Last Updated on 2025年12月20日 by 菅間 大樹
マーティン・エッスル氏の功績と「ゼロ・プロジェクト」
マーティン・エッスル氏は、シェーマー・バウマックス・グループのCEOとして、会社を中欧・東欧で最大級のホームセンター小売チェーンへと成長させました。その企業活動の中で、障害の有無や国籍に関わらず人々が共に働く企業文化を築き、経済的成功と社会的責任を両立させたことで数多くの賞を受賞しています。2008年には非営利のエッスル財団を設立し、特に障害者の権利とインクルージョンに特化した活動を展開。その象徴ともいえるのが、世界的なプラットフォーム「ゼロ・プロジェクト(Zero Project)」の創設です。
「ゼロ・プロジェクト」は、国連障害者権利条約に基づき、障害のあるすべての人の日常生活と法的権利を改善し、公正で公平かつ包括的な「障壁のない世界」を作ることを目標としています。このプロジェクトは国連と連携し、障害者権利条約の実施を推進する世界中の優れた実践・政策・テクノロジーを発掘・共有する国際的プラットフォームとして、100か国以上、10,000人を超えるネットワークを構築しています。その活動は、日本政府や国際機関の会合でも高く評価されています。
記念講演会で語られた「共に創る社会」の重要性
称号授与式に引き続き、エッスル氏と岡山大学病院の片岡祐子准教授(学術研究院医療開発領域)による記念講演会が開催されました。

エッスル氏は「ゼロバリアの世界のために」と題し、これまでの活動や、今後の日本や大学への期待について語りました。また、片岡准教授からは「難聴者のコミュニケーションバリア解消に向けた開発」として、技術開発による具体的な解決策が説明されました。

両者は講演の中で、最も重要なことは「共に作る組織、そして社会である」というメッセージを聴衆に強く訴えかけました。障害のある人々が自分らしく活躍できる社会を築くためには、技術だけでなく、人々の協力と共創が不可欠であるという温かい想いが伝わってきました。
広がる国際連携と今後の展望
今回のエッスル氏の来訪は、「ゼロ・プロジェクト・アワード2024」の受賞団体である岡山放送株式会社や株式会社両備システムズ、そしてアワードのファイナリストである岡山大学の片岡准教授らとの交流を深める貴重な機会となりました。授与式に先立つ那須学長への表敬訪問では、岡山放送株式会社の鈴木社長も同席し、エッスル財団の取り組みが紹介されるとともに、岡山大学との連携可能性や具体的な協働の方向性について活発な意見交換が行われました。

岡山大学は、今回の称号授与を契機に、ゼロ・プロジェクトとの連携をさらに強化し、地域社会から地球全体に至るウェルビーイングの向上に貢献していく方針です。地域中核・特色ある研究大学として、共育共創を通じて社会に貢献する岡山大学の今後の取り組みに期待が寄せられます。
関連情報
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The Essl Foundation: https://zeroproject.org/about/the-essl-foundation
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岡山大学病院 聴覚支援センター: https://www.okayama-u.ac.jp/user/hospital/index432.html
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岡山大学病院 耳鼻咽喉科: https://www.okayama-u.ac.jp/user/hospital/index134.html

