【内容情報】(出版社より)
平成29年2月の「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」報告書では、「地域生活中心」という理念を基軸としながら、一層の地域移行を進めるための地域づくりを推進する観点から、精神障害者が地域の一員として、安心して自分らしい暮らしができるよう、医療、障害福祉・介護、社会参加、住まい、地域の助け合い、教育が包括的に確保された「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」(にも包括)の構築を目指すことを明確にした。
厚労省は、平成29年度から都道府県等自治体に対する補助事業(構築推進事業)と自治体の取組みを支援する委託事業(構築支援事業)を実施することにより、にも包括の構築に向けた取り組みを進めてきた。事業開始当初10項目であった構築推進事業のメニューは、現在では14項目に増えている。令和2年3月には「にも包括の構築に係る検討会」を設置し、にも包括の基本的な考え方、重層的な連携による支援体制の構築、普及啓発の推進並びに精神保健医療福祉、住まい及びピアサポート等の同システムを構成する要素についての検討を行った。
令和3年10月に発足した「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」の報告書(令和4年6月)の中でも、にも包括のより一層の推進が謳われている。一方で、にも包括の主体であるはずの市町村が、精神保健に関する相談支援を積極的に担うための法制度の整備や、その市町村に対する「重層的な」支援を期待されている保健所・精神保健福祉センターなどの具体的な役割も、現段階ではまだ明らかでない。
いずれにせよ、にも包括は現在のわが国の精神保健・医療・福祉の中心的なテーマであり、国が目指す地域共生社会を作り上げるための最も重要な道具の一つであることは間違いない。それにも関わらず多くの精神科医療関係者が未だに「『にも包括』って何なん?」という基本的な疑問から脱しきれていないのが実態ではないか。次号特集ではこの「にも包括」を取り上げ、その目指すもの、現時点での実態、そして今後どのように具体的な形を結んでいくのかを改めて考えてみたい。
- 出版社 : (有)エム・シー・ミューズ
- 発売日 : 2023/1/20
- 単行本 : 128ページ