制度にない“暮らしのケア”を届けるために
えがおさんさんの活動は、約30年前、24時間人工呼吸器が必要な子どもたちが在宅で過ごす選択肢がほとんどなかった時代に、「それでも我が子と自宅で生活したい」と願う母親たちの思いに応えるボランティア活動から始まりました。当時の健康保険制度では、子どもの訪問看護はまだ十分に整備されておらず、在宅での医療的ケアは難しい状況でした。

同法人の根幹にあるのは、「制度よりも生活を優先する姿勢」です。医療行為だけでなく、子どもとその家族が笑顔で暮らせる「あたりまえの生活」を実現するため、制度の枠にとらわれない支援を追求してきました。
「在宅ケア業」という新しい発想
医療的ケア児の在宅支援は、単に医療行為を行うだけでは完結しません。看護、介護、外出、遊び、学びといった、生活のあらゆる側面が連携して初めて「暮らし」が成り立ちます。えがおさんさんでは、この多角的な支援を「在宅ケア業」と呼び、訪問看護、居宅介護、児童発達支援、放課後等デイサービス、ボランティアの5事業を連携させて支援を提供しています。

症状の重い子どもには1日8時間にも及ぶ長時間の訪問を行うこともあり、医療的ケアはもちろんのこと、家族が安心して休めるよう「家族の黒子」として寄り添うことを大切にしています。
「看護福祉士」という生涯を支える視点
1990年代後半の訪問看護制度では、医療的処置が中心で訪問時間も限られていました。そこで、えがおさんさんでは、看護師が「介護職」としての役割も担うことで、訪問看護制度と障害福祉制度の両方を活用し、より柔軟な支援体制を整えてきました。同法人は、この“看護”と“福祉”の視点を併せ持つ支援のあり方を「看護福祉士」と呼んでいます。
重症心身障がい児者が自宅で生活することは、家の中だけで過ごすことを意味しません。通院や学校、地域や社会へ出かけ、遊びや友人との関わりなど、様々な経験を重ねることが大切な生活の一部です。看護福祉士は、外出支援などの必要な場面で看護師が介護職となり、移動支援などのサービスも併用しながら、子どもたちの成長と生活の広がりを支えています。この「看護」と「福祉」が一体となった支援は、利用者とその家族、そして支援する看護師双方の願いを叶える形となっています。
子どもの成長とともに歩む30年、スタッフが“ファンになる”関係性
現在、えがおさんさんの利用者は0歳から成人まで約150名に上り、最年長は38歳です。同法人は年齢で区切ることなく、「生涯を支える存在」として、家族の“黒子”のように寄り添い続けています。0歳の頃から成人まで十数年にわたり支援を続ける利用者もおり、その成長をともに見守ることが何よりの喜びであると語られています。

えがおさんさんの特徴の一つは、スタッフ同士、そして利用者との温かい関係性です。現場では自然と「〇〇ちゃんファンクラブ」という言葉が生まれるほど、看護師、療法士、ヘルパー、児童指導員、保育士がそれぞれの立場で支援しながら、互いの強みを引き出し合う関係が築かれています。「支援する人も笑顔でいることが、利用者の笑顔につながる」という循環が、30年間大切にしてきた財産です。

次の時代へ——笑顔の地域社会を目指して
えがおさんさんは、「えがおさんさんに頼れば、きっと笑顔で暮らせる」と利用者や地域の人々に思ってもらえる存在であり続けることを願っています。30年の歩みの中で制度は少しずつ整ってきましたが、社会の変化や暮らし方の多様化により、今なお制度のすき間にこぼれ落ちている課題が数多く存在すると認識しています。同法人は、こうした“すき間のニーズ”に真摯に向き合い、現場から見える課題を制度に反映できるよう、これからも積極的に取り組んでいくとのことです。
また、これからのえがおさんさんは、現場の経験と知見を次世代に伝える研修・教育事業にも力を入れ、「障がい児者を支える地域」をともにつくる人材育成を進めています。訪問看護ステーションさんさんは、小児訪問看護の質向上と普及を目的とした様々な社会的活動や人材育成に積極的に取り組んでいます。
- 全国訪問看護事業協会 小児訪問看護推進検討部会 委員としての参画
- 小児訪問看護に関する各種研修における講師活動
- 放送大学「小児看護学22」における協力
- 看護学科の大学生・大学院生を対象とした講義
- 地域における講演および啓発活動の実施
- 訪問看護専門誌ならびに関連媒体への寄稿
- 地域の看護学生を対象とした実習受け入れへの協力
- 区立認可保育園・こども園職員を対象とした医療的ケア研修



特定非営利活動法人えがおさんさんの詳細については、以下のウェブサイトをご覧ください。

