祉法人 来島会は、「一人ひとりの『好き』という気持ちを才能の芽として尊重している」と述べています。葵さんの「好き」から始まった物語が多くの人々に訴えかけ、彼の世界を広げていく様子は、来島会が目指す「共に生きる社会」の姿そのものです。

来島会が運営する放課後等デイサービス「なかよし学童くらぶ」では、日々のアート活動や多彩なプログラムを通じて、子どもたちの表現力や社会性を育んでいます。コミュニケーション支援や「すき!」を伸ばす支援など、個別性を重視したサポートが行われています。

子供たちが笑顔でポーズを取る室内活動の様子

伊予銀行今治支店からも、「人が持つ特性、固定観念にとらわれない自由な表現」として葵さんの作品への共感が寄せられています。この個展は、地域社会において「好き」の持つエネルギーを感じ、多様な人々が共に生きる社会について考える貴重な機会となるでしょう。


Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77