「リハビリ難民」を救う、専門施設の必要性

パーキンソン病はアルツハイマー病に次いで患者数の多い神経疾患で、日本では約28万9千人(令和2年 厚生労働省調べ)が罹患しているとされています。高齢化の進行とともに、今後さらに患者数の増加が見込まれる疾患です。

この病気は進行性の難病ですが、診断の早期段階から薬物療法と運動を組み合わせることで、症状の進行を緩やかにできると言われています。しかしながら、実際の医療現場では、症状が進行してからでないとリハビリを受けにくいという現状があり、診断直後に運動を始められる専門的な場所はまだ少ないのが現状です。この「空白期間」に、安心して専門的な運動に取り組める場所が求められていました。

益森寛美氏の想いとnemoPilatesの設立

理学療法士でありピラティスインストラクターでもある益森寛美氏は、約10年間にわたりパーキンソン病の当事者と深く関わってきました。その経験から、「その方に合った運動を提供できる場所が少ない」という課題を痛感し、「安心して楽しく体を動かしながらも、専門性をもって進行予防につながる運動を届けたい」という強い願いを抱くようになりました。その想いから独立を決意し、2024年7月にnemoPilatesを開業しました。

ピラティスリフォーマーでの指導風景

なぜパーキンソン病にピラティスなのか

益森氏がピラティスに可能性を見出した背景には、自身の経験があります。学生時代に怪我でプロダンサーの道を断念した際、リハビリとしてピラティスに出会いました。ピラティスを続けることで、体の偏りや筋肉のアンバランスが整い、姿勢が改善され、慢性的な痛みも軽減したといいます。この経験から、「ピラティスは体を鍛えるだけでなく、体の使い方そのものを学ぶ運動である」と実感しました。理学療法士として医療現場に立つ中で、姿勢の崩れや筋肉のこわばりといったパーキンソン病の症状に対し、骨盤や背骨をしなやかに動かし、力を入れるだけでなく抜くことも学ぶピラティスが、パーキンソン病の特性と非常に相性が良いと確信しています。

スタジオnemoPilatesの特徴

パーキンソン病は「100人いれば100通りの症状がある」と言われるほど、一人ひとりの状態が異なります。nemoPilatesでは、何千通りもあるピラティスエクササイズの中から、利用者一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイドレッスンを提供しています。画一的なプログラムではなく、その「今の体」に本当に必要なアプローチを丁寧に選び、症状の緩和と進行抑制を目指します。

また、nemoPilatesは「病気」ではなく「その人」を見ることを大切にしています。運動だけでなく、利用者の人生や日常、そして想いにも寄り添う「居場所」であることを目指し、運動を通して希望を育む場でありたいと考えています。

代表プロフィール

nemoPilatesの代表を務めるのは、益森 寛美(ますもり ひろみ)氏です。理学療法士であり、ピラティスインストラクター、そしてパーキンソン病のための運動療法であるLSVT-BIG®の認定療法士でもあります。運動指導歴は15年に及び、ピラティスインストラクターとして活動後、理学療法士の資格を取得。神経内科病院やパーキンソン病専門の自費リハビリ施設での勤務経験を持ち、難病リハビリの現場に深く携わってきました。

益森氏はYouTubeチャンネル「パーキンソン病のためのピラティス」も運営しており、登録者数は1,500人を超えています。自宅でも安心して取り組める運動コンテンツを発信し、その専門性と温かさを兼ね備えた指導は、全国のパーキンソン病当事者から支持を集めています。

益森寛美氏のポートレート

nemoPilatesの詳細は、公式ウェブサイトをご覧ください。
nemoPilates

nemoPilatesは、パーキンソン病と診断された女性たちが、早期から専門的な運動に取り組むことで、不安を希望に変え、より豊かな生活を送るための大切なサポートを提供しています。この取り組みが、さらに多くの「リハビリ難民」を救い、社会に前向きな変化をもたらすことが期待されます。

 

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77