Last Updated on 2025年12月27日 by 菅間 大樹

住まいの貧困解決へ向けた「日本版アフォーダブルハウジング」

LivEQuality大家さんは、「住まいに困窮する人たちに、低価格で気持ちのよい住宅と社会とのつながりを届ける」ことを目指し、経済性と社会性の両立を追求する「日本版アフォーダブルハウジング」を事業として推進しています。

特に、深刻な現状に直面する母子家庭の「住まいの問題」に着目。DVや離婚で住まいを失ったシングルマザーは、支援の前提となる「住所」がないため行政からの支援を受けにくい現状があります。公営住宅は高倍率で、低額の住まいはアクセスが悪かったり老朽化が進んでいたりすることが多く、シングルマザーが尊厳を保ちながら経済的に自立する基盤となる住居が行き届いていないのが実情です。

LivEQuality大家さんは、都市部の好立地にあるビルを購入し、老朽化した部分を修繕・リフォームすることで物件の質と収益性を高めます。その一部を相場以下の賃料で提供することで、シングルマザーは就業機会にアクセスしやすく、清潔で便利な個室を得られる仕組みです。これまでに29世帯71人の母子を受け入れ、DV避難下での転入サポートや行政手続きの同行、地域とのつながり構築まで伴走型支援を提供。その結果、入居後半年以上経過したシングルマザーの就業率は80%を超え、自立に向けた道を歩んでいます。

「日本版アフォーダブルハウジング」の詳細については、以下のリンクから確認できます。
https://livequality.co.jp/affordable

社会的インパクトを追求する「インパクトボンド」

今回の資金調達に用いられたインパクトボンドは、LivEQuality大家さん、NPO法人LivEQuality HUB、およびインパクト投資家が一体となって行う事業に関連し、アフォーダブルハウジングに活用する住宅取得のための資金調達として発行されます。

インパクト投資家や銀行からの資金を受け、LiVEQuality大家さんが生活困窮者向け居住支援や社会課題解決型不動産賃貸事業を展開し、ソーシャルリターンの追求を目指すビジネスモデル図。

このボンドは、入居するシングルマザー世帯の生活再建を経済的にサポートするため、家賃の低減などが行われる設計です。一般的な社債と比較してファイナンシャルリターンは限定的であるものの、入居者の生活再建という社会的インパクト(ソーシャルリターン)の最大化が図られています。

広がる支援の輪:インパクト投資家の期待

今回のインパクトボンドには、以下の3名のインパクト投資家が参画しました。

株式会社Kaien

Kaienのロゴマーク
発達障害や精神障害のある方の就労支援を行う株式会社Kaienは、今回の投資について「困難を抱える女性やDV被害者への『住まい』の支援モデルが、将来的に当社が支援対象としている障害者を含むマイノリティ全体の住居課題解決の雛形になると確信したため」とコメントしています。属性に関わらず、誰もが安心して暮らせるアフォーダブルハウジングの仕組みが、障害者支援の現場にも新たな光を当てることへの強い期待が示されています。

瀧 俊雄 様(株式会社マネーフォワード 執行役員)

眼鏡をかけたアジア人男性がカメラに向かって笑顔で座っている。
株式会社マネーフォワード 執行役員の瀧俊雄氏は、「生活の基盤となる安心を得る上で、安定した住居の確保は何よりも切迫した重要テーマ」と述べ、一人でも多くの子どもたちや親御さんが不安なく人生を前に進められるよう、心からのエールを送っています。

都築 明寿香 様(一般財団法人 都築国際育英財団 理事長)

明るい笑顔を浮かべたアジア人女性のポートレート。
自身もシングルマザーとしての経験を持つ都築明寿香氏は、「生活の基盤となる“住まい”の大切さ、そしてその先の自立に向かう過程で感じる不安や心細さを、身をもって経験してきた」と語り、LivEQuality大家さんの伴走支援に深く共感し参画を決めたと述べています。「安心できる住まい」と「支えてくれる存在」が、前向きに生きる力を与えることへの期待を寄せています。

誰もが「尊厳」を取り戻し、「可能性」を信じられる社会へ

屋外で明るく笑顔を見せる眼鏡をかけたアジア人男性のビジネスポートレート。
株式会社LivEQuality大家さんの代表取締役社長である岡本拓也氏は、「志高いインパクト投資家の皆さんと共に、全ての住宅に困難を抱える方々が『尊厳』を取り戻し、誰もが『可能性』を信じ、自立して幸せに生きられる社会を目指して参ります」とコメントしています。

LivEQuality大家さんの取り組みは、シングルマザー支援にとどまらず、将来的には障害者を含むより広範なマイノリティの住居課題解決のモデルとなる可能性を秘めています。この「日本版アフォーダブルハウジング」とインパクト投資という新しい資本主義の形が、社会の多様な課題を解決し、誰もが安心して暮らせる社会の実現に貢献していくことが期待されます。

会社概要

  • 会社名:株式会社LivEQuality大家さん

  • 所在地:愛知県名古屋市熱田区千年1丁目11番3号

  • 設立:2022年11月

  • 資本金:1億2501万円

  • 代表取締役:岡本拓也

  • 事業内容:シングルマザー向け住宅の調達と提供(日本版アフォーダブルハウジング)

  • URLhttps://livequality.co.jp/ooya

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77