誰もが移動を諦めない社会へ!鉄道4社と「クラウドケア」が箱根でユニバーサルツーリズム実証実験を開始

JR東日本スタートアップ株式会社、東急株式会社、小田急電鉄株式会社、株式会社西武ホールディングスの鉄道4社と、介護保険外サービス「Crowd Care(クラウドケア)」を運営する株式会社クラウドケアが連携し、ユニバーサルツーリズムの実証実験を開始することが発表されました。

この取り組みは、年齢や障がいの有無に関わらず、誰もが移動を諦めずに旅を楽しめる社会の実現を目指すものです。鉄道各社が持つ公共交通機関やバリアフリー施設と、クラウドケアの介助スキルを持つヘルパーの強みが組み合わされることで、新しい形の介護旅行が実現します。

JR東日本スタートアップ、東急、小田急電鉄、西武ホールディングスと介護保険外サービスのクラウドケア、ユニバーサルツーリズムの実証実験を開始

ユニバーサルツーリズムが求められる背景と社会の課題

日本は少子高齢化が進み、日常生活で介助を必要とする方が増加しています。しかし、移動や旅先での不安から、外出や旅行を断念せざるを得ない状況にある方が少なくありません。

例えば、旅行を計画する際には、バリアフリー施設の有無、移動手段、観光地のバリアフリー対応状況などを一つひとつ調べる必要があり、大きな負担がかかります。また、ユニバーサルツーリズムの選択肢がまだ限られているため、「自分が宿泊することで余計な手間をかけてしまうのではないか」といった心理的な理由から、旅行そのものを諦めてしまうケースも少なくないと言われています。

国土交通省観光庁の調査(令和5年3月「ユニバーサルツーリズムに関する調査業務報告書」)によると、ユニバーサルツーリズム(アクセシブル・ツーリズム)の潜在的市場規模は約8,880億円にも上るとされており、この分野には大きな可能性が秘められています。

クラウドケアは、訪問介護や家事・生活支援を行うヘルパーと利用者をつなぐプラットフォームを提供し、これまでも旅行の付き添いといったニーズに応えてきました。しかし、移動手段や宿泊先まで含めた旅行を一貫して提供する仕組みには課題がありました。

一方、鉄道業界でも、要介助者が安心して移動できる仕組みづくりや、移動に寄り添う接遇の強化が重要なテーマです。しかし、単独の事業者だけでは対応できるエリアに限りがあり、幅広い旅行ニーズに十分に応えきれていませんでした。

こうした課題を解決するため、広域ネットワークやバリアフリー施設を持つ鉄道横断型社会実装コンソーシアム「JTOS(ジェイトス)」と、首都圏で1,800名以上の自費介護ヘルパーを抱えるクラウドケアが連携。それぞれの強みを掛け合わせることで、移動から介助までを一貫して支える新しい仕組みの実現を目指します。

箱根で実施される「ユニバーサルツーリズム」実証実験の全貌

今回の実証実験では、要介助者とそのご家族に実際に箱根旅行を体験してもらい、さまざまな側面から検証が行われます。

実証実験の目的と検証項目

この実証実験の主な目的は、以下の通りです。

  1. 利用者の心理的・物理的ハードルの解消: 専門ヘルパーが全行程をサポートすることで、移動や宿泊時の介助に対する利用者の心理的・物理的負担がどの程度軽減され、安心して旅行を楽しめるかを分析します。
  2. 迎え入れる施設・機関とのおもてなしの共創: 専門ヘルパーと交通機関、宿泊施設のスタッフが連携することで、現場スタッフがそれぞれの専門領域で、お客さま一人ひとりに寄り添った接遇を最大限に発揮できる環境を検証します。これにより、施設側が自信と安心感を持って利用者を迎え入れられる体制を構築することを目指します。
  3. 持続可能なビジネスモデルの検証: 旅行代金に加えてヘルパーの同行費用が発生する中で、利用者が価値を感じ、継続的に支払える適正な価格帯を調査し、将来的な事業化に向けた持続可能なモデルを検証します。

実証実験の期間とエリア、参加者募集

実証実験は、2026年4月〜5月頃箱根エリア(ザ・プリンス箱根芦ノ湖などを活用)で実施される予定です。

参加者の募集は一般公募で行われます。

  1. 会員登録: まずはクラウドケアの公式サイトより、ヘルパー利用のための会員登録(無料)を行ってください。
    • クラウドケア公式サイト 会員登録ページ
    • 応募連絡: 登録完了後、クラウドケア事務局へ電話やメッセージ機能でこの実証実験への参加希望を連絡します。事務局から希望日程や介助の必要状況、旅の目的などが確認されます。

応募多数の場合は、検証内容(介助レベルなど)を考慮した上で選考が行われるとのことです。

一気通貫サポートのイメージとモデルコース

この実証実験では、専門のヘルパーが自宅から同行し、各社のインフラをつないで旅をサポートします。

移動フローのイメージ
自宅 ⇌ 踊り子号等 ⇌ 小田原駅 ⇌ シャトルバス / 貸切タクシー ⇌ ザ・プリンス 箱根芦ノ湖 ⇌ 元箱根・芦ノ湖周辺

実証実験モデルコース(1泊2日の旅)

