スマートフォンの普及が進む一方、全盲の方や画面読み上げ操作に難しさを感じる方々が直面する課題をご存知でしょうか。本記事では、視覚障害をお持ちの方の日常的なスマホ利用をサポートする注目の支援アプリ「コエンゴ」と、その開発に向けたクラウドファンディングの取り組みについて解説します。


この記事で分かること

  • 視覚障害者(全盲の方)におけるスマートフォン操作の現状と抱える課題
  • 支援アプリ「コエンゴ」の独自の操作方法(なぞって音声案内・長押し決定)と機能
  • AI技術と人の手による「遠隔援護」を組み合わせた安心のサポート体制
  • CAMPFIREで実施中のクラウドファンディング概要と支援金の具体的な使い道

全盲の方におけるスマートフォン操作の現状と課題

近年、スマートフォンは生活に欠かせない情報ツールとなっています。視覚障害のある方にとっても同様ですが、操作の面では独自のハードルが存在しています。

音声読み上げ機能(スクリーンリーダー)の活用と操作上の難しさ

スマートフォンには、画面上の文字やボタンの情報を音声で知らせる「画面読み上げ機能(スクリーンリーダー)」が標準で搭載されています。この機能を活用して、電話やメッセージ交換、各種アプリをスムーズに使いこなしている全盲の方も多くいらっしゃいます。

用語解説:画面読み上げ機能(スクリーンリーダー)
画面上に表示されたテキストや操作ボタンを音声に変換して読み上げるアクセシビリティ機能のことです。

一方で、画面全体を指でスワイプしながら目的の項目を探し、複雑なジェスチャーで決定操作を行うプロセスに対し、負担や難しさを感じている方も少なくありません。操作に不慣れな場合、目的の機能にたどりつくまでに時間がかかったり、誤操作の不安がつきまとったりすることがあります。

電話などの日常生活における支援の必要性

特に「知人や家族に電話をかける」といった日常的かつ重要な操作であっても、操作の難しさから周囲のサポートが必要となるケースが指摘されています。緊急時や一人で行動している際に自力で素早く連絡が取れない状況は、ご本人にとってもご家族にとっても大きな不安要素となり得ます。


障害福祉を支える新しい選択肢!スマホ支援アプリ「コエンゴ」とは?

こうした課題を解決し、画面読み上げ操作に難しさを感じる全盲の方にも安心してスマートフォンを使ってもらうために開発されているのが、Androidアプリ「コエンゴ」です。

指でなぞって音声を聞く直感的な操作システム

「コエンゴ」は、従来の複雑な操作手順を見直し、直感的に扱える画面設計と操作方法を採用しています。

  1. 画面を指でなぞる:画面上を指で触れて動かすと、触れている箇所の項目名(電話をかけたい相手の名称や操作メニューなど)が音声で案内されます。
  2. 長押しで決定:使いたい機能や相手の名前が読み上げられたら、指を2秒間長押しすることで決定操作が行われます。

指1本のシンプルな動きで完結するため、どこに何があるかを把握しやすく、迷わずに操作を進めやすい工夫がなされています。

電話機能とAIによる画像読み上げ機能の搭載

「コエンゴ」では、日常生活で頻繁に使う機能が使いやすく配置されています。

  • 電話の発着信サポート:あらかじめ登録した相手への電話発信が簡単に行えるほか、着信時に相手の名前を音声で知らせる機能などの開発・検証が進められています。
  • AIカメラ機能:スマートフォンのカメラを読み取ってほしい物体や周囲に向けると、AIがその内容を認識して音声で回答する機能も指1本で利用可能です。

アプリ開発においては、当事者である視覚障害者の方々と一緒に「音声案内が聞き取りやすいか」「途中で操作に迷わないか」といった検証が繰り返し行われています。


人のぬくもりとテクノロジーの融合「遠隔援護」との連携システム

「コエンゴ」の大きな特徴の一つは、アプリ単体の機能にとどまらず、人のサポートと連携する点にあります。

一般社団法人日本視覚障害者遠隔援護協会と「遠隔援護」の取り組み

本プロジェクトを推進する「一般社団法人日本視覚障害者遠隔援護協会」(代表理事:谷水明広)は、離れた場所にいるサポーターがスマートフォンのカメラ映像等を通じて視覚情報を口頭で伝える「遠隔援護」の仕組みに取り組んできた団体です。また、今回のアプリ開発には株式会社リモートアシストが協力しています。

