障害をお持ちのお子さんや医療的ケアが必要なお子さんと暮らすご家族にとって、秋の定番行事である「いもほり」や農園での自然体験は、移動や設備のハードルから諦めてしまいがちなイベントの一つと言われています。千葉県柏市で開催される「かたぎりさんちのいもほりツアー」は、車いすやバギーに乗ったまま畑に入れる環境調整や手厚いサポートによって、重症心身障がい児とそのご家族に安心な体験機会を届けているインクルーシブな取り組みです。
本記事では、障がい福祉に関心のある方や当事者のご家族に向けて、農園におけるバリアフリー化の工夫、外出時のトイレ課題を解決する道の駅との連携、きょうだい児支援の重要性までを分かりやすく解説します。
この記事で分かること
- 重症心身障がい児・医療的ケア児のご家族が直面する外出のハードル(不整地走行・移動手段・トイレ設備など)
- 「かたぎりさんちのいもほりツアー」におけるバリアフリー空間設計(車いすのまま入れる畑・据置式コンパクトリフトの導入)
- 外出時の不安を軽減する工夫(「道の駅しょうなん」活用によるおむつ交換スペースの確保・都内からの送迎サポート)
- 家族全員の笑顔を引き出すインクルーシブ施策(きょうだい児の参加・あおぞらランチ・当事者同士の交流)
- 障害福祉の重要単語解説(重症心身障がい児、医療的ケア児、インクルーシブ、きょうだい児、言語聴覚士など)
障害福祉における外出支援の現状と家族が抱える課題
重症心身障がい児・医療的ケア児とは?基礎知識を解説
障がい福祉の分野において、「重症心身障がい児」や「医療的ケア児」と呼ばれる子どもたちへの支援は重要なテーマとなっています。まずはこれらの専門用語の背景について整理します。
- 重症心身障がい児(じゅうしょうしんしんしょうがいじ):重度の知的障がいと重度の身体障がい(四肢麻痺など)が重複している子どもを指します。自力での移動や姿勢保持が困難な場合が多く、日常生活全般において手厚い介助が必要とされます。
- 医療的ケア児(いりょうてきケアじ):日常生活を送る上で、人工呼吸器の管理や管を通した栄養摂取(経管栄養)、痰の吸引といった医療的なケアが日常的に必要な子どもを指します。
- 福祉用バギー(ふくしようバギー):一般的な乳幼児用ベビーカーとは異なり、身体の保持機能やリクライニング機能、医療機器を搭載できる台座などを備えた障害児専用の移動用車いすです。
これらのお子さんを持つご家族にとって、日々の通院や通所だけでなく「余暇や外出を楽しむこと」には多様な課題が存在するとされています。
不整地やトイレ設備……農園体験に立ちはだかる「移動と設備」の壁
秋の代表的な季節行事であるサツマイモ収穫(いもほり)は、多くのお子さんにとって人気の体験学習です。しかし、重症心身障がい児や医療的ケア児のご家族にとって、一般的な農園へのお出かけには以下のようなハードルが存在することが指摘されています。
- 不整地(ぬかるみや土の凹凸)の走行:車いすや大型バギーの車輪が土に埋もれてしまい、畑の中へ進むことが難しいケースが多く見られます。
- 移動手段の確保:大型の車いすや医療機器を積載して移動するため、公共交通機関の利用や自家用車の移動に大きな負担がかかることがあります。
- 現地でのトイレ・おむつ交換スペースの不足:成長したお子さんのおむつ交換には、大人も利用できる大型ベッドや清潔な多目的トイレが必要となりますが、農園現地にそうした設備が整っていることは稀であるとされています。
このような設備面・移動面のハードルから、外出の機会が限られてしまい、ご家族が社会からの孤立感を抱きやすくなるという課題も挙げられています。
車いす・バギーのまま畑へ!「かたぎりさんちのいもほりツアー」とは
言語聴覚士の農園を活用したインクルーシブな環境調整
