Last Updated on 2023年4月28日 by 菅間 大樹

麻痺とは何らかの原因で体が思うように動かせなくなった状態のことです。
麻痺の程度は様々で、完全に動かすことができない「完全麻痺」や動かしにくさはあるが動く「不全麻痺」、目に見えない分では神経や呼吸に使う筋肉の麻痺などがあります。
身体に麻痺をきたすと、日常生活はもとより、仕事の面でも何らかの「できない」ことがらに直面します。そのため、職場選びはより慎重になるのではないでしょうか。

「左半身に麻痺があります。左手が使えず、足も思うように動きませんが、歩くことはできます」
「脳梗塞の後遺症で左半身麻痺と言語障害があります」
「怪我で半身マヒに。車いす生活です」
「脳梗塞の後遺症で左片麻痺があります。基本的に左手足を使えず、すべての動作は右手足だけで作業を行います」

このように、麻痺の原因や程度は様々なので「麻痺がある方」という条件で語るには、事情が違い過ぎる面が多々あります。

しかし、アンケート結果から麻痺によって仕事で困ったことや職場で受けているサポート、自身で工夫していることや役に立つアドバイスには、共通点も多くあります。

今回は、アンケート結果から見えてきた「仕事探しの始め方」「自分にあった仕事の選び方」などをまとめました。これからの就職や復職の参考にしてください。

目次

  1. 麻痺がある方が経験した仕事における不自由さ
  2. 麻痺があっても働きやすい職場環境とは
  3. オススメの企業・業界・業種
  4. 面接のポイントは伝え方
  5. 入社後に心がけていること
  6. これから仕事をさがす方へ
  7. 最後に

1.麻痺がある方が経験した仕事における不自由さ

麻痺がある方は日常や仕事探しでどのような体験をされているのでしょう。アンケートに寄せられた声をみていきましょう。


「脳腫瘍の手術後、左半身まひになった。左手が使えないため、軽作業の仕事などでも食べ物関係のものは、左手に手袋が出来ないため採用してもらえない」
「脳性まひで、手先の細かい作業が苦手です。電話の応対も多くて言語障害があるので、相手にびっくりされたことも沢山」
「左半身に麻痺があり歩いたり重い荷物を持つことができない。痺れを抑える薬の副作用で眠気が強い」
「右腕に麻痺があり肩から指先まで全て自由に動きません。首が凝りやすく疲れ易いです」
「多発性硬化症により右手が麻痺しており、字を書くことが非常に難しい状態です。また、両足が不自由で歩くことができず、車いすで普段移動しています」
「右手の使用が困難なので、電話の受電の時メモがとれない」

麻痺の部位や程度によって不自由さは異なります。就職して仕事をしていくためには、個々の状態に合ったサポートや工夫が必要になってきますね。

また、再発防止や痺れを抑える薬などの影響で、眠気や倦怠感を感じやすいといった声もありました。麻痺だけではなく、周囲の人からはわかりにくい部分での体調の整いにくさとも付き合いながら仕事をされている方がいるということがわかります。

そして、麻痺が生じていない部分を駆使してできる作業があっても、麻痺していない部分に負担がかかり新たに痛みが生じるなどこともあるのです。

こうしたことから、麻痺のある方が仕事をしていくためには、麻痺を加味した上でそのことに付随する様々な不自由さや課題を職場に理解してもらう必要があります。

それは、一見大変なことのようですが、実際に会社や一緒に働く同僚のサポートを受けながら麻痺があっても働くことができている方は大勢いるのです。

では、どのような環境ならば、麻痺があっても無理なく働き続けることができるのでしょうか? 今回のアンケート結果で得ることができた、働きやすい職場環境をみていきましょう。

2.麻痺があっても働きやすい職場環境とは

麻痺があっても働きやすいく満足度が高い職場環境についての意見は、大きくわけて以下の3点が挙げられていました。

  1. バリアフリーなど物理的に配慮のある環境
  2. 通勤に関して配慮がある職場
  3. 体調管理に配慮のある職場

では、それぞれ具体的なコメントとともに、詳しく見ていきましょう。

2-1 物理的に配慮のある職場 (バリアフリーへの意識)


「両下肢麻痺です。特に左足の膝が曲げられないので階段の上り下りが大変です」
「装具や杖を突きながらの歩行が余儀なくされるので走ることやテキパキ動くことができません」
「後縦靭帯骨化症で下半身に麻痺があり運動障害で車椅子での生活をしています。」

移動に車椅子や杖を利用する方にとって、段差は物理的な障害になります。社会全体でバリアフリー化は進んできていますが、実際に勤務するその建物がどうなっているのかを確認する必要がありますね。


「施設のバリアフリー化が充実しているとは言えない状況です」
「トイレに関しては、身障者用のトイレが全くないので、そういう点では大きくマイナス点です」
「トイレや入り口等“バリアフリー”を謳いながら、全然バリアフリーではない。健常の人が『こんなんで大丈夫やろ』みたいな仕事がありありとわかる。入り口等はうわべは車イス対応なのに、実際に車イスで移動なんかできっこない」

バリアフリー化が不十分で、負担や無理を毎日感じている声がきかれています。麻痺がある方にとって、職場の建物の構造が仕事の質に影響を及ぼす可能性は大いに考えられます。就職活動の際には環境の確認が欠かせないですね。

以下、喜ばしい回答もあったので紹介します。


「洋式トイレのある部署に配属してもらえた」
「車内に車椅子対応の設備がある等働きやすかった」
「新たな障碍者用トイレを設置してくれた」

働きやすい環境に配属されたり、新たにトイレやスロープを設置するなどの対応をしてもらうことができたという回答は就職活動の励みになりますね。

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Written by

今井 靖之

findgood編集者、ライター。

大手電機メーカーで半導体電子部品のフィールドアプリケーションエンジニア、インターネットサービスプロバイダのプロモーションやマーケティングに従事。以後フリー。

身内に極めて珍しい指定難病者を抱える。

神奈川県川崎市在住。サブカルヲタク。「犬派?猫派?」と聞かれたらネコ派、猫同居中。