誰もがスポーツを楽しめる日常の場が大切
笹川スポーツ財団の2024年度調査によると、障がい者が専用または優先的に利用できるパラスポーツ施設は全国に約160施設に留まっています。これに対し、文部科学省の2021年度調査では、一般的な体育・スポーツ施設が21万1300施設存在しており、障がい者スポーツに対応した施設は数も設備も圧倒的に不足している現状が浮き彫りになっています。
このような状況の中、福祉に関する多様な事業を展開する労協センター事業団は、早くから障がい者スポーツへのサポートや支援に取り組んでいます。その代表的な事例の一つが、栃木県宇都宮市にある「宇都宮市サン・アビリティーズ」です。
地域に根ざした障がい者スポーツ支援「宇都宮市サン・アビリティーズ」
「宇都宮市サン・アビリティーズ」は1984年に設立され、労協センター事業団が2006年から指定管理者として運営に携わっています。この施設の目的は、障がいのある人々の教養、文化、体育の向上を図り、社会参加を促進することで、福祉の増進に寄与することです。また、一般市民も施設を利用することで、障がい者と健常者の交流を深め、コミュニティ活動や教養文化体育活動を盛んにすることも目指しています。

施設には体育館、機能訓練室、音楽室、娯楽室などの設備があり、障がいのある方が優先的に利用できます。年間約4万3千人もの人々がこの施設を利用しています。
多様な活動でスポーツに触れる機会を提供
「宇都宮市サン・アビリティーズ」では、障がいのある方が気軽にスポーツに触れる機会を提供するため、様々な活動を行っています。
- 一般活動: 体育館などの貸館業務に加え、卓球や健康体操、屋内グランドゴルフなどのスポーツ教室が開催されています。また、レクリエーションとして初めての手話教室やレクダンス、卓球バレーなども実施されています。

- 地域参加の教室開催: 障がい者スポーツ行事に限定せず、地域住民が講師となってトールペイントや絵手紙、フラワーアレンジメントなどの創作活動の教室も実施されています。これにより、地域の人々が日頃から障がいのある方々と触れ合う機会が創出されています。

- 各種相談・講習等の開催: 心理カウンセラーによる「心のもやもや相談室」の定期開催や、宇都宮市消防署の協力による応急手当講習会、避難訓練なども行われ、利用者の生活全般をサポートしています。
2025年度の活動事例
2025年度には、障がいの有無に関わらず誰もが楽しめるイベントが多数開催されました。
- 障がい者スポーツ体験会(2025年11月19日実施)
168名が参加し、「ボッチャ」「サウンドテーブルテニス」「車イスバスケットボール」といったパラスポーツを体験しました。障がいのある人もない人も純粋にスポーツを楽しみ、障がいのない人々が障がい者への理解を深める貴重な機会となりました。会場では、市内の福祉団体が制作する雑貨や小物の販売会、ワークショップも開催され、障がいのある方の活躍の場づくりにも貢献しています。このイベントには約80名の地域ボランティアが参加協力し、施設運営のサポーターとして日頃から植栽管理やお花の植え付けなども行っています。

- サンアビレクリエーション
毎月1回(大会等がある場合を除く)開催され、障がい者スポーツに特化せず、誰もが楽しめる幅広いレクリエーションが実施されました。- 4月:ポール・デ・ウオーク(桜の季節に谷貝をポールウォーキング)

- 5月:eスポーツ(TV画面を見て手と足を使うスポーツゲーム)

- 6月:初めての手話(初心者向けの手話体験教室)
- 9月:レクリエーションスポーツ(様々なレクリエーションスポーツを体験)
- 12月:Xmasレクリエーション(ゲームやダンスで楽しいXmasを)
- 2月:スポーツ吹き矢(的をめがけて精神統一!)

- 3月:カローリング(冬季オリンピック種目カーリングの体育館版)

- 4月:ポール・デ・ウオーク(桜の季節に谷貝をポールウォーキング)
これらの活動は、地域の方々がサン・アビリティーズの活動に参加することを通じて、障がいのある人たちとの相互理解を深め、助け合いができるような橋渡し役となることを目指しています。
障がい者スポーツ施設が担う地域共生の役割
障がい者スポーツは特別なものではなく、障がいのある人もない人も含めた日常の中に存在すべきものです。障がい者が日常的にスポーツを楽しみ、挑戦できる環境を整備することは、障がいのない人々や地域全体にとっても非常に重要であると考えられています。
障がい者スポーツ施設が地域における拠点(ハブ)となり、他の施設・団体や地域住民とのつながりを生み出すことで、障がい者の社会参加の機会を増やしていくことが不可欠です。そのためには、障がい者が気軽にスポーツに参加できる機会やメニューを充実させると同時に、継続的に参加できるよう地域住民同士の仲間づくりも重要なポイントとなります。
また、こうした施設は、地震や豪雨被害などの災害発生時には地域の避難所としても機能し、障がい者の生活にも配慮した避難所として重要な役割を果たします。日頃から地域の人々との関係づくりを進めることで、いざという時に互いに支え合える関係性が築かれます。
スポーツを超えて、多様な生き方を支える社会へ
オリンピック・パラリンピックは未来への夢や力を与える素晴らしい機会ですが、そこで得た気づきを行動につなげ、次の世代へと継承していくことが大切です。
労協センター事業団の障がいに関わる取り組みは、スポーツ施設の運営に留まりません。障がいの有無だけでなく、人それぞれの身体的・精神的な相違や社会との関わり方など、一人ひとりがその人らしい生き方や暮らし方、働き方を実現できるよう、さまざまな福祉サービスへの挑戦と、より良い街づくりを推進する取り組みを続けています。それぞれのチャレンジを認め合い、喜び合い、笑顔あふれる地域がよりいっそう広まることが期待されます。
関連情報
- 「宇都宮市サン・アビリティーズ」ホームページ: https://tochigi.roukyou.gr.jp/sun-abi/
- 労働者協同組合 労協センター事業団 ホームページ: https://center.roukyou.gr.jp/
労働者協同組合 労協センター事業団は1973年2月23日に設立され、代表理事は藤田徹氏です。東京都豊島区に所在地を置き、福祉に関わる総合的な事業、公共施設等の管理運営、緑化、清掃などを手掛けています。



