【この記事で分かること】
- 発達支援における「見立て(アセスメント)」の重要性と基本的な考え方
- 「多動」や「こだわり」といった行動の裏にある多角的な要因と背景
- 新刊『療育で変えるのは、子どもではありません』の特徴と支援現場での活用法
- 子どもの「好き・得意」を活かした新しいオンライン支援・フリースクールの取り組み
- 発達障害や気になる子の行動に対するよくある疑問と適切な関わり方(Q&A)
子どもが活動中に走り回ってしまったり、予定の変更でパニックになったりする場面において、「どのように対応すべきか」とお悩みの保護者や支援者の方は少なくありません。発達支援や療育の現場では、単に行動に名前をつけるだけでなく、その裏にある「なぜ?」を探る“見立て”の視点が極めて重要とされています。
この記事では、NPO法人ここのば代表理事の百瀬洋介氏による実践書『療育で変えるのは、子どもではありません ― 発達が気になる子の見立てを育てる、10のことば』のプレスリリース情報をもとに、発達障害や発達が気になるお子さんへの理解を深めるプロセスを解説します。
発達支援・療育で大切な「見立て」とは?専門用語を解説
発達支援や療育の現場では、知識を深めることと並行して、その知識を目の前の子どもにどのように活かすかが問い直されています。ここではまず、根幹となる言葉の解説から進めます。
専門用語解説:「見立て(アセスメント)」とは
発達支援における「見立て(アセスメント)」とは、子どもの行動や状態について「何が起きているのだろう?」と問いかけ、観察を通じて情報を集め、背景にある理由の仮説を立てて支援を試し、必要に応じて見直していく一連の考え方・プロセスのことを指します。
障害名や行動のラベル(症状名)をあてはめて終わるのではなく、一人ひとりの感覚、コミュニケーション、過ごす環境、心理的状態などを総合的に洞察するステップとして位置づけられます。
「多動だから」「こだわりだから」で思考を止めない視点
子どもが活動中に部屋を走り回っているとき、「多動だから」と説明することは可能です。しかし、それだけではその子に必要な具体策は見えてきません。
- 感覚的な要因:体を動かすことで感覚を得ようとしている可能性
- 環境的な要因:活動の意味や全体のスケジュール・見通しが掴めていない可能性
- 課題の負荷:提示された課題が難しく、その場から離れようとしている可能性
- 心理的な要因:純粋にその活動自体を楽しんでいる可能性
このように、同じように見える行動であっても背景理由は一人ひとり異なります。行動に名前をつけて納得するのではなく、「なぜ、いまこの行動が起きているのか?」を考え続けることが支援の出発点となります。
実践書『療育で変えるのは、子どもではありません』の特徴と10のケース
NPO法人ここのば(代表理事:百瀬洋介氏)は、2026年10月8日に実践書『療育で変えるのは、子どもではありません ― 発達が気になる子の見立てを育てる、10のことば』をAmazon KDPを通じて刊行しました。
答えを提示せず「考えるプロセス」を体験する構成
本書は、最初から「このケースの正解はこれです」というマニュアル的な提示を行いません。各章とも実際のケースから始まり、以下のプロセスを追う構成となっています。
- 何が起きているのか
- どんな可能性が考えられるのか
- 何を観察し、確かめるのか
- どんな支援を試してみるのか
仮説が外れることがあっても、子どもの様子を観察しながら見直しを行い、その子に合った支援を探し続ける姿勢が重視されています。
本書で扱われる10の具体的なテーマ
本書では、療育・保育・教育の現場で遭遇しやすい10のケースが取り上げられています。
| 章 | テーマ・課題 | 見立ての視点・ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 「行こう」と言っただけなのに | ことばが届いていないときに何が起きているか |
| 2 | 誰も、その瞬間を見ていない | 仮説を洗い出し、絞り込む方法 |
| 3 | こだわりに、こだわらない | 「いつもと違う」ことが難しい子の理解 |
| 4 | 体幹が弱いのでは、ない | 感覚や身体の視点から行動を捉える |
| 5 | 聞けば答える。でも、自分からは言わない | コミュニケーションのつまずき部分の探求 |
| 6 | 「多動だから」で、止まらない | 走る・動く行動の背景にある要因の探求 |
| 7 | わがままかどうかは、決めなくていい | 要求の奥に隠れている真のニーズを見る |
