福祉を「特別な場所」から「日常の中」へ

現代社会では、少子高齢化や核家族化が進み、子育て世代の孤立や高齢者の社会的孤立など、地域のつながりが希薄になっています。一方で、これまでの福祉施設は「必要な人が利用する専門的な場所」として整備されることが多く、地域に開かれた存在になりにくいという側面がありました。また、従来の地域コミュニティへの加入に負担を感じる人が増え、より「ゆるやかなつながり」が求められるようになっています。

社会福祉法人豊中福祉会では、こうした状況に対し約10年前から「福祉をもっと日常の中にひらき、地域の誰もが関われる場所にできないか」という問いを立てていました。今回、園舎の建て替えを機に、こども園の関係者だけでなく、地域の方々が日常的に出入りし、自然な交流が生まれる「きっかけの場」を創出するという思いで、このプロジェクトがスタートしました。

広々とした明るい室内空間で、木製の床にシンプルなテーブルと椅子が並んでいます。壁際にはロッカーや赤い収納棚があり、多目的室や教室として利用されている清潔感のあるモダンな空間です。

「iro×iroBASE ことぶき」に込められた想い

施設名の「iro×iro(いろいろ)」には、年齢や立場、価値観の異なる多様な人々が、それぞれの個性を尊重しながら集い、支え合える場所でありたいという願いが込められています。「BASE」には、生活の拠点として、必要な時に立ち戻れる場所でありたいという意味を持たせています。

  • 子どもにとっては安心して過ごせる居場所
  • 保護者にとっては相談や交流ができる場所
  • 地域の方にとっては気軽に立ち寄れる場所

この施設は、誰か一人のためではなく、地域全体のための福祉拠点として設計されています。

現代的で洗練されたデザインの商業施設と見られる建物の外観です。白い壁とベージュのアクセント、大きなガラス窓が特徴で、手前には舗装された駐車場と植栽があります。

多世代が自然に交わる“複合拠点”

「iro×iroBASE ことぶき」では、以下の機能が一体的に整備されます。

  • 認定こども園「みらいずこども園」(0歳児~就学前)
  • 学童保育「みらいずアフタースクール」(小学校低学年)
  • 地域交流カフェ「café and… 1616」
  • フィットネス「iro-ha wellness」
  • 習い事教室(生涯学習事業)
  • 地域に開かれた「みんなの園庭」「みんなのホール」

これらの機能は単に併設されるだけでなく、「意図的に集まらなくても交流が生まれる」ことを重視し、視線設計や動線が交わるゾーニングが採用されています。日々の挨拶や会話の積み重ねが、地域の安心感や信頼関係につながると考えられています。また、誰でも入りやすい「開かれた場」でありながら、子どもを預かる施設としての安全性も確保するため、導線・ゾーニング・セキュリティの両立に時間をかけて設計されました。

明るくモダンなコミュニティ施設の建築レンダリング。屋外ウッドデッキと屋内の広々とした空間があり、階段やカフェエリア、ジム(窓越し)が見える。子供から大人まで多様な人々が交流する様子が描かれている。

地域に開かれたカフェ・フィットネス・教室事業

地域交流カフェ、フィットネスジム、習い事教室は、園児や保護者に限らず、近隣に住む地域の方々も日常的に利用できる施設として運営されます。特に高齢者の方々にとっては、日常的に立ち寄れる「居場所」や「人とつながる場」が少なくなりがちな現状があります。この施設では、カフェやフィットネスを通じて、無理なく外出して人と顔を合わせる機会をつくることで、地域とのつながりを自然に育むことを目指しています。

習い事教室(生涯学習事業)についても、園児や小学生だけでなく、幅広い世代の地域住民が参加できる内容が想定されています。外部講師を招き、世代を超えて学びや体験を共有できる機会を設けることで、多様な交流が生まれる環境づくりを行います。

