📌 この記事で分かること

  • 5歳児の発音障害(構音障害)のリスク:発達に問題がなくても見過ごされやすく、放置すると「異常構音」や潜在的な疾患が残る可能性が指摘されています。
  • 全国の健診現場で注目の「発音チェックシート」:わずか30秒〜1分で客観的な評価ができるツールが自治体(大阪府富田林市など)や学会で高評価を得ています。
  • 新資格『5歳児構音相談員(仮称)』の創設目的:保健師や保育士等の専門職が根拠を持って保護者にアドバイスできる体制づくりを目指しています。
  • クラウドファンディングの取り組み:一般社団法人ことばサポートネットが資格創設と早期支援体制の構築に向けREADYFORで資金調達を実施しています。

「うちの子、5歳になっても発音がたどたどしいけれど、成長とともに自然と良くなるかしら?」——子育て中や保育・保健の現場で、このような不安を抱いたことはありませんか?

5歳前後のお子さんにおいて、他の発達面に心配がない場合、発音の拙さは単なる「赤ちゃんことば」として「様子を見ましょう」と見過ごされてしまうケースが少なくありません。しかし、適切な時期に対応が行われないと、成長してからも発音の課題で悩み続けたり、背景にある身体的な理由への気づきが遅れたりするリスクがあるといわれています。

この記事では、障害福祉や発達支援の視点から、見逃されやすい「構音障害(こうおんしょうがい)」の基礎知識と早期対応の重要性を解説します。さらに、全国の自治体で導入が進む発音評価ツールや、一般社団法人ことばサポートネットが推進する新資格『5歳児構音相談員(仮称)』創設のクラウドファンディングまで最新の取り組みをご紹介します。


5歳児の発音トラブルはなぜ見過ごされやすいのか?「構音障害」の基礎知識とリスク

5歳という時期は、ことばの文法や語彙が急激に発達し、日常生活でのコミュニケーションがスムーズになる一方で、発音の完成期としても非常に重要な段階とされています。しかし、この時期の発音の不鮮明さは、専門的な知識がないと見落とされてしまうことが多々あります。

専門用語解説:「構音(こうおん)」と「構音障害」とは?

福祉や発達支援の現場では、発音のことを専門的に「構音(こうおん)」と呼びます。

  • 構音:唇、舌、歯、上あごなどの発声器官を正確に動かし、ことばの「音(おん)」を作る動作のことです。
  • 構音障害:何らかの原因によって正しい発音が難しくなっている状態を指します。

単なる「赤ちゃんことば」と放置するリスク

5歳児において身体の発達や認知機能に特段の心配がない場合、周囲の大人は「そのうち自然に治るだろう」「まだ小さいから赤ちゃんことばが抜けないだけ」と判断しがちです。このように「様子を見ましょう」と経過観察のまま時間が経過してしまうことが課題として挙げられています。

適切なサポートがないまま成長した場合、以下のような影響が懸念されます。

  1. 異常構音の定着:正しい舌や口の使い方が身につかず、独特な歪んだ音が習慣化してしまう状態です。一度定着した異常構音は、成長後に矯正しようとすると長年の思い悩みに繋がるケースがあります。
  2. 潜在的な疾患や機能不全の見落とし:例えば、鼻と口の奥を塞ぐ機能が不十分で音が鼻に抜けてしまう「鼻咽腔閉鎖機能不全(びいんくうへいさきのうふぜん)」などの病気が背景に隠れているケースがあります。早期に専門的な確認が行われないと、適切な支援に繋がれない可能性があります。
  3. 心理面・社会面への影響:周囲からの指摘やからかいにより、子ども自身がつらい思いを抱えたりするリスクが指摘されています。

障害福祉・自治体現場で注目を集める「5歳児の発音チェックシート」とは

子どもの発音課題を早期に発見するため、現場のニーズに応える新しい評価ツールが開発され、注目を集めています。

大阪府富田林市など全国の自治体・健診現場で導入が進む理由

一般社団法人ことばサポートネットは、健診や保育の現場で誰もが客観的な基準で発音を確認できるよう『5歳児の発音チェックシート』および『5歳児の発音評価ガイドブック』を制作し、無料公開を行いました。

このツールは、現在大阪府富田林市をはじめとする全国の自治体や乳幼児健診の現場で導入が始まっています。現場の保健師や保育士からは、以下のような手応えが報告されています。

  • 短時間での実施が可能:1人あたりわずか30秒〜1分程度でスムーズに評価を行うことができます。
  • 客観的な課題の発見:保護者自身も気づいていなかった発音の課題を、客観的に確認できます。

第27回日本言語聴覚学会でも反響!客観的スクリーニングの重要性

本ツールの開発成果は、2026年6月に開催された「第27回日本言語聴覚学会」においても発表され、大きな反響を呼びました。

従来、健診現場での発音確認は判断に迷いが生じやすいという側面がありました。客観的なスクリーニング(早期選別評価)ツールが普及することで、見逃しを防ぐと同時に適切な支援へ繋げやすくなると期待されています。


