児童書出版社の株式会社岩崎書店から2024年9月27日に発売された『わたしのくつしたはどこ?―ゆめみるアデラと目のおはなし』は、視覚障がいを持つ人々の日常を体感できる独特な仕掛けが特徴です。
視覚障がいへの理解を深める絵本
本作はチリの絵本で、2022年にIBBYチリ支部が選定するハチドリメダルを受賞した話題作です。視野がだんだん狭くなる病気を患った著者の実体験をもとに、視覚障がいについての理解を深める体感型のしかけ絵本として制作されました。
絵本の各ページには丸い窓状の穴が開いており、その大きさがアデラの視野の変化を表現しています。読者は、この穴を通して絵を見ることで、視野が狭くなっていく過程を疑似体験できます。この独創的な仕掛けにより、視覚障がいを持つ人々の日常生活での困難や工夫を、直感的に理解することができるのです。
アデラの物語は、視界の変化に戸惑いながらも、それを受け入れ、新しい生活様式を見出していく過程を描いています。彼女の前向きな姿勢は、障がいを持つ人々だけでなく、すべての読者に勇気と希望を与えるでしょう。
本書の質の高さは、国際的にも認められています。国際児童図書評議会(IBBY)チリ支部が選定する「ハチドリメダル」を受賞し、その芸術性と教育的価値が高く評価されました。
『わたしのくつしたはどこ?』は、単なる絵本を超えた、共生社会への理解を深める貴重な教材といえるでしょう。視覚障がいについて学びたい人々、多様性を尊重する心を育みたい親子、そして教育現場での活用など、幅広い読者層に推奨される一冊です。
内容紹介
主人公の犬(ダックスフント)のアデラは研究所でドッグフードの新しい味を開発する仕事をしています。いつものように支度をしていると、お気に入りの赤いくつしたが見つかりません。それだけでなく、職場への道をまちがえてしまったり、首の長いキリンの親友を見つけられなかったり。
アデラの身に、いったい、なにがおこっているのでしょうか?
じつは、目の病気で視野がせまくなっていたことが原因でした。
アデラの身に起きるできごとを通して、視覚障がいをもつとは、どんなことかをわかりやすく伝えるとともに、変化をうけとめるアデラの明るく前向きな姿勢が読者に勇気とさわやかな読後感を与えてくれる物語絵本。
絵本のなかに登場する友人たちもユーモアたっぷり!
未就学児もお話を十分に楽しめる内容になっています。
お話としかけが、視覚障がいについての理解を助ける絵本です。
★ハチドリメダル受賞(IBBYチリ支部選定)
●紹介動画
◆巻末解説ページ
視覚障がいについて、より理解を深めることができる、わかりやすい解説ページがあります。
「視覚障がいについて」
「視覚障がいの手助けをする際の注意」
巻末監修 新川恭浩
日本眼科学会認定 眼科専門医
専門分野:網膜硝子体
医療法人社団 東京みどり会 新宿東口眼科医院 院長
書籍情報
書名:わたしの くつしたは どこ?―ゆめみるアデラと目のおはなしー
フロレンシア・エレラ・文
ベルナルディータ・オヘダ・絵
あみの まきこ・訳
出版社:株式会社岩崎書店
定価:1,870円(本体1,700円+税)
判型:A4変型判 57ページ
発売日:2024年9月27日
※商品の店着状況により店舗ごとに発売開始日が異なります。
販売場所:全国書店、ネット書店 ほか
Amazon:https://amzn.to/3BmTqPD
◆著者プロフィール
文 フロレンシア・エレラ Florencia Herrera
1974 年チリ、サンティアゴに生まれる。チリ・カトリカ大学で社会学を学んだのち、バルセロナ大学で人類学の博士号取得。現在は、ディエゴ・ポルタレス大学(チリ)社
会学部准教授。研究することと教えることが好き。かなり前から視力を失い始め、はじめは主人公のアデラ同様、何が起きているかわからず、魔法でものが消えていくような気がした。暗いところで見えにくくなり、視野が狭まっていった。2003 年に網膜色素変性症と診断される。それ以来、視力低下を受け入れ、杖を用い、2016 年頃からは盲導犬と一緒に行動している。二人の娘シモーナとフリア、そして盲導犬のオットーとともに幸せにくらしている。
絵 ベルナルディータ・オヘダ Bernardita Ojeda
チリ・カトリカ大学でデザインを学ぶ。アニメのシリーズ「Clarita」「Chanchiperri」「Hostal Morrison」「Petit」の作者、監督。イラストレーターとして教育的なプロジェク
トに携わるほか、Amanuta社(チリ)から児童書を多く出版。主な作品に、『El niño y la ballena 少年とクジラ』(2005)、『La música de las montañas 山の音楽』(2005)、
『Vivir un Terremoto 地震を生きる』(2011、共著)、『ガブリエラ・ミストラル詩集絵本』(2011)、『Cenicienta シンデレラ』(2012) など。コンテンツとアニメーションのプ
ロダクションPájaro を主宰。
訳 あみのまきこ
上智大学、東京外国語大学大学院でスペイン語を学ぶ。現在は語学教師をしながら、スペインやラテンアメリカの児童書・昔話の紹介につとめている。訳書に『カピバラがやってきた』(岩崎書店)、『夜明けをまつどうぶつたち』(NHK出版)がある。