N=1の視点から社会を変える『当事者発想ジャーナル』が創刊
株式会社STYZが運営するインクルーシブデザインスタジオCULUMUは、2026年4月1日よりWebサイトを全面リニューアルし、新メディア『当事者発想ジャーナル』を開設しました。このリニューアルは、単なるWebサイトの刷新にとどまらず、企業や当事者と共に培ってきた「N=1から事業を創出する実践的なノウハウ」を社会にオープンにするためのものです。インクルーシブデザインの価値を多角的に発信し、事業開発や社会課題解決に取り組む人々へ、具体的なインサイトを提供しています。
「当事者発想」とは何か?障害福祉におけるその重要性
『当事者発想ジャーナル』が掲げる「当事者発想」とは、課題を外側から捉えるのではなく、その状況にある人の視点に立ち、体験や感情、背景まで含めて理解することから始まる考え方です。誰かのために「してあげる」という一方的な発想ではなく、その人と共に未来をつくる双方向の「共創」の視座を重視します。特に、これまで見過ごされてきた人々を起点に設計することで、結果として多くの人にとって価値ある解決につながるという点で、障害福祉分野において非常に重要な視点となります。
このメディアでは、現場の実践から得られたリアルな知見(共創知)を発信する基盤として、事業開発、商品企画、DE&I推進に関わるすべての人々へ向け、多様なコンテンツを届けていきます。詳細については、以下のリンクから『当事者発想ジャーナル』をご覧ください。
障害福祉分野のイノベーションを加速する3つの連載企画
『当事者発想ジャーナル』では、社会課題解決と新規事業開発に役立つ、以下の3つの連載企画が注目を集めています。
インクルーシブプロダクト最前線:ものが社会を変える
この連載では、特定の身体特性や生活背景を起点にしたプロダクトが、どのようにしてマス市場のルールや社会システムまで変える「カーブカット効果」を生むのかを掘り下げます。開発者やユーザーの声を通じて、インクルーシブな製品開発の最前線が紹介されます。
第一弾の記事では、2025年11月に発売されたエレコム株式会社の「触覚フィードバック搭載モバイルバッテリー」の開発チームへの独占インタビューが掲載されています。視覚障害者の「充電切れは、世界との切断」という切実な声から生まれた製品開発の背景には、当事者との深い共創がありました。
N=1が動かすソーシャルイノベーション: 当事者の声を社会実装する
大きな社会課題を動かす起点となる「N=1の違和感」に焦点を当て、深い当事者性を持つ個人がコミュニティを巻き込み、行政・民間・NPOを横断して仕組みを変えていく変革の方法論を、実例とともに明らかにします。
株式会社Haluのインクルーシブデザイン事例「IKOU(イコウ)ポータブルチェア」の開発背景と、多様な家族の「お出かけしたい」という思いを形にしたその挑戦に迫るインタビューも掲載されています。これは、障害のある子どもを持つ家族の外出を支援する画期的な製品であり、ソーシャルイノベーションの具体的な成果を示しています。
共創の現場学:合意形成のリアルと方法論
単一組織では解決できない複雑な社会課題に対し、企業・行政・生活者がどのように協働するのかを探求します。ステークホルダー間の価値のズレを活かす「問いのデザイン」や、合意形成の失敗パターンなど、現場のリアルな葛藤とファシリテーションの技術を可視化することで、共創のプロセスを学びます。
行動経済学を「合意形成」の共通言語として共創の現場で活用する方法を考察する実践的なナレッジ記事も公開されており、人の非合理性を前提とした仕組みのデザインについて深く学ぶことができます。
これらの連載企画は、以下のリンクからご覧いただけます。
『当事者発想ジャーナル』創刊に寄せて
CULUMU代表の川合 俊輔氏は、創刊にあたり「答えを提示することではなく、問いをひらくこと」を大切にしたいと語っています。多様な実践や視点を持ち寄り、考え続けるための余白をつくることで、読者の中に新たな問いが生まれ、共創の実践が広がっていくことを願っています。
また、当事者発想ジャーナル編集長の佐藤 徹氏は、「誰に届くか」を大切にしたメディアであり、まだ言語化されていない違和感や関心を持つ方々にとっての思考の起点となることを目指すと述べています。社会の中に存在する価値ある実践を丁寧に伝え、新たな出会いや対話が生まれることに期待を寄せています。