専門資格『5歳児構音相談員(仮称)』が創設へ!障害福祉と子育て支援の新たな架け橋

評価ツールの普及に伴い、現場で子どもと接する専門職のスキルアップと体制強化を目指す新たな取り組みが始まっています。

保育士や保健師が根拠を持ってアドバイスできる体制の整備

地域で子どもたちの成長を日常的に見守っているのは、乳幼児健診を担当する保健師や、日々の保育を担う保育士、児童発達支援に携わる心理職などの専門職です。

一般社団法人ことばサポートネットでは、これらの専門職が発音チェックシートやガイドブックに基づき、確かな根拠と自信を持って保護者へ説明やアドバイスができるよう、認定資格『5歳児構音相談員(仮称)』の創設を進めています。

対象領域資格創設によって期待される変化・ベネフィット
子どもたち不明瞭さによるからかい等から守られ、必要な場合に早期に専門的支援へ繋がりやすくなります。
現場専門職(保育士・保健師等)客観的な評価基準を習得することで、自信を持って保護者へ対応・説明ができるようになります。
医療・教育機関(ST等)適切なスクリーニングが行われることで、限られた貴重な医療資源の有効活用に繋がります。

限られた医療資源(言語聴覚士・ことばの教室)の有効活用

専門用語である「言語聴覚士(ST:Speech-Language-Hearing Therapist)」は、ことばや聞こえ、話し言葉の障害に対して評価や支援を行う専門職です。また、小学校等には「ことばの教室」が設置されていますが、対応できる体制には限界があり、限られた資源を効果的に活用することが求められています。

『5歳児構音相談員(仮称)』が地域でスクリーニングの役割を果たすことで、真に専門的な介入が必要なお子さんを適切な医療・教育機関へスムーズに繋ぐ環境が整うと考えられています。


一般社団法人ことばサポートネットによるクラウドファンディングの挑戦

新資格の創設や早期支援の体制構築に向け、支援を募るプロジェクトが展開されています。

READYFORで開始されたプロジェクト概要と支援募集期間

一般社団法人ことばサポートネットは、資格創設にかかる費用や受験料割引の設定などを目的として、クラウドファンディングプラットフォーム「READYFOR(レディフォー)」にて支援募集を行っています。

  • プロジェクト名:5歳児の発音SOSを見逃さない!専門資格『5歳児構音相談員(仮称)』の創設へクラウドファンディングを開始
  • 支援募集期間:2026年10月1日 〜 2026年12月30日(水)午後11:00
  • クラウドファンディングページ:https://readyfor.jp/projects/5saijikouon

オンラインを活用した言語聴覚士(ST)と地域の連携支援

事業を推進する一般社団法人ことばサポートネットは、オンラインを中心に、言語聴覚士がことばや発音に悩むご家庭や地域現場へ寄り添える体制づくりに取り組んでいます。個別の発音相談や練習に加え、保育現場や教育機関への支援提供など、地域格差を超えた福祉・教育支援の新たな選択肢を提供しています。


【Q&A】

保護者や子育て支援者から寄せられる代表的な疑問についてまとめました。

Q1: 5歳児の発音が聞き取りにくい場合、すぐに病院を受診すべきですか?

A1: 必ずしも直ちに病院を受診する必要はありませんが、放置せずに確認することが推奨されます。まずは自治体の乳幼児健診や地域の保健センター、あるいは「5歳児の発音チェックシート」などを活用し、客観的に確認してみることが第一歩となります。

Q2: 保育園や幼稚園の先生から「発音が気になる」と言われたらどう対応すれば良いですか?

A2: 先生がどのような場面で難しさを感じているか具体的な状況を聞き取りましょう。園の先生や保健師などの専門職が客観的な評価基準(発音チェックシート等)を持っている場合、より明確な傾向と今後の関わり方について説明を受けやすくなります。

Q3: 言語聴覚士(ST)にはどのように相談できますか?

A3: 地域の保健センターや発達障害者支援センター、小児科などで相談窓口が設けられています。また、近年では「ことばサポートネット」のようにオンラインで直接言語聴覚士に個別相談や発音練習のサポートを依頼できるサービスも選択肢となっています。

Q4: 専門資格『5歳児構音相談員(仮称)』はどのような人が対象ですか?

A4: 乳幼児健診に関わる保健師をはじめ、保育園・幼稚園の保育士、児童発達支援事業所のスタッフや心理職など、日常的に子どもや保護者に関わる専門職の方々が主な対象として想定されています。


まとめ:早期発見と専門職の連携が障害福祉・発達支援の未来を変える

5歳という時期は、ことばの発達において見逃せないタイミングです。

これまで「様子見」とされがちだった構音障害に対して、客観的な「発音チェックシート」と専門資格『5歳児構音相談員(仮称)』という新しい仕組みが導入されることで、子どもたちが安心してコミュニケーションを楽しめる社会へ一歩近づくことが期待されています。

障害福祉や発達支援に関わる一人ひとりが正しい知識を持ち、地域全体で子どもたちの「ことばのSOS」を受け止める体制を築いていくことが大切です。クラウドファンディングをはじめとする最新の取り組みに注目し、支援の輪を広げていきましょう。


Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77