誰もが移動を諦めない社会へ:鉄道4社とクラウドケアが共創するユニバーサルツーリズム

日本は超高齢社会を迎え、日常生活や旅行に介助を必要とする方が増加しています。しかし、「バリアフリー情報の不足」や「移動中の介助への不安」から、旅行をためらうケースが少なくありません。クラウドケアの利用者アンケートでも「介護が必要になっても家族と温泉に行きたい」「もう一度旅行に行きたい」といった切実な声が多数寄せられています。

こうした背景を受け、JTOSは鉄道利用における心理的・物理的ハードルの解消を重要な課題と捉え、駅や車両、宿泊施設などのハード面だけでなく、個々の旅行者の旅程全体に寄り添う「ドアツードア」のサポートを追求しています。

今回、1,800名以上の自費介護ヘルパーを抱えるクラウドケアと連携することで、鉄道4社が持つ公共交通・宿泊インフラと、クラウドケアの専門的な自費介護スキルを融合させ、従来の施設単位での整備を超えたシームレスな移動体験の提供を目指します。

移動のハードルを解消する「旅の安心」:箱根での実証実験概要

本実証実験では、要介助者とそのご家族に実際に箱根旅行を体験いただき、以下の項目を検証します。

  • 実施期間:2026年4月〜5月頃(予定)

  • エリア:箱根エリア(ザ・プリンス 箱根芦ノ湖等を活用)

実証実験の具体的な検証項目は以下の通りです。

  • 利用者の心理的負担の軽減:専門ヘルパーが全行程をサポートすることで、移動や宿泊時の介助に対する「心理的・物理的ハードル」がどの程度解消され、安心して旅行を楽しめるかを分析します。

  • 迎え入れる施設・機関とのおもてなしの共創:専門ヘルパーと、交通機関や宿泊施設のスタッフが連携することで、現場スタッフがそれぞれの専門領域において、利用者に寄り添った接遇を最大限に発揮できる環境を検証します。

  • 持続可能なビジネスモデルの検証:旅行代金に加えてヘルパーの同行費用が発生する中で、利用者が価値を感じて継続的に支払える適正な価格帯を調査し、将来的な事業化に向けた持続可能なモデルを検証します。

実証実験への参加者募集について

本実証実験への参加を希望する方は、以下の手順でお申し込みいただけます。

  1. 会員登録:クラウドケアの公式サイトより、ヘルパー利用のための会員登録(無料)を行ってください。

    • クラウドケア公式サイト:https://www.crowdcare.jp/register/
    • クラウドケア事務局へ応募のご連絡:登録完了後、クラウドケア事務局へ電話やメッセージ機能で当実証実験への参加希望を連絡してください。希望日程や介助の必要状況、旅の目的などを確認します。

※応募多数の場合は、検証内容(介助レベル等)を考慮した上での選考となります。

一気通貫サポートのイメージ(移動フロー)

鉄道員の専門スキルが介護現場へ:多様な働き方と接遇力向上への挑戦

本実証実験では、新たな試みとして、JR東日本グループの鉄道社員がクラウドケアのヘルパーに登録し、介助業務に一部参画する仕組みが検証されます。この取り組みは、鉄道業務で培った高いホスピタリティを持つ社員が介護現場のスキルを習得し、その経験を本業である鉄道業務へ還元することで、沿線全体の接遇レベルの底上げを図ることを狙いとしています。

実証フェーズでは、自宅から最寄り駅までの移動支援や、特定の観光ルートにおける介助が想定されています。将来的な労働力不足を見据え、インフラを支える人材の「多機能化」という新しいキャリアモデルを模索する挑戦でもあります。

株式会社クラウドケアとは?

株式会社クラウドケアは「ケアを通して、多くの人々を幸せにする。」をミッションに、2016年の創業以来、「Crowd Care(クラウドケア)」を開発・運営しています。介護保険制度では補えない介護ニーズとヘルパーをマッチングさせ、介護保険外の訪問介護・家事・生活支援サービスを提供しており、スキルシェア形式の介護保険外サービスのパイオニアとして知られています。

鉄道横断型社会実装コンソーシアム「JTOS」の取り組み

「JTOS」は、JR東日本スタートアップ株式会社、東急株式会社、小田急電鉄株式会社、株式会社西武ホールディングスの4社で2023年9月に発足したコンソーシアムです。スタートアップ企業を取り巻く社会実装の障壁を乗り越えるため、各社が有する駅や鉄道、不動産などの経営資源、グループ事業における情報資源を掛け合わせた広大な実証実験フィールドを提供し、スタートアップ企業と共に未来の当たり前を創造しています。

今回のクラウドケアとの共創は、JTOSが掲げる4つのテーマのうちの一つ「WELL-BEING」領域での取り組みの一環です。

この実証実験は、移動に介助が必要な方々が旅行を諦めることなく、安心して外出を楽しめる社会の実現に向けた大きな一歩となるでしょう。鉄道と介護の専門性が融合することで生まれる新たなツーリズムモデルが、私たちの社会に豊かな移動体験をもたらすことに期待が高まります。


Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77