障害福祉現場の賃上げ・物価高騰の最新状況を徹底解説!8団体が緊急提言
2026年5月21日、障害福祉関係8団体(公益財団法人 日本知的障害者福祉協会、社会福祉法人 全国社会福祉協議会、全国社会就労センター協議会、全国身体障害者施設協議会、全国社会福祉法人経営者協議会、全国身体障害者福祉施設協議会、特定非営利活動法人 日本相談支援専門員協会、一般社団法人 全国介護事業者連盟、一般社団法人 全国児童発達支援協議会)は、障害福祉現場における賃上げと物価高騰に関する最新の実態を明らかにするため、「障害福祉現場における賃上げ・物価高騰等の状況調査」結果を公表しました。
この調査は、2026年4月22日から5月11日の期間に実施され、全国の1,442事業所から回答が寄せられました。結果からは、障害福祉事業所が賃上げに積極的に取り組んでいる一方で、いまだに全産業との間に大きな賃金格差が存在すること、そして物価高騰、特に食費や光熱水費が事業所の経営を圧迫している現状が浮き彫りになりました。
これらの深刻な実態を受け、8団体は国に対し、処遇改善の抜本的な拡充や物価高騰対策支援の緊急要望を行っていく方針を表明しています。
障害福祉事業所の賃上げは進むも、全産業との賃金格差は依然として課題
調査結果によると、障害福祉事業所では賃上げの取り組みが進んでいます。令和8年度の正社員1人あたりの平均月額賃上げ額は12,318円と、前年度の12,258円から微増しました。このうちベースアップ分も、前年度の7,223円から7,531円へと伸びており、着実なベースアップの努力がうかがえます。

しかし、賃上げ率に着目すると、全産業(春闘)との間には依然として大きな格差が存在します。前年度に比べてわずかに縮まったものの、その差は0.31%と、障害福祉分野の賃金水準が全産業に比べて低い状況が続いています。

この賃金格差は、障害福祉分野で働く人々のモチベーションや人材確保に大きな影響を与える可能性があります。質の高い福祉サービスを継続していくためには、全産業と遜色ない処遇水準への改善が喫緊の課題と言えるでしょう。
物価高騰が直撃!食費・光熱水費の高止まりが経営を圧迫
物価高騰の影響は、障害福祉事業所の経営に深刻な影を落としています。特に顕著なのが給食関係費です。令和8年1月における1事業所あたりの平均給食関係費は、材料費が119.0万円、調理員人件費が94.6万円、業務委託費が204.3万円となりました。これらはいずれも、前々年・前年の同月と比較して毎年高騰しており、事業所の負担が増大していることが明らかになりました。

また、光熱水費も高止まりの状況が続いています。令和8年1月の一事業所あたりの平均月額は、電気代、ガス代、燃料費ともに前年同月からは微減したものの、前々年同月と比べると依然として高い水準にあり、事業所の運営コストを押し上げています。

入所施設の「食費」「光熱水費」が基準費用額を大幅に超過
入所施設(施設入所支援および福祉型障害児入所施設)においては、食費と光熱水費の負担が特に重いことが判明しました。1人あたりの平均月額は、食費が43,862円、光熱水費が14,909円となり、合計で58,771円に上ります。

これは、国が設定する基準費用額55,500円を3,271円も上回る金額です。この超過分は、施設側が持ち出しで負担している状況であり、経営をさらに圧迫している実態が明らかになりました。
深刻な現場実態から読み解く、障害福祉関係8団体の緊急要望
今回の調査結果は、障害福祉事業所が賃上げに努力しているにもかかわらず、全産業との賃金格差が大きく、物価高騰による負担増、そして赤字経営に直面しているという深刻な現場実態を浮き彫りにしました。経営努力だけでは限界がある状況が示されています。

このような状況を改善し、障害福祉事業所が必要な人材を確保し、障害のある方々に質の高い福祉サービスを提供し続けるため、障害福祉関係8団体は国に対し、以下の3点の緊急要望を行っていくとしています。
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全産業と遜色ない処遇水準に向けた報酬等の大幅な引き上げと処遇改善施策の制度間一元化等
人材確保と定着のため、令和9年度の報酬改定において、基本報酬や処遇改善加算の大幅な引き上げが必要です。また、介護分野や保育分野との制度間の格差を解消し、多角経営を行う法人でも職員に公平な処遇ができるよう、仕組みと運用の統一が求められています。 -
食費等の物価高騰に対応するための財政支援の拡充
食費の高騰や光熱水費の高止まりに対応するため、介護分野で実施された基準費用額の引き上げが、障害福祉分野でも不可欠です。食事提供体制加算額の引き上げと恒久化、さらに自治体への交付金だけでなく、補助金など事業所に確実に支援が行き渡る仕組みの導入が要望されています。 -
報酬への賃金スライド制・物価スライド制の導入
賃上げ基調やさらなる物価高騰が予想される中で、他産業の後追いでは人材流出が止まらない可能性があります。全産業の賃上げや人事院勧告、物価指数に毎年連動する報酬制度の導入が強く求められています。

障害福祉の未来を拓くために:国への期待と今後の動向
今回の調査結果と緊急要望は、障害福祉現場が直面する課題を明確に示し、その解決に向けた具体的な方向性を示しました。障害のある方々が安心して質の高いサービスを受けられる社会を実現するためには、国がこれらの要望に真摯に向き合い、迅速かつ抜本的な対策を講じることが不可欠です。
報酬改定や財政支援の拡充、そして賃金・物価スライド制の導入は、障害福祉分野で働く方々の生活を安定させ、新たな人材の確保にも繋がります。これにより、サービスの質の向上と持続可能な運営が期待できるでしょう。私たちは、この緊急要望が障害福祉の未来を明るく照らす一歩となることを願っています。

