Last Updated on 2024年10月12日 by 菅間 大樹

障害者の採用面接では一般的な質問から、病気・障害状況の確認まで多岐にわたります。また面接担当者も障害者の採用面接に慣れている方から、初めて面接を担当する方まで様々です。今回は、はじめて障害者採用における面接を担当される方、不慣れな方向けに、面接時のポイントについてお伝えします。

障害者の採用面接は一般的な採用面接と何が違うのか?

障害者採用における面接は、一般的な面接と大きく変わる点はないことをまず知りましょう。つまり、障害者雇用の面接だからといって、特別身構える必要はありません。また、応募者も、入社を希望する人であり、なにかが変わることはありません。そのため、一般的な面接において確認する事項も同じように、志望動機や、履歴書・職務経歴書に基づいた自己紹介になります。それ以外に面接官として聞いておきたいことは、例として以下のようなポイントとなります。

・過去の就労経験
・障害があるなかでできる業務
・障害受容度
・求める配慮
・働く意欲、向上心
・他者との協調性
・支援者などとの関係性

これまでの経験してきた仕事や習得したスキルなどについて確認することは、障害の有無によって変わるものではありません。ただ、障害が先天性かそれとも後天性か、また現在の障害の状況によって、過去に得た経験やスキルを現在も発揮できるとは限りません。一方、過去に経験はなくても就労移行支援施設などでのトレーニングを経たことで習得したスキルや資格もあります。現在のスキルや業務理解などについてより詳しく把握したい場合は、採用前に実習期間を設けるとよいでしょう。

次に、上記のポイントのなかでも特に確認しておきたいのが「障害受容度」です。障害受容とは、自身の障害をどのように受け止めているか、ということです。障害があることを悲観的に捉えたり、マイナス思考になったりするのではなく、現状を客観的に把握し、いまできることやこれからの可能性を前向きに考えられることができている人は障害受容度が高いとされます。

障害者雇用においては、障害が先天性(生まれつきの障害)か後天性(事故や病気などにより生後に障害を負うこと)かによって、その人の障害受容度が変わることがあります。先天性より、後天性の障害者のほうが障害受容ができるようになるまで時間がかかるといわれます。それは、これまで当たり前にできていたことがある日を境に急にできなくなり障害者と分類されることなどを受け入れられず、悲観的や自暴自棄、無気力などの状態に陥ってしまうことがあるからです。

また、先天性、後天性に関係なく、それまで受けてきた教育や社会福祉の制度の中で生活してきた時間の長さなどが、その人の人格形成や社会性、就労意欲やスキルに影響していることも少なくありません。

しかしながら、繰り返しになりますが社員として雇用することに障害の有無は関係ありません。自社の理念や存在意義、経営方針など、一般の面接で応募者に伝えていることがあれば、同様に伝えるようにするのが良いでしょう。一方で障害者枠での採用で契約期間の有無など雇用条件に違いがある場合、当然ながら伝える必要があります。

障害に関係する事項も採用面接時に確認する

また、障害者雇用をする際には、採用面接時に以下のポイントも押さえておきたいところです。

・現在の障害の状況、寛解時期、通院頻度や服薬管理
・日ごろ用いているコミュニケーション手段(メール、電話、会話、手話、筆談など)
・通勤に関する負担感、社内の移動に関する方法、手段など
・職務遂行上、苦手とすることや障害特性上、職場で配慮してほしいこと
・職場内での障害に関する周知範囲など
・主治医、支援者、支援機関、家族との関係性
・求める合理的配慮

現在の障害の状況をどの程度把握できているか、また、自身が仕事につくうえでできること・できないことを客観的に説明できるかなどは面接時に確認しておきたいポイントです。さらには、ビジネススキルや周囲との関係性の築き方なども重要です。障害者の離職理由の1つに「職場内での孤立」があげられるように、障害者の職場定着を図る場合、同僚とのコミュニケーションは重要になります。

また、主治医や支援者、支援機関との関係性についても確認が必要です。就労移行支援事業所を通じての就職の場合、定着支援の頻度や支援者との関係性を確認しておきましょう。ほか、就労支援センターへの登録や、本人が担当者とどの程度連絡を取り合っているか、必要に応じて相談できる関係性があるかなども把握しておくとよいでしょう。人によっては、家族との関係があまりよくない場合もあるため、その際に相談できる支援者がいるかなども確認しておくことをお勧めします。

一方で、あまりプライベートなことに踏み込むのは好ましくありません。そのため、質問する際も、無理に聞き出すことなどはせず、当人が差し支えない範囲で答えてもらうのがよいでしょう。もちろん、就職差別になるような質問は論外です。

障害者雇用でも構えずに一般的な面接を行うことが大切

これらはあくまで一例です。障害者採用における面接は一般的な面接と同じく、会社が求めている人材像と合致するか、を深く探ることです。さらには、障害特性に応じた職場環境を整えるために必要な情報を得ること、応募者が障害についての自己理解ができているかを確認することで、長く活躍できる人材を見きわめることができます。

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77