木製のテーブルと椅子が並ぶ広々とした室内で、多くの子供たちと数人の大人が過ごしている様子を描いたイラスト。幼稚園や保育園のような教育施設の空間デザイン案と見られる。

子育て世帯の生活動線に寄り添う設計

学童保育「みらいずアフタースクール」は、子どもの安全な居場所を提供するだけでなく、保護者の送迎負担を軽減することも大きな目的の一つです。算数・国語、英会話、プログラミングなどの習い事が学童時間内で受けられるため、放課後や休日に習い事へ送り迎えする手間が軽減されます。

例えば、上の子どもが小学校に、下の子どもがこども園に通っている場合、送り迎えの時間や場所が分かれることで、保護者の負担は大きくなりがちです。本施設では、こども園と学童保育を同一施設内に整備することで、兄弟姉妹を同時に迎えに行くことが可能となり、日々の送迎にかかる時間や移動の負担を軽減します。子育て世帯の生活動線に寄り添った設計と運営により、保護者が安心して仕事と子育てを両立できる環境づくりを目指します。

現代的なデザインの建物に囲まれた広い芝生の園庭で、多くの子どもたちが遊具や水辺で楽しそうに過ごしている様子。保育園や幼稚園のイメージ。

防犯・防災の視点からも地域を支える拠点へ

「iro×iroBASE ことぶき」は、地域の目による見守りを活かした防犯性の向上に加え、非常時にも地域を支える拠点としての役割を担います。日常的に人が集い、利用される場所だからこそ、いざという時にも機能する施設を目指し、太陽光発電や井戸の整備(断水時の活用を想定)、EV等からの給電も視野に入れた設備整備が行われます。

モダンなデザインの建物内部で、木製の階段と黒い手すりが特徴的です。広々とした空間には大きな窓から自然光が差し込み、木製のテーブルと椅子が並んでいます。一部はまだ建設中か準備中のようです。

交流を前提とした建築・空間設計

施設内では、人の動きが感じられる視線設計や、自然に動線が交わる各事業スペースの配置など、「意図的に集まらなくても交流が生まれる空間づくり」が大切にされています。日々の挨拶や会話の積み重ねが、地域の安心感や信頼関係につながると考え、イベントに依存しない日常的な交流を育むことを目指します。

本施設の設計監理は株式会社日比野設計が担当しています。同社は、世界最大級の国際建築イベント「World Architecture Festival 2025(WAF 2025)」の「完成建築・学校部門」で最優秀賞(Winner)を受賞するなど、教育・保育施設の設計分野で国内外から高い評価を得ています。

今後のスケジュールと展望

「iro×iroBASE ことぶき」は、2026年3月15日にプレオープン内覧会、そして2026年4月1日にグランドオープンを迎える予定です。オープン後も「完成して終わり」ではなく、利用者やご家族、地域の皆さまの声を大切にしながら、地域に愛され、地域とともに育っていく施設運営を目指していくとのことです。

モダンなデザインの建物の前で、屋外エリアの建設工事が進められている様子。円形の基礎工事が行われ、ショベルカーや資材が置かれている。遊び場のような施設も見える。

この施設は、これまで培ってきた子育て支援・福祉の実践を基盤に、これからの福祉施設のあり方を地域から問い直す取り組みです。福祉が特別なものではなく、日常の中に自然に存在する社会へ。その第一歩として、「iro×iroBASE ことぶき」は地域とともに歩み始めます。

施設概要と関連リンク

  • 施設名: iro×iroBASE ことぶき
  • 所在地: 大阪府泉大津市寿町16-16
  • 事業内容: 認定こども園運営、学童保育、地域交流事業 ほか
  • 運営法人: 社会福祉法人 豊中福祉会

関連リンク:

広々とした明るい空間で、美しい木目のフローリングが特徴的です。大きな窓からは自然光がたっぷりと差し込み、開放感があります。モダンな内装デザインで、多目的な利用が可能な清潔感のある部屋です。

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
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