【内容情報】(出版社より)
本書は、教育を通じて貧困や排除の克服をはかる「教育福祉」の歴史・実践を検証し、その理論を社会学的に再構築していくものである。教育現場をとりあげた映像作品も参照しつつ、〈包摂と排除〉の二元論を超えるメタ理論の構築をめざす。
◆目次◆
序章 出発点──〈包摂と排除〉の同心円モデル
1.本書のはじめに
2.同心円モデルが帰結する二つのアプローチ──社会移動モデルと純包摂モデル
3. 「練習問題」としてのビジティング・ティーチャー、福祉教員
4.本書の構成
第1章 包摂と排除の「入れ子構造」論──迷宮に分け入るための一歩
1.本章のはじめに──同心円モデルの何が問題なのか
2.在日朝鮮人教育にみる「入れ子構造」
3.障害児の就学猶予・就学免除制度にみる入れ子構造
4.中間考察
5. 「福祉教員」の事例にみる包摂と排除
6.本章のおわりに
第2章 ルーマンから学ぶ「包摂その一歩手前」の大切さ──「平凡でないマシーン」とその平凡化の視座から
1.本章のはじめに
2.機能分化・包摂/排除・教育システム
3.内部転写(re-entry)が可能にする「平凡でないマシーン」の平凡化
4.シティズンシップ・就学義務制度・「市民に非ざる者」の排除
5. 〈差別=選別の教育〉という言説の陥穽
6.スーパーコードとしての包摂/排除
7.本章のおわりに
第3章 「包摂の一歩手前」を可視化した貴重な記録─在日朝鮮人高校生を描いたあるビデオドキュメンタリーから
1.本章のはじめに
2.この作品とわたし自身、あるいは本章の叙述法
3.作品のオープニング――誰が至高のナレーターなのか?
4.登場人物たちと出会いそこねる――1995年12月・神戸
5.見られることなく見続ける「第二のカメラ」
6.ジャーナリストの矩を超える――そのとき何が起こったか?
7.舞台の高校を訪ね、「先生」と会う――1996年9月
8.心臓部=「教室」へ
9.ひょんなことから始まった「同窓生たち」とのつきあい――1996年冬~1997年夏
10.作品の後半部――「親密性深化の物語」への傾斜
11.再び、不同意の「映り込み」
12.裏切られた予定調和
13.後日譚――1998年
14.後日譚2――1997年秋~1999年春
15.本章のおわりに
第4章 創発的包摂の教育小史──「必要の政治」を主題とする三つの事例から
1.本章のはじめに
2.創発的包摂とは何か
3.議論の補助線──「必要の政治」と「20世紀シティズンシップ」
4.教科書無償闘争(1961~63年)
5.金井康治君闘争(1977~1983年)
6. 「民受連」の挑戦(1995年頃~2003年)
7.本章のおわりに
補章 〈宿題〉からみた包摂と排除──教育総動員体制論序説
1.本章のはじめに
2. 〈宿題〉への歴史的パースペクティブ
3.解放教育運動における〈宿題〉──高知県の闘争を中心に
4. 「効果のある宿題」ともう一つの「自己完結不可能性」──大阪・松原の事例から
5.本章のおわりに
第5章 創発的包摂を生きる主体の肖像──リー・ダニエルズ『プレシャス』を観る
1.本章のはじめに
2.奇跡としての包摂──本作品の基本情報と背景
3.プレシャス一家の暮らしぶり・親子関係とその変容
4.ワイス氏──「成長する」狭義の包摂の忠実な担い手
5.レイン先生──創発的包摂の支え手として
6.本章のおわりに
第6章 公私融合の混迷状況で読み解く〈包摂と排除〉──教育基本法改定前・後の比較から
1.本章のはじめに
2.前提となる議論
3.20世紀後半のリベラリズム秩序と戦後教育学という「知恵」
4.21世紀の「教育福祉」が抱え込んだ不幸な条件
5.本章のおわりに──「不幸な状況」を脱する道は?
終章 蟷螂の斧をふりかざす──コロナ禍のもとでの思考停止に抗う
1.創発的包摂への逆風? ─専門家と非専門家の関係性
2. 「社会保障モデルの時代」への逆行か
3.労働力の商品化、然らずんば死なのか?
4.本書のおわりに──あとがきに代えて
参考文献
初出一覧
索引
- 出版社 : 明石書店
- 発売日 : 2021/6/17
- 単行本 : 212ページ