重症心身障害者の視線入力アート成果展『あいのきせき』が開催

展示会の様子

社会福祉法人あいの実(宮城県仙台市)は、重症心身障害のある方々が視線入力で制作したアート作品を展示する成果展『あいのきせき』を、2026年2月24日から25日にかけてせんだいメディアテークで開催しました。この展示会は、厚生労働省の『令和7年度 特別支援学校卒業後における生活介護利用モデルの作成事業』の一環として行われ、延べ500名の来場者が訪れました。

本展では、特別支援学校卒業後に学習機会が途切れがちな状況に対し、生活介護の現場で継続的な学びを積み上げる方法が検証されました。展示会では、アート作品の展示に加え、制作過程や学びの記録、学習ムービーの上映、そして支援ツールの体験が行われ、来場者と取り組みが共有されました。

来場者を魅了した作品と、表現のプロセス

会場には、視線入力によって描かれた色彩豊かな絵画が展示されました。来場者からは、「この人の心の絵ですよね。心が掴まれたようにのぞきたくなる」「人間としての底力の強さ、そういうものにも感動」といった声が寄せられ、作品が持つ力強さに多くの人々が心を動かされました。

展示は単に作品を並べるだけでなく、作品が生まれるまでのプロセスや、学習の記録、支援の工夫も合わせて紹介されました。これにより、来場者は「表現が立ち上がるまでの道筋」を深く理解することができました。

抽象画とネイルアートの展示

支援ツールの可能性を体験

体験コーナーでは、来場者が実際にスイッチや視線入力といった支援ツールを操作できる機会が設けられました。これにより、支援ツールの持つ可能性とともに、その操作の難しさも実感する声が聞かれました。

また、重い障害を持つ学習者がこれらの支援ツールを使い、スタッフとのやり取りを通じて学習を積み重ねる様子を映したムービーも上映されました。日々の努力や成長の軌跡が来場者に伝えられました。

視線入力体験エリア

ご家族が語る、喜びと未来への希望

学習プログラムに参加した統馬さん(23歳)と冬都さん(18歳)のご家族からは、今回の展示会や日々の学習に対する深い感謝と喜びの声が寄せられました。

統馬さんのご家族は、ムービーで活動する統馬さんの様子を見て、スイッチの使いこなしぶりに驚き、作品を誇りに感じたといいます。学習を通じて腕や手の動きが改善し、良い気分転換になっていることも実感されています。

冬都さんのご家族は、視線入力で描かれた作品を玄関に飾ることを決め、画廊での展示など、重い障害を持つ方々がアーティストとして認知される未来に夢を抱いています。また、視線入力によって冬都さんの本当の思いや気持ちを知り、会話の可能性を感じたことは、ご家族にとって大きな希望となっています。

今後の展開と社会への貢献

社会福祉法人あいの実では、本事業の成果をまとめた報告書の発行を予定しています。この報告書は、生活介護事業所の管理者や支援者向けに、支援機器のアセスメントや設定、生活介護に「学び」を組み込む設計、推進体制とケース検討の方法といった論点を整理しています。自治体の障害福祉課職員や特別支援学校の進路指導担当者との実務連携にも役立てられるでしょう。

本実践は今後も検証が継続され、法人内の他事業所にも展開しながら、同業者へのモデルとして共有される予定です。

学習および一部の作品制作には、岩手県立大学 ソフトウェア情報学部 伊藤(史)研究室の伊藤史人先生が開発した重度障害児支援システム『EyeMoT』が使用されています。

社会福祉法人あいの実の活動については、以下のウェブサイトで詳細を確認できます。


Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77