Last Updated on 2021年1月19日 by 今井 靖之
丸いケーキを3等分してみてください
株式会社新潮社プレスリリース
『ケーキの切れない非行少年たち』(宮口幸治・著)が、オリコン(新書部門)、トーハン(新書・ノンフィクション部門)、日販(新書・ノンフィクション部門)の年間ベストセラーランキングでいずれも1位となり、「3冠」を達成しました。
本のベストセラーは、多くの会社が、前年の11月から翌年の11月までのおよそ1年間の累計で算出しています。そのため毎年この時期、12月初めにベストセラーランキングが発表されます。
2019年7月に刊行された新潮新書『ケーキの切れない非行少年たち』は、発売以来、養老孟司さんやカズレーザーさんら各界著名人が賛辞を寄せた話題の1冊。昨年、各社が集計した年間ベストセラーでは新書(ノンフィクション)部門でも第3位にランクインしています。
特筆すべきはその息の長さです。年が明けてもその勢いは衰えず、今年はついにオリコン、トーハン、日販のいずれの年間ベストセラーランキングにおいても、『ケーキの切れない非行少年たち』が部門の第1位となりました。2年連続のランクインです。
ちなみにオリコンのデータによる同書の期間累計部数(2019年11月18日~2020年11月22日)は、44万4815部。これまでの発行総部数は65万部に到達しています。
『ケーキの切れない非行少年たち』は、人口の14%程度いるとされる「境界知能」に焦点を当てた本です。「境界知能」とは、IQにおいて70~84程度で、いわゆる「知的障害」(IQ69以下)とまでは言えないが、現代社会で生きていく上では相当程度の困難に直面していると考えられている人たちです。このテーマは従来タブー視されがちでした。
本書では、児童精神科医である著者が、医療少年院で出会った「非行少年」たちの衝撃的な実態を明かしています。
「丸いケーキを3等分してみてください」
そう言って、シンプルな円が書かれた紙を提示します。多くの人は、円の中心から放射状に線を引くことでしょう。
ところが、この課題に対して、非行少年たちは思いもよらぬ回答を示しました。2等分した後に首をひねり、強引に横線を引く者もいれば、無造作に横に3本直線を引く者も。同書のオビに用いられているのが、彼らの回答例です。
彼らはふざけているのではありません。境界知能ゆえにこのようなことになるのです。
こうした少年たちは、社会で生きていくうえで自分だけでは乗り越えられない壁にぶつかりがちです。相手の言う事、問う事が理解できないのですから、当然でしょう。そして、一部の者は犯罪に走ってしまうのです。
実は殺人、強盗、強姦などの「凶悪な犯罪」を起こした非行少年たちの中には、「境界知能」ゆえに物事の認知能力が低く、幼少期からさまざまな困難に直面していた「傷ついた子どもたち」がかなりの数含まれている。著者は医療少年院でこうした子どもたちと接し、力になってきました。
いじめ、あおり運転、幼児に対する性非行、ネグレクト、無計画な暴行や殺人など、世の中には「なんでそんなことをするのか分からない」と周囲が戸惑うこと、理解に苦しむことが数多くあります。そうした事件、トラブルの背景にも、この「境界知能」が関係していることが示唆されています。
彼らに明確な悪意は存在せず、「認知のゆがみ」が原因なのではないか――この指摘に気づきを得たという声が著者や編集部にも多く寄せられています。
本書は、各メディアでたくさんの紹介をされてきました。「非行少年」がテーマのドラマ(現在放映中の「さくらの親子丼」)では、劇中、主人公が本に直接言及する場面も登場しました。また、本書をベースに、著者本人の脚本によるコミック連載も進行中です。
この機会に、ぜひお手にとってご覧いただければ幸いです。
【タイトル】ケーキの切れない非行少年たち
【発売日】2019年7月13日
【造本】新書判
【本体定価】720円(税別)
【ISBN】978-4-10-610820-4