重症心身障がい児の「できた」を育む支援が学術・地域で評価 – 熊本の療育施設と地域コミュニティの2025年度成果

重症心身障がい児や医療的ケア児を育てる多くの家庭では、「退院後も専門的な小児リハビリを継続したい」「医療的ケアに対応できる信頼できる事業所を見つけたい」といった悩みを抱えています。特に熊本県内では、専門的な小児リハビリテーションを提供する療育施設へのアクセスが十分ではない状況が見られます。

また、子どもの発達に不安を感じても「どこに相談すればいいか分からない」と、診断前の段階で一人で悩みを抱え込む保護者も少なくありません。こうした課題に対し、熊本県に本社を置く株式会社LIGHTSWELLは、重症心身障がい児・医療的ケア児のための療育施設「子どもリハビリセンターIllumination」の運営に加え、診断前から保護者に寄り添う地域コミュニティ「welleap(ウェリープ)」の活動を通じて、子どもの発達支援における”入口から伴走する”地域インフラの構築に取り組んでいます。

2025年度は、Illuminationの支援が九州作業療法学会での優秀賞受賞をはじめ、学術と地域の両面で評価されるとともに、welleapの活動も広がりを見せました。

子どもリハビリセンターIllumination:専門的リハビリと発達を引き出す療育

「子どもリハビリセンターIllumination」は、重症心身障がい児や医療的ケア児など、日常的に医療的サポートを必要とする子どもたちのための児童発達支援・放課後等デイサービスです。退院後も専門的な小児リハビリを継続したい、医療的ケアに対応できる信頼性のある事業所を探している家庭が利用しています。

理学療法士・作業療法士が身体機能や呼吸循環機能などを専門的に評価・調整した上で、子ども自身が「やりたい」と思える活動や環境を科学的に設計する「課題指向型のハイブリッド型支援」を提供しています。従来の支援者が教えることを基本とした療育とは異なり、子どもたちの自発性を重視することで、一人ひとりの「できた」が積み重なることを目指しています。熊本では珍しいゲーミフィケーションによる社会性の構築や、トレッドミルを活用した歩行支援など、子どもの意欲を引き出す仕組みも導入されており、保護者から高い信頼を得ています。リハビリと発達の専門家に子どものことを継続的に相談できる安心感が、家族全体の生活の質を支えることにもつながっています。

welleap(ウェリープ):事業所利用前から保護者に寄り添う地域コミュニティ

LIGHTSWELLの支援は、事業所に通う子どもたちだけを対象としたものではありません。地域コミュニティ「welleap」を通じて、まだ事業所を利用していない段階の保護者にも支援を届けています。

welleapでは、理学療法士・作業療法士などの専門職が地域に出向き、子育てや発達に悩みを抱える保護者一人ひとりの声に耳を傾けています。発達に関する知識の共有、アメリカ足病医学に基づく「足育」の啓発、福祉サービスの理解を深める支援など、保護者が「ひとりで悩まなくていい」と感じられる場を提供しています。「うちの子、少し気になるけど、どこに相談すればいいか分からない」という段階から専門職とつながれる場があることで、診断や支援につながるまでの”空白期間”を埋める役割を果たしています。

Illumination(事業所での専門的療育)とwelleap(地域での伴走型支援)。この二つを両輪とすることで、LIGHTSWELLは「支援が必要になったときだけ関わる」のではなく、「気づきの段階から、ずっと隣にいる」地域インフラの構築を目指しています。

2025年度の成果:「できた」を増やす支援が、学術と地域の両面で評価

1. 九州作業療法学会2025 優秀賞受賞

2025年6月、Illumination管理者の伊藤恵梨氏(作業療法士)が九州作業療法学会にて優秀賞を受賞しました。発表テーマは「医療的ケアを必要とする子どもが運動会に参加するために必要な地域連携」です。COPM(カナダ作業遂行測定)を用いて子ども本人の「やりたい」を可視化し、子どもたちと保護者を中心に医療機関・学校・福祉事業所が一体となる支援スキームを設計した点が高く評価されました。「機能の改善」だけでなく、「子どもが社会の中で主体的に参加すること」を実現した地域連携モデルとして注目されています。