| 8 | 「なぜ行けないの」には、答えられない | 不登校の原因探しのみで終わらせないアプローチ |
| 9 | ちょうどいい期待が、分からない | 子どもの現在地と大人の期待値のすり合わせ |
| 10 | 「うちの子は問題ありません」と言われた | 保護者と支援者が連携して支援を継続する関わり |
「子どもを変える」のではなく「大人の関わりや環境を変える」
書籍のタイトルにある通り、支援の目的は「子どもに何かを強制的にできるようになってもらうこと」だけではありません。子どもの背景には周囲の環境や大人の伝え方が深く関係しているため、以下のような大人側の見直しが重要とされています。
- 伝え方や示し方をわかりやすく変更する
- 過ごす環境やスケジュールの見通しを整える
- 子どもが選べる選択肢を用意する
- 子どもの「好き」や「得意」を支援の起点にする
- 大人側の期待値や関わり方を調整する
子どもを集団や規定の環境に無理に合わせるのではなく、子どもに合った環境や関わり方を調整していくアプローチが提示されています。
NPO法人ここのばが推進する新しい発達支援・不登校支援の取り組み
著者の百瀬洋介氏が代表を務めるNPO法人ここのばでは、書籍の発行にとどまらず、直接支援と支援者育成の両面で事業を展開しています。
オンラインフリースクール「SUPER SCHOOL」
発達支援の視点を取り入れたマンツーマンのオンラインフリースクールです。マインクラフトやRoblox、Canva、Scratch、AIツールなどを活用し、子どもの「好き」や「得意」をきっかけに個別の支援計画を組み立て、意欲や自己肯定感を育む支援を行っています。
オンライン個別支援「GLOBAL GAME」
教育版マインクラフトを活用したオンライン個別支援サービスです。建築や探検などの協同活動を通じ、コミュニケーションや社会性、問題解決力を育みます。ゲームをやめさせる対象として扱うのではなく、子どもとつながり理解を深めるための「入り口」として位置づけています。
支援者の学びの場「Shinka Studio」
療育や保育に携わる専門職(保育士、児童指導員、児童発達支援管理責任者など)を対象としたオンライン研修プラットフォームです。個別支援計画の作成、保護者支援、就学支援などのテーマを扱い、得た知識を実際の現場で活用するための学びを提供しています。
FAQ(よくある質問)

Q1. 子どもが室内で走り回ってしまう(多動傾向)場合、どう捉えればよいですか?
A. 「多動障害だから」と決めつけるのではなく、行動の目的や背景を考えることが推奨されます。例えば、感覚的な刺激を求めているのか、前後の見通しが立たず不安なのか、提示された課題からの回避なのかなど、複数の可能性を想定して観察・対応することが大切です。
Q2. こだわりが強くて予定変更に対応できないときは、どう関わればよいですか?
A. 「わがまま」と捉えるのではなく、見通しの持ちにくさや環境への不安に配慮する視点が考えられます。あらかじめスケジュールを視覚的に伝えたり、別の選択肢を用意したりするなど、本人が安心して過ごせる環境調整や伝え方の工夫を試みることが有効とされています。
Q3. 保護者と支援者で子どもの状態に対する捉え方が異なる場合はどうすればよいですか?
A. お互いの見方を否定するのではなく、丁寧なコミュニケーションを通じて子どもの姿に対する共通認識を作っていく姿勢が求められます。保護者の不安や考えに寄り添いながら、家庭と現場の双方で安心して続けられる支援方法を模索していくことが重要です。
まとめ:子どもの行動背景に目を向け、共に歩む発達支援へ

発達支援や療育においては、「多動」「こだわり」「わがまま」といった一言で子どもの状態を決めつけるのではなく、「なぜこの行動が起きているのだろう?」と問い続ける姿勢(見立て)が欠かせません。子どもだけに変化を求めるのではなく、大人側の伝え方や環境を整えていくことが、子どもが安心して一歩を踏み出す基盤となります。
今回ご紹介した『療育で変えるのは、子どもではありません』は、日々の現場で悩む保育士、児童指導員、保護者の方々にとって、支援のプロセスを見つめ直すための一冊となることが期待されます。
書籍情報・概要
- 書名:『療育で変えるのは、子どもではありません ― 発達が気になる子の見立てを育てる、10のことば』
- 著者:百瀬 洋介(NPO法人ここのば 代表理事)
- 価格:ペーパーバック 1,980円(税込)/ Kindle版 1,200円(税込)
- 販売:Amazon(KDP)
- 団体URL:https://coconova.or.jp/