インクルーシブデザインが「新たな市場参入の条件」となる時代
近年、企業の競争力の源泉は「機能・価格」から「体験価値と社会的スタンス」へと大きくシフトしています。国内では経済産業省・特許庁による「デザイン経営宣言(2018年)」以降、デザインを経営の中枢に据える動きが本格化しました。特に、九州経済産業局が「経営戦略としてのインクルーシブデザイン」という報告書を公表するなど、多様な当事者との共創が事業開発の新たな起点として注目されています。
さらに、法制面からの後押しも進んでおり、障害福祉分野において重要な動きが見られます。日本国内では2024年4月に「改正障害者差別解消法」が施行され、民間事業者による合理的配慮の提供が義務化されました。グローバルにおいても、2025年6月より「欧州アクセシビリティ法(EAA)」が適用開始となり、EU域内で展開する製品・サービスに対し、初期段階からのアクセシビリティ対応が求められるようになっています。このように、インクルーシブデザインはCSRや配慮という枠を超え、事業継続と市場参入のための「新たな条件」として認識されつつあります。
CULUMUが培ってきた「当事者発想」の実践と成果
インクルーシブデザインスタジオCULUMUは、高齢者や障がい者、外国人など、多様な当事者と共創し、事業開発を支援する専門家集団です。その最大の特徴は、5,000以上の非営利団体とのネットワークを活かした独自の調査パネルです。これまでリーチが困難だった人々とのマッチングや定性調査を可能にするその仕組みは、「当事者と近い距離で開発を支援する」と高く評価され、2024年度グッドデザイン賞を受賞しています。
CULUMUは、大手企業からスタートアップまで100件以上の取引実績があり、NPOや研究機関などのパートナーと共に、社会課題解決やDE&Iを推進するプロジェクトを多数手掛けています。具体的な実践的アプローチとしては、以下の2点が挙げられます。
- 現場での対話と試行錯誤から「当事者発想」を育むワークショップ
当事者を「意見を聞く対象」ではなく「共に創るパートナー」としてプロジェクトの初期段階から巻き込みます。例えば、東京国立博物館とのプロジェクトでは、ろう者・難聴者と施設職員が共に館内を巡り、物理的・心理的バリアを顕在化させ、誰もが文化を楽しめる体験アイデアを共創しました。こうした現場での対話とプロトタイピングの反復を通じて、当事者発想を深め、事業のブレイクスルーへと繋げています。 - マスの平均ではなく、深層インサイトを探求する自主調査
マスの平均値を追う従来のアンケート調査とは異なり、「N=1(特定の困難や多様な特性を持つ当事者)」の視点に立った自主調査を多数実施しています。シニア層のデジタル利用やアクセシビリティの現状など、平均の枠からこぼれ落ちる「声なき違和感」を可視化することが、新たなマーケットを創造する起点となります。
無料ウェビナーで最新のインクルーシブデザインを学ぶ
CULUMUでは、新規事業開発、インクルーシブデザイン、当事者発想、顧客理解などをテーマに、これまで累計100回以上の無料ウェビナーを実施し、多くの企業担当者が参加しています。今回のWebサイトリニューアルを機に、オンラインでの情報発信をさらに強化し、現場で得た最新の実践知やノウハウを共有するイベント・ウェビナーを今後も随時開催していくとのことです。最新の開催スケジュールは、以下のWebサイトよりご確認ください。
まとめ:障害福祉の未来を共創する新たな一歩
CULUMUが創刊した『当事者発想ジャーナル』は、N=1の視点から社会課題を捉え、インクルーシブデザインを通じて新たな価値を創造するための貴重な情報源となるでしょう。障害福祉に関わる方々にとって、このメディアは、最新の動向や具体的な実践事例、そして未来を共創するためのヒントが満載です。法改正の波や社会の変化に対応し、より多くの人々が活躍できる社会の実現に向けた、あなたの活動の力となることを期待します。ぜひ『当事者発想ジャーナル』を活用し、インクルーシブな社会の実現に貢献していきましょう。