用語解説:遠隔援護
視覚障害のある方が撮影する映像や位置情報を、離れた場所にいる専門サポーターがリアルタイムで確認し、音声で視覚的情報を補完・支援するサービスです。

AIと人によるハイブリッドなサポート体制

「コエンゴ」によりユーザー自身が一人で行える操作の範囲を広げつつ、書類の確認や複雑な周囲の状況把握など、どうしても視覚的な確認が必要となる場面では「遠隔援護」による人による支援へとスムーズにつなぐことが目指されています。テクノロジーと人の温かいサポートを組み合わせることで、より高い安心感と自立支援を提供しようとする試みです。


「コエンゴ」開発に向けたクラウドファンディングの概要と支援金の使い道

一般社団法人日本視覚障害者遠隔援護協会は、アプリの完成度を高め、より多くの方に届けるためにクラウドファンディングを実施しています。

CAMPFIREにて実施中のプロジェクト概要

クラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」にて、開発・検証費用を募るプロジェクトが公開されています。

項目詳細内容
プロジェクト名全盲の方のためのスマホアプリ「コエンゴ」で、ご本人とご家族にも安心を届けたい。
実施主体一般社団法人日本視覚障害者遠隔援護協会
掲載先CAMPFIRE
目標金額150万円
募集期間2026年10月6日 ~ 2026年11月20日
公開URLhttps://camp-fire.jp/projects/979827/view

支援金の使い道と今後の展望

寄せられた支援金(目標額150万円)は、以下のような用途に計画的に活用される予定です。

  • アプリの開発・改修費:約120万円
  • 視覚障害のある当事者による操作検証と調整:約5万円
  • 普及活動と相談体制の整備:約25万円

実際の当事者による操作検証を通じて使いにくい点を具体的に把握し、画面読み上げ機能の操作に難しさを感じている方々へ、スマートフォンを活用できる新たな選択肢を提供することが目指されています。


Q&A

Q1. 全盲の方は普段どのようにスマートフォンを操作しているのですか?

A. 多くの全盲の方は、画面上のテキストやボタンを音声で読み上げる「スクリーンリーダー」機能を使い、指のタッチやスワイプ操作で画面内容を把握して利用しています。しかし、操作手順の複雑さから利用に負担を感じる方もいらっしゃいます。

Q2. 支援アプリ「コエンゴ」は既存の読み上げ機能と何が違うのですか?

A. 既存の読み上げ機能が画面全体のタップやスワイプを必要とするのに対し、「コエンゴ」は画面を指でなぞって音声案内を聞き、使いたい場所で「2秒間長押し」するだけで決定できるシンプルな操作体系をとっています。操作のハードルを下げ、電話などの基本操作を迷わず行える点が大きな違いです。

Q3. 「コエンゴ」のプロジェクトを支援・応援するにはどうすればよいですか?

A. クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」の専用ページ(https://camp-fire.jp/projects/979827/view)から支援に参加することが可能です。リターンの詳細やプロジェクトの進捗情報も同ページで確認できます。


まとめ:障害福祉の未来をひらく「コエンゴ」と一人ひとりにできる支援

視覚障害者支援アプリ「コエンゴ」は、スマートフォン操作に悩む全盲の方やそのご家族に安心を届けるための新しい取り組みです。

指でなぞって長押しする直感的な操作やAI機能に加え、人による「遠隔援護」と連携させることで、福祉分野におけるアクセシビリティの向上が期待されています。

クラウドファンディングを通じてこうした支援技術や当事者目線の開発に関心を持つことは、障害福祉を身近に捉え、誰もが暮らしやすい共生社会を築く第一歩となります。ご興味を持たれた方は、ぜひプロジェクトページや協会の取り組みをチェックしてみてください。


Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77