2. 医療的ケア児の運動会参加を専門職チームが支援

2025年10月には、医療的ケアを必要とする児童が在籍する熊本市内の小学校へ、運動会のサポートとして理学療法士・作業療法士を派遣しました。運動会のプログラムである徒競走やダンスの調整から、当日予測される疲労管理まで包括的にサポートが行われました。保護者からは「ダンスも徒競走も、本人がしっかり完遂できた」との報告があり、教育現場と療育専門職が連携することで、「参加できるかどうか」ではなく「どう参加するか」を設計できることを実証した事例となりました。

3. 住環境から子どもの発達を考える「育住」イベント開催

2025年10月、「発達を育む環境~家づくり・部屋づくり~」をコンセプトに、第3回子どもフェスが開催され、県内外から定員いっぱいの親子が参加しました。発達科学と神経科学の視点から、子どもたちの気づきをつくる仕掛けや、床の硬さ、家具の配置が子どもの発達に与える影響が解説されました。参加した保護者からは「家の見方が変わった」「帰ったらすぐ家具を動かしたい」といった声が寄せられ、施設内の療育にとどまらず、家庭でも「子どもの”できた”を増やす環境」を保護者自身が作れるきっかけを提供しました。

「受け身の訓練」から「子どもが自分から動きたくなる支援」へ

従来の日本の多くの療育現場では、大人が子どもの身体を動かす、方法を教えるという受動的なアプローチが中心でした。しかし、近年の発達科学では、子ども自身が能動的に課題に取り組む支援のほうが高いエビデンスを持つことが明らかになっています。

Illuminationでは、ダイナミックシステムズ理論(DST)やCLA(制約主導アプローチ)といった複雑系科学に基づく最新理論を日々の療育に取り入れています。体系的な社内研修と事例共有を通じて、これらの理論はスタッフ全員の共通言語となっており、「大人が動かす支援」から「子どもが自分から動きたくなる支援」への転換を、チーム全体で実現しています。

Illuminationの専門性を支える体制は以下の通りです。

  • 認定理学療法士(理学療法士の上位資格)を保有し、世界理学療法連盟(小児グループ)に所属
  • 3学会合同呼吸療法認定士を保有し、呼吸循環器の状態の管理・改善にも対応
  • アメリカ足病医師の直接指導を受けた「足育」プログラムを提供
  • COPM、weeFIM、GMFM66、PEDIなど、医療機関でも使用されるエビデンスに基づく評価法を採用
  • CO-OPアプローチや発達科学に基づくゲーミフィケーション、トレッドミル歩行リハビリなどエビデンスのある支援を提供

LIGHTSWELL代表からのメッセージ

株式会社LIGHTSWELL 代表取締役の平川晋也氏は、「重症心身障がい児・医療的ケア児のご家庭には、『退院した後の生活がイメージできない、どこに相談すればいいのか』『このまま見守るだけで、子どもの将来は大丈夫なのか』という切実な悩みがあります。そして、その悩みは診断を受けた後だけでなく、『うちの子、少し気になる』という段階から始まっています」と語っています。

そして、「Illuminationでの専門的な療育と、welleapでの地域に根ざした保護者支援。この2つを通じて、”ちょっと気になるの段階から、ずっと隣にいる”存在でありたいと考えています。2025年の学会受賞は、ダイナミックシステムズ理論を日々の療育に落とし込み、子ども一人ひとりの”できた”を積み重ねてきたことが、科学的にも認められた結果でした。今後は、事業所内での支援データの構築を進めながら、教育機関や行政との連携をさらに深め、子どもの発達支援を地域全体で支えるモデルの構築を目指してまいります。ひとりで悩ませない。地域の顔が見える専門家として、2026年もさらなる支援体制の拡充に全力を尽くします」と、今後の展望と決意を述べています。

支援に関する相談、取材・講演の依頼、教育機関・行政との連携についてのお問い合わせは、以下の公式サイトより連絡が可能です。


Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77