Last Updated on 2020年7月22日 by 菅間 大樹

2019年11月17日に行われたシンポジウムの様子をレポート

11月17日(日)、川崎市国際交流センターにて「2019医療通訳シンポジウム in 川崎」が開催されました。
findgoodでは、主催するNPO法人インフォメーションギャップバスター様よりシンポジウム開催のご連絡を受け、取材を行いましたので、その様子をレポートいたします。

NPO法人インフォメーションギャップバスター、伊藤芳浩理事長

医療通訳シンポジウムは2014年の初開催から数えて5回目。
現役の国会議員らも訪れるなか、会場は200名を超える参加者で満員となりました。
シンポジウムはNPO法人インフォメーションギャップバスター、伊藤芳浩理事長の挨拶からスタート。
講演では、市立札幌病院勤務で選任手話通訳者の濱野亮子氏、鹿児島市立病院勤務の手話通訳士、山口龍子氏、国立国際医療研究センター病院の看護部第2外来副看護師長で医療コーディネーターの小山内泰代氏の3氏が登壇しました。

市立札幌病院の取り組み‐濱野亮子氏(聴者、手話通訳者)

濱野亮子氏からは、手話通訳者の業務が、診察や検査、手術、病棟対応、受診手続き等の手話通訳全般に及ぶこと、勤務体系、医療者(医師、看護師)や患者との日ごろの連携についての報告がありました。

そのなかで、連携の基本は人と人とのやり取りに尽きること、医療者と患者の信頼関係の形成を支えるのが手話通訳者の仕事であり、行ってみればホテルのコンシェルジュ的な役割であること。手話通訳者として働くうえで、医療に関する知識を持つことは自身と患者を守るために必要であることなどが語られました。

一方、現役の手話通訳者の採用条件の見直しが必要であるとともに、他者(医療者、患者)の状況に影響される仕事であることから仕事量をコントロールできずストレスが溜まりやすい現状や想定外の状況が常に生まれている状況など、第一線で働いている手話通訳者ならではの体験が明らかになり、国レベルでの改善が必要だという提言もなされました。

鹿児島市立病院の取り組み‐山口龍子氏(聴者、手話通訳士、社会福祉士)

次に登壇した山口龍子氏は社会福祉士でもある立場からの報告となりました。
鹿児島市の設置通訳の現状にはじまり、鹿児島における手話通訳設置に至る経緯を、自身が手探りのなか、業務をスタートせざるを得なかったこと。
手話通訳の養成、人材不足はも鹿児島でも問題になっていることなどが語られました。

講演のなかでは「手話通訳が院内にいることのメリット」として、患者が病院に来て依頼すればすぐに対応できることがあげられるほか、院内にいる手話通訳者は病院職員扱いとなるためカルテを閲覧できたり、医療者と連携することで継続的な支援ができたりすることが述べられました。
一方、デメリットとしては手話通訳者を雇うことが病院側の費用負担となっており、その費用は結果的に患者がサービス費として負担している状態であることが伝えられました。

また、山口氏自身が、病院内への聴覚障害と手話通訳の理解普及・医療従事者との連携方法を探るなかで院内での手話教室を実施したり、病棟の頻回訪問をしたりしていること。濱野氏同様、信頼関係の構築が欠かせないことなどに話は展開し、最後に院内に手話通訳者がいることや、ろう者のソーシャルワーカーが増える世の中になっていってほしいと、将来への希望を語られるなかで講演は終了しました。

国立国際医療研究センター病院国際診療部の取り組み、トークショーを経て閉幕

3講演目で登壇したのは小山内泰代氏。訪日外国人と在留外国人が国の政策として増加するなかでの医療コーディネーターとしての役割についての報告がされました。
政策として医療のグローバル化が病院に求められていること。一方で病院には受け入れにおいて医療費の請求、支払い、避難経路図などでの多言語対応、宗教や習慣に配慮した院内食の提供など実施されていることが報告されました。
また、そのなかで医療コーディネーターとしての役割として外国人患者がスムーズに受信できるよう支援することの大切さや、ホリスティック(心身ともに健康な)な支援を心掛けていることなどが伝えられました。

最後に、NPO法人インフォメーションギャップバスター理事、NPO法人川崎市ろう者協会理事の吉田将明氏の司会のもと、講演者の3名に、ろう者で筑波技術大学教授の大杉豊氏をシンポジストに迎えたトークショーが行われ、シンポジウムは幕を閉じました。

「2019 医療通訳シンポジウム in 川崎」抄録集 販売のお知らせ

本シンポジムの抄録集を下記の通り販売いたします。
ご希望の方は下記URLの購入申込フォームからお申込み下さい。講師の資料、補足資料などで構成され、約40ページあり、コート紙仕上げになります。それぞれの地域の取り組みや課題など詳細にわたってまとめられており、医療通訳の現状を知るにはオススメの資料です。

https://www.infogapbuster.org/?p=3307

本資料は、入金を確認後、2週間ほどで送付いたします。

抄録集は下記の資料が含まれています。
<講演(1)> 市立札幌病院の取り組み -手話を医療の懸け橋に- 濱野亮子氏(聴者、手話通訳者)
<講演(2)> 鹿児島市立病院の取り組み -院内手話通訳として- 山口龍子氏(聴者、手話通訳士、社会福祉士)
<講演(3)> 国立国際医療研究センター病院国際診療部の取り組み -医療コーディネーターの活動から- 小山内泰代氏(聴者、看護師、助産師)
<トークショー> テーマ:手話通訳者設置病院を増やすためには何が必要か?
司会:吉田将明氏(ろう者、薬剤師、NPO法人インフォメーションギャップバスター理事、NPO法人川崎市ろう者協会理事)
シンポジスト:濱野亮子氏、山口龍子氏、小山内泰代氏、大杉豊氏(ろう者、筑波技術大学教授)

本抄録集は参加者に配布したものと同じものになります。

◆販売価格(送料、税込)
1冊: 950円
3冊:2,600円(250円引)
5冊:4,400円(350円引)

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
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