このような外出課題の解決を目指し、特定非営利活動法人EPOが運営する重症心身障がい児と家族のコミュニティ「COCOLON(ココロン)」が企画したのが、「かたぎりさんちのいもほりツアー」です。
- 言語聴覚士(ST:Speech Therapist):ことばや聞こえ、飲み込み(摂食・嚥下)などに障がいのある方に対して、訓練や助言を行う医療・福祉の専門職です。
本ツアーの舞台となるのは、言語聴覚士として障がい児支援の現場に深く携わっている片桐さんの農園(千葉県柏市・手賀農園)です。福祉の専門的な知見を持つ片桐さんと、インクルーシブイベントのノウハウを持つCOCOLONが連携することで、車いすやバギーに乗ったままでも畑へ入れる環境調整が施されています。
- インクルーシブ(Inclusive):「包摂的な」「誰も取り残さない」という意味を持ちます。障害の有無や年齢にかかわらず、すべての人が同じ空間で共に体験や学びを共有する考え方を指します。
「据置式コンパクトリフト」とスタッフの移乗サポートによる五感体験
車いすでの農園散策を実現するため、現場では段差解消の技術が導入されています。
日建リース工業株式会社の協力のもと、畑に上がる段差部分に「据置式コンパクトリフト」が設置されており、車いすやバギーに乗ったままスムーズに農園内へ移動できる仕組みが整えられています。
さらに、現地では床やシートへの移乗を手厚くサポートする体制が組まれています。お子さんたちが畑に直接寝転んで土の感触を確かめたり、サツマイモのツルや葉の匂いを感じ取ったりできるため、「見る」「触れる」「嗅ぐ」といった五感をフルに使った豊かな体験機会が提供されています。
「道の駅しょうなん」立ち寄りでトイレ問題解消と旅行気分を両立
農園体験における最大の懸念点と言える「トイレ・おむつ交換スペース」の課題に対しては、周辺施設との連携による工夫がなされています。
イベントの行程には、充実した多目的トイレ設備を備えた「道の駅しょうなん」への立ち寄りが組み込まれています 。いもほりの前後に道の駅へ立ち寄ることで、衛生面やプライバシーに配慮した状態でトイレや身支度を済ませることが可能となります。
また、多目的トイレの利用にとどまらず、地元の特産品のお買い物や食事を楽しむ時間が設けられており、単なるイベント参加を超えた「ご家族でのプチ旅行気分」を満喫できる工夫がなされています。
首都圏からの「送迎サポート」で移動の負担を軽減
自家用車での移動が難しかったり、長距離運転に不安を感じたりするご家族に向けて、ゆったりとした送迎サポート体制が準備されています。
都内およびJR柏駅からの送迎ルートが用意されており、移動中の安全や快適性にも配慮がなされています。移動に伴う精神的・身体的ストレスを緩和することで、現地到着前から安心して秋の遠足を楽しめるよう工夫されています。
家族全員が主役に!きょうだい児支援とコミュニティの重要性
きょうだい児の心のケアと社会参加の機会
障害福祉の支援において近年特に注目を集めているのが、「きょうだい児」への関わりです。
- きょうだい児(きょうだいじ):障がいや慢性の病気を持つ兄弟・姉妹がいる子どもたちのことを指します。
日常の生活において、保護者の意識や時間が障がいを持つお子さんのケアに集中しがちになることから、きょうだい児が我慢を重ねたり、自分の外出機会が制限されたりすることがあります。
「かたぎりさんちのいもほりツアー」では、きょうだい児も主役としてのびのびと楽しめるプログラムが組まれています。初対面のお子さん同士でも畑で一緒に遊んだり、サツマイモを協力して掘り出したりすることで、子ども同士の豊かな交流が生まれる場となっています。
当事者家族同士がつながる「COCOLON」の地域・社会共生への取り組み
