【内容情報】(出版社より)

学ぶ能力が欠如しているとされ「学び」から排除されてきた知的障害者の生涯学習にはどのような意味があり、いかにして可能なのか。インクルーシヴな生涯学習について、政策や制度の検証、インフォーマル/ノンフォーマル教育の実践事例、基礎教育保障、文化芸術等を通した「学びの原理」の検討をもとに知見を積み上げた一冊。

すべての人が参加し協働して課題を解決し、よりよい社会を共同で創造していく未来を思い描きながら、そうした未来に向けて教育はどうあるべきか、個々人はどのような力を得ていく必要があるのか、多様な能力を前提にした協働はいかにありえるのか、といったテーマを社会に問いかける。

◆目次
はじめに

第1部 障害者の生涯学習推進の背景と実際
第1章 障害者の生涯学習推進の前提
 1.誰にとっても身近な問題
 2.障害の概念をめぐって
 3.合理的配慮
 4.学ぶ機会の拡充と多様化
 5.葛藤への焦点化
第2章 公民館は障害者の学びに貢献してきたか
 1.谷間に落ち込んできた領域
 2.障害者の生涯学習推進政策の登場
 3.公民館の先駆的な事例
 4.どこから手を着けるか
第3章 障害者の生涯学習推進政策の概念枠組みと未来社会
 1.政策動向とその背景
 2.障害者の生涯学習推進政策をめぐる概念の整理
 3.政策の構造的把握と考察
 4.人口減少社会における障害者の生涯学習推進政策
第4章 障害者の生涯学習推進政策のリージョナルな取り組み
 1.障害者の生涯学習推進の具体的な課題
 2.リージョナルな取り組みとその重要性
 3.障害者の生涯学習連携コンソーシアムの挑戦――兵庫県の場合

第2部 さまざまな形の学びの場づくり
第5章 教育と学びを重層的に捉える
 1.社会教育と生涯学習の概念と理念
 2.フォーマル教育、ノンフォーマル教育、インフォーマル教育
第6章 インフォーマルな学びの場の教育力
 1.インフォーマル教育実践における「場のちから」
 2.「場のちから」を示すデータの収集
 3.「配慮」はどのように共有されたか
第7章 インフォーマルな学びの場としての都市型中間施設
 1.緩やかな公共空間
 2.「のびやかスペースあーち」10周年調査
 3.インフォーマルな学びはいかに機能したか
 4.都市型中間施設の可能性と課題
第8章 ノンフォーマルな学びの場の多様性――大学教育の挑戦
 1.「難しいけど楽しい」学び
 2.国内外の大学教育プログラムの展開
 3.「学ぶ楽しみ発見プログラム」の概要
 4.ノンフォーマル教育としてのKUPI
第9章 知的障害学生との合同授業を経験した大学生の葛藤と学び
 1.大学生の体験型福祉教育
 2.授業の内容と学生の学びの記録
 3.学びの構造
 4.間主観的学びの萌芽
第10章 ノンフォーマル教育の公教育性――障害者青年学級をめぐって
 1.障害者青年学級の歴史と現在
 2.障害者青年学級の公教育性

第3部 学びの原理
第11章 「障害者の基礎教育保障」は「共生保障」になりえるか
 1.「障害者の基礎教育保障」をどう把握するか
 2.「共生保障」としての障害者の基礎教育
第12章 生命の豊かさを支える実践としての知的障害者の音楽活動
 1.オルタナティヴな価値の創造過程を探る
 2.〈たんぽぽ〉の音楽活動の描写
 3.相互作用に開いていく心と身体
 4.他者・自然と出会う身体的経験へ
 5.知的障害者の音楽活動の意味再考
第13章 語りが意味をもつ場の創出へ
 1.語りと教育の境界
 2.障害者の主観的な経験への着目
 3.障害の人間化
 4.無条件の歓待が起こる場
 5.「小さな声」を聞くとはどういうことか
 6.「小さな声」をめぐるコミュニティ

あとがき
引用・参考文献一覧
索引

  • 出版社 ‏ : ‎明石書店
  • 発売日 ‏ : ‎2023/5/13
  • 単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎240ページ

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Written by

今井 靖之

findgood編集者、ライター。

大手電機メーカーで半導体電子部品のフィールドアプリケーションエンジニア、インターネットサービスプロバイダのプロモーションやマーケティングに従事。以後フリー。

身内に極めて珍しい指定難病者を抱える。

神奈川県川崎市在住。サブカルヲタク。「犬派?猫派?」と聞かれたらネコ派、猫同居中。