280kmの車いす行進がコスタリカの法制定を導く
ウェンディ・バランテス氏(障害者自立生活センター「モルフォ」代表)
コスタリカで障害者の自立生活を推進するウェンディ・バランテス氏は、2009年のJICA研修で日本の障害者の自立した暮らしに触れ、母国での普及を決意しました。2016年には、介助者派遣の公費負担を求める制度化を訴え、280kmに及ぶ車いす行進を実施。この活動が世論を動かし、同年の「障害者自立推進法」成立へとつながる大きな潮流を生み出しました。

バランテス氏の活動は2023年に国際的に権威ある『Zero Projectアワード』を受賞。このコスタリカでの成功事例は、日本の自治体が「共生社会の条例化」を検討する際のモデルとしても、日本の福祉政策に示唆を与えています。

授賞式でバランテス氏は、「この賞は、歴史的に疎外されてきた集団の存在と価値を認め、私たちが治療を待つ患者ではなく、社会を良くする力を持つ市民であることを証明するもの」と強調しました。コスタリカの「障害者自立推進法」は後見制度を廃止し、個人の自律権や生き方を決める権利を保障。その取り組みはラテンアメリカ全体に広がり、8,000万人以上の障害者が自立した生活を送る権利を擁護するまでに至っています。

WHO推奨を獲得した医療テックが世界の母子保健を救う
原 量宏氏(香川大学名誉教授)/ 尾形 優子氏(メロディ・インターナショナル(株)CCO)
モバイル胎児モニター(CTG)の基本原理を確立した原氏と、医療ITの推進役である尾形氏は、離島や僻地で暮らす妊婦の不安を解消するため、遠隔地から胎児の状態をモニタリングできる世界初のフルワイヤレスモバイル胎児モニター「iCTG」を開発しました。この技術は、世界と日本の「命の格差」を埋める活動を続けています。

2022年、「iCTG」は日本製のスマート医療機器として初めてWHO(世界保健機関)の推奨機器に選定されました。世界から選ばれたわずか7製品の一つとして、ブータンやタイ、アフリカ、ラテンアメリカなど17カ国と日本の広範な地域で導入が進んでいます。

原氏はスピーチで、日本の周産期医療の優れたノウハウを途上国へ生かす重要性を強調しました。尾形氏は「iCTG」が、胎児の心拍数と妊婦の陣痛を測定し、リアルタイムで遠隔地の病院や医師とデータを共有できる携帯型の医療機器であることを紹介。産科医が不足する地域や途上国でも、早期の異常発見と適切な分娩管理を可能にすると述べました。


沖縄発の「障害主流化」が国内外で共生社会を築く
高嶺 豊氏(NPO法人エンパワメント沖縄 理事長)
17歳で車いす生活となった経験を原点に、高嶺氏はハワイで得た障害者の「自立生活」理念を沖縄から世界に広めてきました。国連での活動やJICA専門家としての知見を融合させ、四半世紀以上にわたり国内外の障害者政策を牽引。「障害者の声」を社会変革の主体として生かすアプローチを、沖縄から全国、そして世界各地の現場へと普及させています。

2009年からはJICA専門家として障害者の社会参加を促すカリキュラムを指導し、2024年のコロンビアでの自立生活センター開所や、2025年のドミニカ共和国でのインクルーシブ教育支援委員会発足など、具体的な成果を生み出しています。また、国際的な政策提言の知見は自身の拠点である沖縄にも還元され、2014年の沖縄県「共生社会条例」制定にも尽力しました。

高嶺氏はスピーチで、「沖縄での原体験が、開発途上国での共感を生んだ」と語り、自身の国際協力の経験を沖縄に還元し、国内外で成果を循環させてきたことが今回の受賞につながったと述べました。「障害者の自立と社会参加の促進、そしてインクルーシブな社会の実現に少しでも貢献できるよう、尽力していく」と力強く決意を表明しました。

JICAについて
独立行政法人国際協力機構(JICA)は、開発途上国が直面する課題を解決するため、技術協力、有償資金協力、無償資金協力など日本の政府開発援助(ODA)を一元的に担う二国間援助の実施機関です。150以上の国と地域で事業を展開し、世界の平和と繁栄、日本社会の更なる発展に貢献しています。
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