Last Updated on 2025年12月24日 by 菅間 大樹

パルシステム神奈川と星槎大学が連携、就労支援の専門性向上へ

生活協同組合パルシステム神奈川は、2025年12月11日に配送拠点の宮前センター(川崎市宮前区)で「事例検討会」を開催しました。この検討会は、学校法人国際学園星槎大学との障害者雇用推進に向けた包括的連携協定に基づいて実施され、多様な特性を持つ職員に寄り添う就労支援担当者が、各場面における対処法への理解を深めることを目的としています。

事例から学ぶ実践的な支援

事例検討会には、宮前センターと横浜北センターに勤務する就労支援担当職員が参加し、共生科学部専任教授の平雅夫氏を講師に迎えました。平氏は、理論と福祉現場での実践経験を基に、具体的な支援の対応について個別にアドバイスを行いました。

検討会では、障害を持つ職員13人がパルシステムの物流拠点である杉戸センター(埼玉県杉戸市)を訪問した研修会の様子が振り返られました。普段とは異なる集合場所で、参加者のほとんどが集合時間より大幅に早く到着し、支援員が到着していないことに不安を感じた職員もいたという事例が共有されました。

事例検討会の様子

平氏は、遅刻への恐怖心から早く来てしまうことや、時間感覚の違いから待機を長く感じることがあると説明しました。また、困った時に自分で対応しようとしてパニックになるケースもあるため、電話をかけるなど助けを求めるスキルを身につけることの重要性をアドバイスしました。

移動中の貸し切りバス内では、緊急連絡のために支援員が携帯電話でやり取りをする場面があり、これを「マナー違反」と捉え、納得できない様子の職員もいたという事例も挙がりました。これに対し平氏は、「明確なルールが分からないと我慢できないため、見通しが立てられるよう丁寧に状況を伝える必要があります」と説明しました。

さらに、センター見学中に質問が止まらなくなってしまう職員に対しては、前向きな姿勢を否定せずに中断できるよう、事前に「1人何回まで」といった具体的なルールを設定するアイデアも共有されました。

平氏からは、意思決定の機会を持つことの重要性が強調されました。ルールの範囲内で自分で選び、時には認められない経験を積み重ねていくことが良いとされています。支援者に対しても、個別の事例を積み重ね、評価すべき点はすぐに本人にフィードバックし、一人ひとりの特性に合わせて分かりやすく明確な対応をすることなどがアドバイスされました。

集合写真

連携協定による支援者の専門性向上と共生社会の実現へ

パルシステム神奈川と星槎大学は2025年8月に、障害者雇用推進に向けた包括的連携協定を締結しました。この協定は、障害を持つ職員の支援担当者へのメンタルケア、星槎大学での相談受け入れ、教育、研修の実施を目的としています。

星槎大学は、多様性を尊重し一人ひとりに合わせた学習環境を提供するノウハウを活かし、特別支援教育などの知見を用いてパルシステム神奈川の職員への教育・研修の機会を提供しています。これまでに「アンガーマネジメント研修」などが開催されました。

今後は、企業型在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)資格を持つ就労支援担当職員への個別面談などにも対応していく予定です。パルシステム神奈川は、障害の有無に関わらず、全ての職員が安心して働ける職場環境の実現を目指し、共生社会の実現に貢献していきます。2025国際協同組合年を契機に、地域内の多様な組織との連携を広げ、誰もが活躍できる社会づくりを目指しています。

パルシステム神奈川と星槎大学の包括連携協定に関する詳細はこちらをご覧ください。
星槎大学と包括連携協定 障害者と働く社会を“当たり前”に

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77