Last Updated on 2025年12月27日 by 菅間 大樹
困難を抱える子どもたちの現状と課題
現在、日本では子どもの9人に1人が相対的貧困の状態にあります。家庭の経済状況は、子どもの自己肯定感や学歴、将来の雇用形態に大きな影響を与え、不登校やひきこもりの増加にもつながっています。さらに、ヤングケアラー、発達障がい、外国ルーツなど、経済的困難以外の要因も重なり、機会格差は広がる一方です。
低年齢層を対象とした食事支援、学習支援、居場所支援などは増加傾向にありますが、義務教育を終える高校生年代への支援は不足しているのが現状です。困難を抱える子どもたちは、自身の興味・関心を育むきっかけや学校外での経験、社会的なつながり、計画性や学習方法を考える力が不足しがちです。将来的に経済的・精神的に自立するための「自走力」を育む支援も求められています。

認定NPO法人CLACKによる「希望の循環」づくり
認定NPO法人CLACKは、「貧困の連鎖」を断ち切るため、困難を抱える高校生や同年代の子どもたちに対し、デジタル教育とキャリア教育を通じた伴走支援を行っています。CLACKは東京・大阪を中心に、教育委員会や高校、NPO、ソーシャルワーカーと連携し、困難を抱える高校生が主体的に学び、安心して過ごせる居場所づくりに取り組んできました。
CLACKが提供する3ヶ月間のデジタル教育とキャリア教育プログラム「Tech Runway」では、授業料や交通費、学ぶためのパソコンも完全に無償で提供され、経済的な理由で学びを諦めることがないよう配慮されています。スキルを身につけた後は、社会に出る前の実践機会も用意されており、経験、つながり、考える力を育む機会を提供することで、学びと実践の循環をつくり、将来の選択肢を広げています。

これまでの3ヶ月プログラムの累計参加者数は約500名に上り、直近3年間のプログラム完走率は93.8%と高い水準を保っています。また、修了生の約50%が情報系の大学や専門学校への進学、またはIT企業への就職を実現しており、ひとり親家庭や不登校を経験した若者が未経験からIT人材としてキャリアを歩み始めています。
未来を見据えた支援の拡充
昨今のAI技術の急速な発展と普及により、子どもたちが将来働く市場は日進月歩で変化しています。CLACKでは今後、市場の変化に応じて学べるコースの拡充やオンラインプログラムの展開などを通じ、全国どこにいても質の高い学びと挑戦の機会が得られる環境を構築する予定です。
このような活動を通じて、逆境の中で生まれ育った子どもたちが、貧困や差別、偏見や分断を乗り越えて社会の中で自立し、他の人々とつながりを持って生活する姿は、同様の環境にある子どもたちにとっての希望となります。その結果、すべての子供たちが、生まれ育った環境に関係なく自分にはチャンスがあり、自分の人生を自分で切り拓いていけると感じられるような「希望の循環」が生まれるでしょう。
「いのち会議」は、CLACKのような教育支援組織との連携を広げ、過去から受け継がれてきた知恵と資源を活かしつつ、新しい技術や方法も取り入れ、「希望の循環」を全国に広げることによって、「いのち」のバトンを未来へつないでいくとしています。
参考情報
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厚生労働省「国民生活基礎調査」(2022年)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/14.pdf -
日本財団「数字で見るヤングケアラー」
https://youngcarer.jp/report/ -
文部科学省 令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要
https://www.mext.go.jp/content/20241031-mxt_jidou02-100002753_2_2.pdf -
いのち会議公式サイト
https://inochi-forum.org/

