支援現場が直面する「3つの壁」

今回の調査により、地域における摂食症相談支援の現状が浮き彫りになりました。支援現場は主に「3つの壁」に直面していることが判明しています。

「対応の壁」:身体・精神の両面支援が困難

相談に対応しているセンターのうち、身体面と精神面の両方に対応できる施設はわずか18%にとどまります。16%の施設は「両面とも対応が難しい」と回答しており、複合的な支援の難しさが示されています。

摂食症の相談対応体制に関する円グラフ

「知識・連携の壁」:深刻なリソース不足

対応が困難な理由としては、「ケースの重症化・複雑化」「専門知識の不足」「紹介先となる医療機関の不在」が上位を占めています。これは、支援現場が孤立し、十分なリソースが不足している現状を鮮明に示しています。

相談対応における困難要因を示す棒グラフ

「ニーズの壁」:拠点病院への高い期待

今後の支援ニーズとして、「摂食症外来や拠点病院の整備」が圧倒的に多く、次いで情報提供、医療機関との連携体制が求められています。未設置エリアの94%が拠点病院の必要性を回答しており、専門的な支援体制への切実なニーズが明らかになりました。

調査結果の詳細レポートは、準備ができ次第、2026年4月以降に協会のホームページに掲載される予定です。

報告会で議論された「地域支援の未来」

2026年2月22日には、本調査の公表および今後の支援のあり方を検討するための報告会がハイブリッド形式で開催され、約90名が参加しました。全国精神保健福祉センターや拠点病院関係者が招かれ、それぞれの立場から現状共有と今後の方向性について活発な議論が交わされました。

報告会で議論する専門家たち

報告会では、全国精神保健福祉センター長会 副会長の平賀 正司氏が地域の中核機能と包括的な支援体制構築の重要性について言及。摂食障害全国支援センター センター長の井野 敬子氏は、全国で均てん化された医療体制構築に向けた拠点病院の整備状況や情報ポータルの活用について報告しました。また、日本財団 公益事業部の林 美彩氏は、適切な医療へのアクセスが難しい現状を課題視し、本調査が悩む人々の背中を押す契機となることへの期待を寄せました。

拠点病院の最前線からは、栃木県拠点病院の獨協医科大学 精神神経科 古郡 規雄教授が、低年齢化する患者への早期対応と多職種チームによる支援体制を紹介。千葉県拠点病院の国立国府台医療センター 河合 啓介副院長・心療内科診療科長は、「受診先が見つからない」を解消する医療連携の重要性を強調し、若年層に届くSNS(LINE等)活用の必要性を提言しました。

今後の展望

一般社団法人日本摂食症協会の鈴木眞理理事長は、調査結果を受け、「診療可能な施設がない、あるいは、医療機関と連携が不十分な地域が多く、支援の地域格差が明らかになった。支援拠点病院の存在は治療可能な施設数の増加と医療レベルの向上や、精神保健支援センターが行っている機能をバックアップ、レベルアップできるだろう」と総括しています。

本調査の結果は詳細なレポートとしてまとめられ、厚生労働省をはじめとする関連省庁へ報告が行われる予定です。住む地域に関わらず適切な支援が受けられる社会の実現に向け、具体的な提言が進められます。

調査概要

  • 調査対象: 全国の精神保健福祉センター(69ヵ所)
  • 調査内容: 摂食症に関する相談状況および支援体制
  • 調査主体: 一般社団法人日本摂食症協会
  • 協力: 日本財団、全国精神保健福祉センター長会
  • 調査方法: WEBアンケート
  • 調査期間: 2025年7月14日~11月30日
  • 設問数: 基本情報+10問(自由記述含む)
  • 回答率: 67/69施設 97%

協会名称変更について

「摂食障害」という言葉が持つ「回復しない状態」や「固定したハンディキャップ」といった印象が、当事者の受診をためらわせる要因となることが指摘されていました。摂食障害は適切な治療と支援によって回復が期待できる病気であるという考えに基づき、偏見(スティグマ)の軽減や早期受診の促進を目的として、2025年10月18日に日本摂食障症学会が名称を変更したことに伴い、当協会も「一般社団法人日本摂食症協会」(旧:日本摂食障害協会)に名称を変更しました。

摂食症について

摂食症は心理的な原因で食の異常をきたす疾患であり、異常にやせている拒食症(神経性やせ症)と過食発作を繰り返す過食症があります。患者の95%が女性と性差が大きい病気であり、特に拒食症(神経性やせ症)の死亡率は6~11%と、精神科疾患の中でも若年者の疾患としても極めて高いことが問題視されています。成長期に発症した場合、身長の伸び悩みや初潮の遅れ、無月経、不妊症、骨粗鬆症、歯の喪失といった後遺症につながることもあります。過食症はうつ病などの精神科的合併症を伴いやすく、両者ともに適切な治療が行われないと慢性化し、就労困難や医療福祉費の高騰を招く可能性があります。近年では、コロナ禍において小学校中学年から発症が見られるなど、低年齢化の傾向も問題となっています。

団体概要

  • 名称: 一般社団法人日本摂食症協会
  • 理事長: 鈴木 眞理
  • 所在地: 東京都千代田区紀尾井町3-33
  • 公式HP: https://www.jafed.jp/

一般社団法人日本摂食症協会(JAED)は、摂食症の治療と予防の増進に寄与することを目的とし、患者および患者家族の支援、啓発活動、予防活動、調査研究などの活動を全国的に展開しています。長年摂食症の治療に携わってきた心療内科医、内科医、精神科医、小児科医、婦人科医、臨床心理士、管理栄養士など、多岐にわたる専門家が組織に参画しています。

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
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