デフリンピックが繋ぐ「サインエール」とインクルーシブな応援

聴覚障害のあるアスリートが集うデフリンピックは、その競技の魅力だけでなく、手話をベースにした「サインエール」という「見える応援」のスタイルが注目されています。これは、声援が届かない選手たちへ、手話や身振りで直接エールを送る新しい応援の形です。NPO法人プライドハウス東京は、このような多様な応援のあり方を広め、誰もが安心してスポーツを楽しめる社会を目指しています。

スポーツ界におけるDEI推進の重要性と「マイクロアグレッション」

近年、スポーツ選手に対する誹謗中傷や差別が深刻化しており、特にLGBTQ+などの性的マイノリティ当事者は、悪意のない行動であっても相手を傷つけたり不快にさせたりする「マイクロアグレッション」に直面することが少なくありません。このような背景から、応援する側もされる側も心理的な安全性を確保できる環境づくりが、スポーツ界におけるDEI推進の重要な課題となっています。

元デフリンピック日本代表・佐藤湊選手が語る「ダブルマイノリティ」の経験

2025年11月15日に開催された応援イベントでは、デフリンピックのデフサッカー女子日本代表対アメリカ戦のライブ観戦と合わせて、特別講演が行われました。ゲスト講師として登壇したのは、高校3年生からデフ陸上競技の日本代表として3大会連続で出場し、自身もLGBTQ+であることを公表している「ダブルマイノリティ」当事者の佐藤湊選手です。

佐藤選手は、LGBTQ+を含む多様なすべての人々がスポーツの力でつながる”ひとつの安心安全な場”をコンセプトに、自身の経験を語りました。

手話ワークショップの様子

大会の歴史、サインエール、そしてスポーツにおける性別の壁

講演では、デフリンピックの歴史的背景や、東京都スポーツ推進本部が公開している『サインエール』といった試合中の意思疎通方法、そして避けるべき手話表現などについて解説がありました。佐藤選手は、自身の競技経験についても深く語っています。

出生時の性別は女性で、現在はトランスジェンダー男性として生活している佐藤選手は、競技においては誹謗中傷を避けるためにホルモン療法を受けずに女性枠で出場してきた過去を明かしました。「スポーツでは男女がはっきりと分けられますが、それによって参加できない人がいます。その現実から目を背けないでほしいです」という佐藤選手の言葉は、スポーツ界における性別のあり方や、参加の壁について深く考えさせるものでした。

サインエールに関する詳細は、TOKYOインフォメーションの動画で確認できます。

インクルーシブ社会実現へ:プライドハウス東京の今後の展望

NPO法人プライドハウス東京は、今回のイベントを通じて、スポーツにおけるDEI推進とインクルーシブ社会の実現に向けた啓発活動を一層強化していく意向です。誰もが自分らしく、安心してスポーツに参加し、応援できる社会の実現には、私たち一人ひとりの理解と行動が不可欠です。デフリンピックや多様なアスリートの存在は、私たちに多様な視点と共生の大切さを教えてくれます。今後もプライドハウス東京の活動に注目し、共にインクルーシブな社会を目指していきましょう。

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77