【内容情報】(出版社より)
制度化の罠にかかった「発達」の世界に灯りをともすために――
約半世紀にわたって「発達」と向き合ってきた著者が、過去の著作物に現在の考えや思いを「補注」として記し編みなおした書。
子どもの発達が「能力の発達」として枠づけられ、制度化のなかに絡めとられている――本書は、約半世紀にわたってこの問題に向き合い、多数の著作を生み出してきた著者が、過去の論文・書籍を今一度読み直して手を加え、現在の考えや思いを「補注」として記すかたちで編みなおした書である。いじめや不登校が減らない現実、発達障害への過度の注目、子育てや教育をめぐる意識の変化など様々な課題を抱えるいま、時代を超えた「今昔の対話」から明日への希望を紡ぎ出す糸口を探る。
【目次】
はじめに
第Ⅰ部 発達心理学が注目されはじめた時代に
第1章 発達心理学は人間の理解にとどくのか
知ることは変わること
1 なぜ人間理解について論じるのか
2 発達心理学の制度化
3 発達心理学の定義にみる自己規定
第2章 人の発達を生活世界の形成過程として見る
人間の全体的な理解のために
1 個体能力、関係力動、状況世界という三つのレベル
2 発達は順行的な形成の過程である
3 完態の視点から見た「個体能力論」の逆行性
第3章 疎外の個体発生論に向けて
生活世界という見方
1 生活世界のなかの場と時
2 状況世界に巻き込まれて
間奏:四〇年前に語ろうとしたこと
第Ⅱ部 「発達、発達」と叫ばれるこの時代の発達心理学
第4章 学校で学ぶことの意味とその反転
発達と学校制度
1 「成績」という名の教育評価──その慣性と違和
2 学校は何をするところか
3 あらためて評価の意味を問う
第5章 発達心理学研究は人間理解を放棄したのか
学会の外から見た学会の風景
1 発達心理学の制度化
2 個体能力論の壁
第6章 発達障害を考える──「発達」をめぐる誤解と混乱
「発達、発達」と叫ぶこの時代
1 時代の変化と発達
2 「脚力」という比喩
3 「発達障害」の蔓延と個体化
4 私たちは「理由の世界」を生きている
筆者の関連著作一覧
- 出版社 : ミネルヴァ書房
- 発売日 : 2023/3/27
- 単行本(ソフトカバー) : 212ページ