実証実験モデルコース(1泊2日の旅)

  • DAY1:小田原観光と芦ノ湖へ
    • 07:30〜09:00 自宅→小田原駅: 介助を受け、踊り子号などで快適に小田原へ移動します。
    • 09:30〜11:30 小田原駅周辺: バリアフリー対応の小田原城見学や、駅周辺でのランチをゆったりと楽しみます。
    • 11:45〜12:45 小田原駅→ホテル: 無料送迎バスを利用し、渋滞を避けて芦ノ湖畔のホテルへ直行します。
    • 13:00〜16:20 元箱根・芦ノ湖周辺: 成川美術館での絶景鑑賞や箱根神社参拝を、循環バスで巡ります。
    • 16:30〜 ホテルチェックイン: バリアフリー客室にチェックインし、温泉と食事で旅の疲れを癒やします。
  • DAY2:芦ノ湖と箱根園周遊
    • 10:45〜11:20 ホテル→元箱根港: チェックアウト後、エリア循環バスで活気ある元箱根港へ向かいます。
    • 11:30〜12:40 芦ノ湖海賊船: バリアフリー完備の海賊船に乗船し、湖上から富士山と鳥居の絶景を楽しみます。
    • 12:40〜13:20 元箱根港ランチ: 車椅子対応の予約席で、待ち時間なくスムーズに食事を楽しみます。
    • 13:30〜15:00 箱根園観光: 循環バスで箱根園へ。水族館やショッピングをゆったりと満喫します。
    • 15:15〜18:00 帰路へ: 送迎バスと踊り子号などを乗り継ぎ、介助を受けながら安全に帰宅します。

※この行程は一例であり、実際の実証実験では利用者の状況に合わせて調整されます。

JR東日本グループ社員のヘルパーとしての参画

この取り組みでは、鉄道業務で培われた接遇力やホスピタリティを持つJR東日本グループの社員が、希望に応じて副業としてクラウドケアのヘルパーに登録できる仕組みが導入されます。副業を通じて介助経験やスキルを身につけ、それを本業に還元することで、副業と本業の双方において接遇力が高まる好循環を生み出すことを目指しています。

鉄道横断型社会実装コンソーシアム「JTOS」とは

「JTOS」は、JR東日本スタートアップ株式会社、東急株式会社、小田急電鉄株式会社、株式会社西武ホールディングスの4社で2023年9月に発足した鉄道横断型社会実装コンソーシアムです。スタートアップ企業が社会実装を行う上での様々な障壁を乗り越えるため、各社が持つ駅や鉄道、不動産などの経営資源やグループ事業における情報資源を組み合わせた広大な実証実験フィールドを提供し、スタートアップ企業と共に未来の当たり前を創造していくことを目的としています。

今回の取り組みは、JTOSが掲げる4つのテーマのうち、「WELL-BEING」領域での共創の一環です。

介護保険外サービス「Crowd Care(クラウドケア)」の魅力

株式会社クラウドケアは、「ケアを通して、多くの人々を幸せにする。」をミッションに、2016年の創業以来、「Crowd Care」の開発・運営を行っています。介護保険制度では補えない介護ニーズとヘルパーをマッチングし、介護保険外の訪問介護・家事・生活支援サービスを提供している、スキルシェア形式の介護保険外サービスのパイオニアです。

Crowd Careの仕組みと提供サービス

「Crowd Care」は、シェアリングエコノミー型(クラウドソーシング)の自費訪問介護・自費訪問リハビリ・家事・生活支援マッチングプラットフォームです。依頼ごとにヘルパーをマッチングし、介護スキルを持つ貴重な人材をシェアする仕組みとなっています。

クラウドケアの仕組み

シェアリングエコノミーの仕組みとテクノロジーを活用することで、依頼者は介護保険外の自費訪問介護ヘルパーサービスを低価格で利用できます。また、介護職として働いている方はもちろん、介護の仕事から離れてブランクがある方、未経験の方も、隙間時間を使って自分のスキルや都合に合わせてヘルパーとして働くことが可能です。

取扱サービスと料金(税込/交通費別)

  • 訪問介護・家事・生活支援サービス:1時間あたり2,750円~3,300円
  • 買物お助けサービス(買物代行):1ヶ所あたり550円
  • オーダーメイドサービス:都度見積もり
  • 自費訪問リハビリサービス(関東エリアのみ):お試し1回60分10,780円〜
    • 現在キャンペーン期間につき、お試し1回60分5,500円〜で提供されています。
  • クラウドケア公式サイト

まとめ:誰もが「旅」を諦めない未来へ向けて

今回の実証実験は、要介助者の旅行における心理的・物理的ハードルを軽減し、誰もが安心して旅を楽しめる社会の実現に向けた大きな一歩となるでしょう。鉄道各社の広域ネットワークとクラウドケアの専門的な介助サービスが連携することで、これまで難しかった「移動から介助までの一気通貫サポート」が実現する可能性を秘めています。

この取り組みが成功すれば、ユニバーサルツーリズムの選択肢が大幅に広がり、多くの人々が新たな「旅の喜び」を見つけることができるはずです。今後の実証実験の進展と、その成果に期待が高まります。


Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77