【内容情報】(出版社より)
失語症当事者、家族、支援者、言語聴覚士が、それぞれの立場から「失語症」について綴った「言葉」を集めた本。失語症を負ったばかりの方、そのご家族、言語聴覚士を目指す方、行政担当の方、すべての方に読んで欲しい一冊。
「はじめに」より
皆さんこんにちは。この本を手に取っていただきありがとうございます。
2020年、4月25日が「失語症の日」として記念日に認定されました。当日は記念日イベントを予定していたのですが、コロナ禍のため急遽オンライン開催となりました。当日、千名以上の方のご視聴をいただきました。
そのイベントでアンケートを採りました。いただいた解答の中で最も多かったのが、「他の失語症者の生活を知りたい」ということでした。また私は、NPO活動や、オンライン言語リハをしているため、生活に戻った失語症の方にたくさん出会います。ご本人から、ご家族から、ともによく聞かれるのが、「このような病気、障害を持っている人は他にいますか?」という質問です。
失語症は全国に50万人いると言われていますが、そもそも言葉を発するのが難しくなるため、自らの病気や障害について発信するハードルが高くなります。なので、まだまだ社会的には知られていないのです。それでも社会がネット化したことを反映し、発信活動をしている当事者の方は、少しずつ増えています。
今回この本の編集を依頼した星湖舎は、闘病記専門の出版社です。そこで私たちは、どんな本だったら、多くの失語症や家族の人に手に取ってもらえるか尋ねてみました。すると、良い闘病記とは「同じ病気や障害を持っている人、その家族が参考になるような本」とアドバイスをいただきました。そこで今回は、医学的な説明を入れつつも、失語症のご本人が、どのようなことを経験し、考え、生活をしているのか。また、寄り添う家族は何を思うのか、支援をする人は何を求められているのか、どんな支援団体があるのか、そんな多面的な内容の本にしようと決めました。
失語症の方が直面している現実は、決して甘くはありません。復職率も低く、社会的参加までのハードルがいくつもあります。医療介護保険の事情で、現在受けられるリハビリは激減、頼りにしていた当事者会もコロナ禍で中止、代用手段のオンラインでは、なかなか会話についていけない、そしてますます孤立化が進む。そんな声をたくさん聞きます。しかしそうした中、この本で書かれているように、失語症者向け意思疎通支援事業や、失語症者に特化したデイサービス、就労支援B型、オンラインでの言語リハサービスなど、新しい流れも続々と出てきています。
今回の表紙のイラストは、島根県にある出雲縁ing(えにしんぐ)トークの会、代表祝部英明さんが担当してくださいました。彼も失語症があります。表紙の虹は、失語症者と社会をつなぐもの。決して明るくない今の現実から、明るい未来への橋渡しを願って描いていただきました。
タイトルも公募。一般支援者の美野紀子さんが、当事者のことを思って考えた素敵なタイトルが選ばれました。
どうぞ最後までお読みください。
- 発売日 : 2021/4/25
- オンデマンド (ペーパーバック) : 101ページ
- 出版社 : NextPublishing Authors Press
- 言語 : 日本語