【内容情報】(出版社より)

「敏感な子」の個性を尊重し、よさを伸ばす指導とは?

本書の概要
約5人に1人いると言われているHSC(Highly Sensitive Child)。どのクラスにもいるはずの「敏感な子」に、おそらくすべての先生が接しています。しかし、その悩みや葛藤を理解して、適切な指導ができているとは限りません。他の子どもたちには効果的な声掛けや接し方がHSCには逆効果という場合もあります。また、HSCはクラスの雰囲気にも敏感なので、教師がSOSを見逃さずに対処することで、安定した学級経営にもつながるでしょう。多様性を尊重し、一人一人のよさを伸ばす指導が求められる今、すべての教師に必須となる知見が詰まった一冊です。

本書からわかること

まずは知っておきたいHSCの存在

1996年にアメリカのアーロン博士が提唱したHSP(Highly Sensitive Person)という概念。生まれつき敏感な気質をもった人を意味し、特に子どものことをHSC(Highly Sensitive Child)と呼びます。約5人に1人存在するので、どのクラスにもいると言えるでしょう。思慮深く、他人の気持ちに敏感で、ささいな変化に気が付き、慎重に行動するという特徴があります。
●HSP(HSC)の判断軸「DOES(ダズ)」
D=何事も深く考えて処理する
O=過剰に刺激を受けやすい(感覚面での不快感がつのりやすい)
E=感情の反応が強く、特に共感力が高い
S=ささいな刺激を察知する(観察力や察知力が高い)

クラスの「気になる子」がHSCという可能性も

HSCにとって学校生活は刺激が強く、緊張やプレッシャーを感じる場面も多いです。例えば、給食が食べられなかったり、トイレに行けなくなったり、急かされるとうまくできなくなったりすることもあります。そのような場面では、子どもが安心できるような声掛けが有効です。また、HSCはADHDやASDと誤解されるケースもあると言います。それらの行動が敏感さから生じているという可能性に気付かず、発達障害と結び付けてしまうことがあるのです。HSCに関する知識があれば、クラスの「気になる子」に対して、対応の仕方を考慮することもできるはずです。

HSCが安心できるクラスはみんなにとって居心地のよいクラス

HSCは、クラスの雰囲気や先生の態度などに対しても敏感です。先生がいつも怒鳴っていたり、クラスの秩序が乱れていたりすると、いち早く苦痛を感じるようになります。HSCは「炭鉱のカナリア」とも言えるでしょう。つまりクラスの雰囲気が悪くなっていることを知らせてくれる存在なのです。教師がそのSOSを見逃さずに指導に生かすことで、穏やかなクラスづくりにつなげることもできます。HSCが安心できるクラスは、みんなにとって居心地のよいクラスなのです。

自己肯定感を育みにくいHSC

HSCは病気でも障害でもないので、もちろん治療や矯正は必要ありません。しかし、保護者や先生の中には、敏感さを矯正して、たくましい子に育てなければと思う方も多く、HSPの先生も例外ではありません。HSC時代に敏感さを封じ込める経験をしてきたHSPは、よかれと思って、子どもに対してもその努力を求めてしまう傾向があるのです。周囲からそのような評価を受ける中で、HSCは自分の気質を肯定できなくなってしまいます。しかし、例えば「ささいな点が気になるところ」は、悪く言えば「気にしすぎ」、よく言えば「観察力がある」となり、伸ばすべきよさと捉えることができるのです。

多様性を尊重した学びが求められる時代に

子どもたちの資質・能力を育成するために、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実させることが提起されました。真に個別最適を目指すのであれば、学習進度のみならず、気質の違いも考慮する必要があります。HSCはたとえ発言が少なくても、積極的に授業に参加していますが、それが評価されにくいという側面があります。自分の特性に合った方法で学習を進めることによって、さらによさを伸ばすことができるでしょう。また、様々な気質の子どもたちが存在するからこそ、協働することに大きな意義があると言えます。

  • 出版社 ‏ : ‎‎ 東洋館出版社
  • 発売日 ‏ : ‎2023/2/17
  • 単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎144ページ

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Written by

今井 靖之

findgood編集者、ライター。

大手電機メーカーで半導体電子部品のフィールドアプリケーションエンジニア、インターネットサービスプロバイダのプロモーションやマーケティングに従事。以後フリー。

身内に極めて珍しい指定難病者を抱える。

神奈川県川崎市在住。サブカルヲタク。「犬派?猫派?」と聞かれたらネコ派、猫同居中。