Last Updated on 2021年5月27日 by 今井 靖之

パンデミック終息後の就労支援を見据えて、誰もが活躍できる社会を⽬指して〜病気や障害があっても仕事がある豊かな⼈⽣のために

株式会社金剛出版プレスリリース

株式会社金剛出版(本社:東京都文京区、代表取締役:立石正信)が、サラ・J・スワンソン、デボラ・R・ベッカー著/林輝男監訳/中原さとみ訳『IPS援助付き雇用―精神障害者の「仕事がある人生」のサポート』を2021年3月23日に刊行しました。
B5判|384頁|価格5,060円(税込)ISBN 978-4-7724-1798-3

◆「IPS援助付き雇用」とは
「援助付き雇用」(Supported Employment)とは、障害その他の理由で働くことが難しい方のための就労支援サービスの一つで、障害者雇用ではない地域の一般企業への就労を支援します。なかでも「IPS援助付き雇用」は、重い精神障害がある人を対象として就労スペシャリストと医療スタッフがチームを形成し、クライアントの希望にマッチした就労を実現するために、職探しから就職後までクライアントごとに個別化された支援を継続的に提供するプログラムです(IPSはIndividual Placement and Support(個別職業紹介と支援)の略です)。

IPS援助付き雇用では、サービス対象者を障害の重さで区別せず、働く意欲のある方ならば誰でもサービスに受け入れ、障害の評価に時間をかけるよりもクライアントと相談しながらそれぞれの希望と長所にマッチした職場を迅速に探索します。また就労スペシャリストは積極的に地域の企業と関係を形成し、雇用主への支援も提供します。

IPS援助付き雇⽤は、多くの研究により8つの基本原則に忠実であるほど効果が上がることが臨床研究で実証された、エビデンス(科学的根拠)に基づくサービスです。IPS援助付き雇⽤は世界20か国で展開され、景気動向や都市部・地⽅など労働環境を問わず他の就労サービスよりも⾼い成果を上げています。当初は精神障害者を対象としたサービスでしたが、近年は、犯罪歴がある⼈、物質使⽤障害がある⼈、発達障害や脊髄損傷がある⼈、⽣活困窮者、学⽣などにも対象を広げています。

IPS援助付き雇用は、就労はメンタルヘルスへの重要な介入であり、尊厳、自尊心、ポジティブなアイデンティティ、社会的なつながり、目的意識をもたらすものと考えます。⽀援を受けながら地域社会の⼀員として働くことで地域の偏⾒が減り、⼀般就労は難しいと判断されていたクライアントが仕事を得て⼈⽣を取り戻し始めると、別の支援者たちの意識にも変化が⽣じ⻑期的な⼈⽣の⽬標を⾒据えた⽀援が展開されるようになります。

COVID-19パンデミックが終息し経済状況が回復しても、この間に職を失い、経済的な問題と精神的な問題を同時に抱えることとなった人たちは再就職に困難を抱えることになり、特に女性の多くは以前の雇用レベルに戻れない可能性が指摘されています。IPSの開発者たちは最近の論文(※)で、職を失い給付と手当でこの間生活してきたそのような人たちが、激変した雇用市場に再度参入していくためには、健康面と職業上のサポートを組み合わせ、社会への再統合を支援するIPS援助付き雇用のような支援がさらに必要となるだろうと論じています。
※Drake, R. E., Sederer, L. I., Becker, D. R. & Bond, G. R. (2021). COVID-19, Unemployment, and Behavioral Health Conditions: The Need for Supported Employment. Administration and Policy in Mental Health and Mental Health Services Research, 48, 388–392.

◆『IPS援助付き雇用―精神障害者の「仕事がある人生」のサポート』の特徴

  • IPS援助付き雇用の開発者らによる最も詳細な実践マニュアル/豊富な支援例とクライアントや支援者たちの言葉を交えながら、IPSを基礎から解説。IPSサービスの原則から面接スキル、雇用主・家族・関連機関との連携、IPSの所属機関への導入まで、IPS援助付き雇用のサービスを導入し・継続し・効果を上げるための情報を網羅しています。
  • 世界の精神保健の新しい主流、当事者中心の支援(person-centered approach)の実践/本書では、当事者を病気や障害がある前に「一人の人」として捉え、あくまでも当事者の希望を中心に置きながら、希望する就労へ向けて支援者がどのような姿勢で関わり、企業とどのように関係性を築いていけばよいのかを具体的に学ぶことができます。
  • 効果的なサービスを継続するために必要なツールと記録書式/クライアント・家族・雇用主・関連機関と良好な関係を形成するためのツールと配布資料、IPS援助付き雇用サービスを管理・運営するための豊富な記録書式を収載しています。

◆訳者より―『IPS援助付き雇用―精神障害者の「仕事がある人生」のサポート』誕生の背景
本書の監訳者、林輝男先生(島根県社会医療法人清和会西川病院副院長・精神科医)と訳者の中原さとみ(東京都社会福祉法人桜ヶ丘社会事業協会桜ヶ丘記念病院・精神保健福祉士)は、それぞれの機関でIPS援助付き雇用を実践し普及活動を行っています。IPS援助付き雇用は世界中に広がっているものの、国内においては一部の支援者の自主的な実践にとどまっています。私たちは、精神障害者をはじめ多くの方がIPS援助付き雇用を利用して、自分に合った働き方を通して豊かな人生を送ってほしいという願いから本書の翻訳に取り掛かりました。出版資金の調達にはクラウドファンディングを活用しました。全国から「夢の実現のために頑張って」など温かいメッセージとともに、多くの方のご支援とご協力をいただいて本書は生まれました。(中原さとみ)

◆『IPS援助付き雇用』の下記のフェイスブックページにて訳者が本書の活用法などを紹介しています。
https://www.facebook.com/IPS.Supported.Employment

◆『IPS援助付き雇用―精神障害者の「仕事がある人生」のサポート』の読者対象

  • 精神保健福祉の実践者、就労支援関係者、支援機関の管理者
  • 障害者の援助職に就こうとしている学生、教育関係者
  • 産業精神保健関係者、キャリア支援の担当者、企業の人事担当者
  • 福祉政策や医療政策、労働政策にあたる行政担当者

『IPS援助付き雇用―精神障害者の「仕事がある人生」のサポート』
URL:https://www.kongoshuppan.co.jp/book/b563872.html
B5判|384頁|ISBN:978-4-7724-1798-3|価格5,060円(税込)

全国の書店・ネット書店・大学生協よりご購入・ご注文いただけます。
金剛出版のウェブサイトからも直接ご注文いただけます。

◆お問い合わせ先
株式会社 金剛出版:TEL:03-3815-6661(代表)
お問い合わせフォーム→https://www.kongoshuppan.co.jp/contact/

◆会社概要
会社名:株式会社 金剛出版
所在地:112-0005東京都文京区水道1-5-16升本ビル
代表者:立石正信 設立:1968年
URL:https://www.kongoshuppan.co.jp
事業内容:臨床心理学・精神医学・精神保健福祉に関する専門書の出版

購入はこちら

Written by

今井 靖之

findgood編集者、ライター。

大手電機メーカーで半導体電子部品のフィールドアプリケーションエンジニア、インターネットサービスプロバイダのプロモーションやマーケティングに従事。以後フリー。

身内に極めて珍しい指定難病者を抱える。

神奈川県川崎市在住。サブカルヲタク。「犬派?猫派?」と聞かれたらネコ派、猫同居中。