就職活動を進める中で、障害者枠(オープン)を利用するべきか、一般枠(クローズ)で挑戦するべきか、迷われている方も多いでしょう。それぞれの選択肢には、メリットとデメリットが存在します。本記事では、障害者枠と一般枠の特徴などを詳しく解説し、最適なキャリア選択の一助となる情報を提供します。

障害者枠(オープン)と一般枠(クローズ)とは?

障害者枠(オープン)とは、障害者手帳を持つ方が障害を開示して就職活動を行う枠組みです。企業は法定雇用率(※2024年現在の民間企業の法定雇用率は2.5%)です。従業員を40人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用する義務があるため、大手企業では、雇用率を達成するために、「障害者雇用枠(障害者枠)」と呼ばれる雇用のポジションを設けています。
障害者雇用枠とは障害のある方専用の求人枠のことを言います。実際には「障害者採用」「障害者の雇用」「障害のある方の求人」といった書き方がされていることが多いでしょう。

一方、一般枠(クローズ)は、障害があることを開示しないで通常の採用活動に参加する形になります。障害があることを明かさない(オープンにしない)ことで、職場での配慮が受けられない可能性がありますが、障害者枠にとらわれない就職活動ができるため、企業選びの選択肢が広がるメリットもあります。

障害者枠では、企業からのサポート体制が整っており、職場環境や配慮事項が共有されやすい特長があります。ただし、応募できる企業や職種が限定されることもあります。一般枠では、配慮は期待しにくいものの、幅広い業界や職種に挑戦できる利点があります。自分の障害の程度や働き方に合わせて、オープンとクローズのどちらが適しているかを検討し、最適な就労形態を選択することが重要です。また、専門の就労支援機関に相談することで、適切なアドバイスを得ることもおすすめです

オープン就労のメリットとデメリット

オープン就労のメリットは、障害情報を開示することで、適切な職場環境やサポートを受けられる点にあります。企業は個々の障害特性やニーズに対応しやすくなるため周囲の理解も得やすく、働きやすさの向上も期待できます。

一方、デメリットとして、給与・雇用形態が一般就労と異なる場合があります。またキャリアアップの機会が限定される可能性や、業務内容が限定されるケースもあります。

クローズ就労のメリットとデメリット

クローズ就労のメリットは、障害を開示せず一般枠で働くため、求人の幅が広がり、給与や昇進で平等に扱われやすいことです。また、他の社員と同様に評価される可能性が高まります。

一方、デメリットとして職場での「合理的配慮」が受けられず、体調不良時などに理解が得にくいことがあります。さらに、障害を明かさないで働き続けることでストレスが蓄積し、長期勤務が難しくなるリスクもあります。さらに、職場環境が障害に適していない場合、業務遂行が困難になることがあります。障害者雇用促進法の適用外となるため、法的保護も受けにくい状況です。自分の障害特性と働き方を見極め、オープン就労とクローズ就労を慎重に比較することが重要です。

企業における合理的配慮の提供とは

合理的配慮の提供は、障害者雇用において重要な役割を果たします。障害者枠(オープン)での就労では、企業は障害者差別解消法に基づき、適切な配慮を行う義務があります。例えば、職場のバリアフリー化や就業時間の柔軟な調整、ジョブコーチの配置、特別な機器やソフトウェアの導入などがその例です。

しかし、一般枠(クローズ)での就労では、障害を開示しないため、これらの合理的配慮を受けられない可能性もあります。その結果、職場環境に適応できず、パフォーマンスが低下するリスクがあります。自分の状況に合わせて、障害の開示・非開示を慎重に検討し、最適な雇用形態を選ぶことが大切です。また、入社前にできる範囲で企業の合理的配慮の実施状況やサポート体制も事前に確認することが望ましいでしょう。合理的配慮を受けることで、自身の能力を最大限に発揮でき、長期的なキャリア形成にもつながります。

オープン就労に向いている人とは?

オープン就労に向いている人は、自身の障害を職場に開示し、合理的配慮を得ながら働くことを望む方です。障害者枠を活用すると、専門的なサポートを得やすい環境が提供される利点があります。しかし、キャリアアップの機会が限定されるなどのデメリットもあるため、オープン就労のメリットとデメリットを十分に理解し、自身のコミュニケーション能力や適応力を考慮して働き方を選ぶことが重要です。就労支援機関や民間の転職エージェントなどを利用すれば、適切な職場選びのサポートが受けられますので積極的に活用することをおすすめします

クローズ就労がつらいと感じる方へ

現在、クローズ就労で悩んでいる方は多いでしょう。一般枠で障害を隠して働くことは、精神的な負担が大きくなりがちです。そのような場合、障害者枠(オープン就労)への転職を検討してみるのも一つの方法です。オープン就労では、合理的配慮や就労支援機関のサポートを受けながら働けます。例えば、定期的な面談や労働環境の調整が可能です。一度、ハローワークや専門のエージェントに相談して、自分に合った働き方を見つけてみてください。

障害者手帳の取得方法

障害者手帳の取得には、各自治体の福祉窓口で申請します。必要書類は「医師の診断書」や写真などで、手帳の種類(身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳)によって異なります。手帳を取得すると、障害者総合支援法の対象となり、各種福祉サービスを利用できるようになります。様々な支援策が講じられています。また、自治体や事業者が独自に提供するサービスを受けられることもあります。

オープンとクローズ、どちらが自分に合っているか相談したい場合は?

就職活動で障害を開示するかは重要な選択です。オープン就労では、企業からのサポートや合理的配慮を受けやすくなります。一方で、クローズ就労を選ぶと一般枠での応募が可能ですが、職場での理解不足に直面することも考えられます。自分の障害特性や希望する職場環境を考慮し、どちらが適しているかを慎重に検討することが大切です。迷った場合は、ハローワークや専門の就労支援機関、転職エージェントなどに相談してみてください。

まとめ:オープン就労とクローズ就労を正しく理解して選択しよう

障害者枠(オープン就労)と一般枠(クローズ就労)のどちらを選ぶべきかは、個々の「障害特性」や職場環境、そして将来のキャリアプランによって大きく異なります。オープン就労は合理的配慮やサポートが受けやすい一方で、周囲に障害を公開する必要があります。クローズ就労は障害を開示せずに一般社員として働けますが、配慮を得られにくい可能性があります。各々のメリット・デメリットを十分に理解し、自身に最適な働き方を選択することが重要です。就労移行支援やハローワーク、民間の転職エージェントなどの機関を活用し、最新の情報やサポートを得ることで、より良い選択ができるでしょう。

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
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