ITスキルを持つ障がい者の採用に7割の企業が前向き
現在の企業経営において、DX推進とDEI推進は重要なテーマです。IT・デジタル人材の不足を感じている企業は全体の74.0%にのぼり、その採用の難易度について76.3%が「難しい」と感じています。

このような深刻な人材不足に対し、「一定のITスキルを持つ障がいのある方の採用」を検討する可能性を尋ねたところ、「検討したい」(26.7%)、「どちらかといえば検討したい」(44.7%)を合わせて71.4%が前向きな意向を示しました。

また、障がいのある方のみならず、ITスキルを持った「働きづらさを抱える人」※への採用に対しても64.5%が前向きな回答をしています。
※「働きづらさ」とは、障がい、病気、引きこもり、フリーター、ニート、LGBTなど、さまざまな理由で働きづらさを感じている人を指します。日本には現在約1200万人いると言われています。日本財団WORK! DIVERSITYプロジェクト2019年度報告書

この結果は、障がい者の採用や多様な人材の確保が、企業の成長戦略に貢献する「人材確保策」として認識され始めていることを示唆しています。

「施設外就労」へのニーズと、普及を阻む「法定雇用率の壁」
障がいのある方が自社オフィスなどで働く「施設外就労」について、62.1%の企業が前向きな印象を持っています。これは、直接雇用以外の柔軟な連携形態への関心の高さを示しています。
※「施設外就労」とは、障がいのある方が通所している福祉施設に所属しつつ、一般企業の職場に出向いて実際に働く仕組みです。福祉施設と企業が連携して仕事の機会を提供します。

しかし、現在の制度では施設外就労は原則として法定雇用率の算定対象にはなりません。もしこれが算定対象となった場合、企業の受け入れ意向はどう変わるかを尋ねたところ、60.3%が受け入れに前向きな姿勢を示しました。

また、ITスキルを持つ障がい者が「施設外就労」を経て直接雇用に至るキャリアパスについて、約6割の企業が「魅力的な仕組み」だと回答しています。

これらの結果は、「施設外就労」の普及と「法定雇用率制度」の更なる見直しが、障がいのある方の活躍と企業の人材確保の両方にとって重要な鍵となり得ることを示しています。
業務委託も新たな選択肢に。制度後押しへの期待も
障がいのある方が所属する就労継続支援事業所などの団体へIT業務を委託することにも、約9割の企業が関心を示しています。

制度的な後押し、特に助成金制度が利用できる場合、こうした新たな形での人材活用が大きく広がる可能性が示唆されました。

導入を阻むもう一つの壁は「実務上の不安」
ITスキルを持つ障がい者等を採用する際に想定される課題として、「業務指示の方法などコミュニケーションの課題」(54.6%)が最も多く、次いで「職場環境の整備」(44.3%)、「業務の切り出し・マッチング」(40.5%)が続きました。

企業の意欲は高いものの、具体的な業務設計や現場での運用に関するノウハウ不足が、導入へのハードルとなっている実態が浮き彫りになりました。
まとめ
これまでの障がい者雇用は法定雇用率の達成が主目的で、業務は定型作業に偏りがちでした。しかし、今回の調査で7割を超える企業が「ITスキルを持つ障がい者」の採用に前向きであることが判明しました。これは、障がい者を単なる「支援の対象」ではなく、IT人材不足を解決する「戦力」と捉え始めている大きな潮流の変化を示しています。
この変化を後押ししているのは、DXの進展とIT活用の変化です。専門家でなくとも扱えるノーコード・ローコードのITツールが普及したことで、求められる能力が大きく変わりました。プログラミングスキルから、ツールを使いこなし課題を解決する論理的思考力へとシフトし、それが企業のDX推進力として評価されるようになりつつあります。障がいを持つ方がITスキルを身につけることは、高付加価値業務に就き、賃金格差の是正にも繋がる可能性があります。
また、施設外就労や業務委託といった柔軟な働き方への高い関心は、企業と障がいのある方との関係性が、従来の「雇用主と被雇用者」という枠組みを超え、「価値を共に創り出す共創パートナー」へと進化していく可能性を示しています。
本調査結果は、障がい者雇用が、これまでの「法定雇用率遵守」という守りのステージから、企業の成長に貢献する「戦略的人材活用」という攻めのステージへと移行する転換点にあると考えることができるでしょう。
サイボウズ ソーシャルデザインラボは、「ITの力は、働きづらさを可能性に変える」と考え、障がいや働きづらさを抱える方々がITスキルを習得する機会を提供しています。
サイボウズ ソーシャルデザインラボの障がい者雇用に関する取り組み
今回の調査結果をもとに、企業が「仕事を与える」だけでなく、当事者や支援機関と「共に価値を創る協働モデル」を根付かせるため、調査と実践の両面から活動を続けていくとのことです。
詳細な調査結果は、以下のURLからダウンロードできます。


