Last Updated on 2025年12月21日 by 菅間 大樹
介護・障害福祉現場でのAI活用が急速に進展
調査結果によると、回答者の半数以上(55.4%)が週3回以上、生成AIを使用しており、週1〜2回程度使用する人を合わせると71.2%が週に1回以上利用していることが分かりました。また、生成AIを使い始めた時期については、回答者の40.7%が2025年から使い始めており、利用者が急速に増加している状況がうかがえます。

8割の職場でルールなし、個人情報漏洩リスクも懸念
現場でのAI活用が広がる一方で、多くの課題も明らかになりました。職場で明確なAI活用のガイドラインやルールがあるのは、わずか19.8%にとどまり、「ない」が69.1%、「分からない」が11.1%で、合わせて80.2%の職場でルールが整備されていない状況です。

さらに、生成AIを使ったことがある回答者のうち、44.4%が個人で無料版のサービスを利用しており、個人情報漏洩のリスクが極めて高い状態にあると指摘されています。利用者に関する記録や計画書の作成に生成AIを使用したことがある人も48.2%に上り、要配慮個人情報を含む情報がAIに入力されているケースも少なくないことが伺えます。

記録等への生成AI利用について、上司に報告・相談している人は41.4%にとどまり、事業所が把握していない「シャドーAI」の存在も浮き彫りになりました。

法人形態別にみると、社会福祉法人では特に個人での無断AI利用が顕著に見られると報告されています。

従業員満足度向上には「AI活用ルール整備」が年収アップの約2.2倍効果的
注目すべきは、従業員満足度(eNPS)に関する分析結果です。
重回帰分析の結果、AI活用ルールの整備が従業員満足度に与える影響は、年収アップの約2.2倍であることが判明しました。この結果は、「給料が低いから介護福祉の従業員満足度が低いのは仕方ない」という従来の考え方に一石を投じるものです。AI活用ルールの整備は、組織としての方針の明確さ、新技術への前向きな姿勢、スタッフへの配慮やサポート体制の表れとして、従業員満足度に大きく寄与していると考えられます。

また、回答者の9割超が「AIの使い方を学ぶ機会が必要」と回答し、AI関連研修への参加意向も非常に高いことが分かりました。一方で、46.2%が生成AIに頼りすぎると専門職としての思考力や判断力が低下すると実感していることも明らかになっています。


調査結果からの提言
パパゲーノAI福祉研究所は、この調査結果を踏まえ、福祉現場の経営者・管理職に向けて以下の3点を提言しています。
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事業所でのAI活用ルールを明確にする
既に多くの従業員がAIを活用している現状を認識し、どのような場面でどのように使うべきかを明確にすることで、安心してAIを活用できる環境を整備することが求められます。特に、社会福祉法人・医療法人では、AIのルール整備が従業員満足度の低下に繋がっている可能性も示唆されています。 -
「AI導入で大きな変更が必要」と感じさせない
AIは業務を根本から変えるものではなく、日々の業務を少し楽にするツールとして位置づけ、段階的な導入や既存業務に馴染みやすい形での活用が望ましいとされています。 -
支援現場での「AIの正しい使い方」の研修に投資する
現場のスタッフはAIを学ぶ意欲が高く、生成AIの基礎や情報セキュリティ研修を通じて、事故を未然に防ぐための投資が重要です。
株式会社パパゲーノは、「生きててよかった」と誰もが実感できる社会を目指し、精神・発達障害のある方を対象とした就労継続支援B型事業所「パパゲーノ Work & Recovery」の運営や、支援現場のDXアプリ「AI支援さん」の開発・提供を行っています。


