「特別な興味」とは、自閉スペクトラム者が特定のテーマや知識、物事に強く惹きつけられること、またその対象を指します。これは一般的な「趣味」とは異なり、抗いがたいほど深く引き込まれるものであり、時には「スーパーパワー」として単純化して語られることもあります。
著者のピート・ワームビー氏は、この「特別な興味」が、過敏な感覚や社会における生きづらさから当事者をどのように守り、人生を豊かにしてきたかを、シニカルでありながらも温かい筆致で紹介しています。「なぜあの行動をするのか」という背景にある世界の「うるささ」やルールの「不可解さ」を鋭い洞察で言語化し、周囲の人々の理解を深める一助となるでしょう。
本書では、著者自身の経験をもとに、具体的なエピソードが数多く語られています。
例えば、1章「自己、アイデンティティ、診断、およびレゴ®」では、自閉スペクトラムの人が世界から受ける感覚刺激を「けたたましく鳴り響くラジオ」に例え、それを鎮める方法として生活の秩序化やルーティン化の重要性を説いています。
3章「人生がハードモードでも―人生を救ってくれたゲームたち」では、人気ゲームが友情の維持の仕方を教えてくれたというエピソードが紹介されています。定型発達の人々には自明とされる事柄が、ゲームを通して学べたという率直な告白は、多くの共感を呼ぶはずです。
さらに6章「自分の世界を築く―マインクラフトは人生だった」では、ゲーム『マインクラフト』が単なる遊びではなく、10年分の作業と記憶が詰まった「人生そのもの」であると語られています。これは「特別な興味」が当事者のアイデンティティや生きる意味と深く結びついていることを示しています。
本書は全8章で構成されており、誰もが耳にしたことのある「典型的」な興味から、著者独自のユニークな興味まで、多岐にわたるテーマが扱われています。
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はじめに――ハイパーフィクセーションとモノトロピズム
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1章 自己、アイデンティティ、診断、およびレゴ®
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2章 恐竜から考察する親戚付き合い
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3章 人生がハードモードでも――私を救ってくれたゲームたち
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4章 カム・トゥゲザー――音楽がくれた青春と友情
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5章 我らのウォーゲーム――オタク趣味といじめ
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6章 自分の世界を築く――マインクラフトは人生だった
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7章 ヒーローと悪役(ヴィラン)――映画の中の正義
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8章 タイタニック号に魅せられて――自閉スペクトラムと超共感
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おわりに
前作『世界は私たちのために作られていない』が示した世界観
本書は、大反響を呼んだ前作『世界は私たちのために作られていない』の世界観を受け継いでいます。前作は「マイノリティとして世界に適応するためにどう頑張るか」ではなく、「世界の初期設定の不平等さ」を独自のユーモアとセンスで描き出し、発売後すぐに重版が決定しました。

著者のピート・ワームビー氏と訳者の堀越英美氏の再タッグにより、今回も「変わってほしいのは世界の側だ」という一貫したメッセージが、読む人の心に響くことでしょう。
前作は以下のAmazonページで詳細を確認できます。
著者・訳者について
著者:ピート・ワームビー(Pete Wharmby)
元英語教師。2017年にASDと診断されて以来、ASDのアドヴォカシー活動に尽力しています。Twitter(現X)やYouTubeチャンネル、ブログを通じて、ASDに関する社会の理解を深めるための活動を精力的に行っています。
訳者:堀越英美(ほりこし・ひでみ)
文筆家。早稲田大学第一文学部卒業。著書に『親切で世界を救えるか ぼんやり者のケア・カルチャー入門』などがあり、訳書には前作『世界は私たちのために作られていない』のほか、『自閉スペクトラム症の人たちが生きる新しい世界 Unmasking Autism』などがあります。
書籍情報
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書名: 世界はうるさいままだけど
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著者: ピート・ワームビー/著、堀越 英美/訳
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判型: 四六判
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頁数: 320頁
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発売日: 2026年2月16日
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価格: 2,475円(税10%込)
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ISBN: 9784491063898
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発行元: 東洋館出版社
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