重症心身障がい児のご家族にとって、同じ境遇を持つ家族同士で悩みや喜びを共有できるコミュニティの存在は、心の支えになると考えられています。
本ツアーを企画する「COCOLON(ココロン)」は、特定非営利活動法人EPOが運営するコミュニティで、重症心身障がい児に関わるすべての人に向けた「つながり・学び・遊び・楽しみ」を提供しています。
いもほり体験や青空のもとでのランチ(あおぞらランチ)を通じて、ご家族同士が自然な形で打ち解け、情報交換や交流を深められるあたたかい空間が創出されています。このようなインクルーシブな空間づくりは、第19回キッズデザイン賞〈奨励賞〉や令和7年度東京都女性活躍推進大賞〈大賞〉を受賞するなど、外部からも高い評価を受けています。
「かたぎりさんちのいもほりツアー2026」の開催概要と詳細情報

2026年11月1日(日)開催!イベントのタイムスケジュールと費用
2026年11月に開催される「かたぎりさんちのいもほりツアー2026」の概要は以下の通りです。
| 項目 | 詳細情報 |
|---|---|
| イベントタイトル | かたぎりさんちのいもほりツアー2026 |
| 開催日時 | 2026年11月1日(日)11:15 現地集合/13:30 現地解散(※送迎利用者は9:00~16:00頃) |
| 開催場所 | 手賀農園(千葉県柏市 ※申込確定後に詳細案内) |
| 対象・定員 | 重症心身障がい児とそのご家族 10組40名 |
| 参加費用 | 1名あたり 500円 |
| 送迎費用 | 都内往復:1家族あたり 5,000円JR柏駅往復:1家族あたり 2,000円 |
| 協賛・助成 | 協賛:日建リース工業株式会社助成:公益財団法人JKA・オートレースの補助 |
| 公式サイト | COCOLON イベント特設ページ |
当日の標準タイムスケジュール
- 09:00~10:10頃:送迎利用者のピックアップ(都内・JR柏駅)
- 10:30:「道の駅しょうなん」にてトイレ休憩・お買い物
- 11:15:手賀農園に現地集合、「いもほり体験」&「あおぞらランチ」
- 13:30:手賀農園にて現地解散
- 14:00:「道の駅しょうなん」にてトイレ休憩・お買い物、その後順次送迎
主催団体「特定非営利活動法人EPO」の活動と実績
本イベントを主催する「特定非営利活動法人EPO」は、東京都江戸川区・足立区を中心に、重症心身障がい児を対象とした児童発達支援・放課後等デイサービス「ここね」を展開しています。これまで延べ200名以上のお子さんを支援してきた実績を持ち、福祉支援の知見を地域社会へ還元する取り組みを続けています。
さらに、コミュニティ事業「COCOLON」を通じて、野球観戦やコンサート、インドアお花見など、重症心身障がい児のご家族が社会とつながる多彩な体験型イベントを企画・運営しています。
読者の疑問に答える!障害福祉・インクルーシブイベントQ&A
障害福祉イベントへの参加やバリアフリーなお出かけに関して、読者の皆様から寄せられやすい疑問とその回答をまとめました。
Q1. 重症心身障がい児や医療的ケア児でも、屋外の体験イベントに安全に参加できますか?
A1. 適切な環境調整と専門職によるサポート体制が整っていれば、安全に参加することが可能と考えられます [2, 6, 7]。本ツアーのように、言語聴覚士をはじめとする福祉専門職が現地で移乗補助を行ったり、体調の変化に合わせて休憩できる拠点を近隣に設定したりすることで、安全性を確保しながら自然体験を楽しむことができます。
Q2. 車いすやバギーでの農園移動にはどのような準備や設備が必要ですか?
A2. 主に「段差の解消」と「不整地の補強・誘導ライン」が必要とされます。本イベントでは、日建リース工業株式会社の協力による「据置式コンパクトリフト」を用いて段差を解消し、車いすやバギーのままスムーズに入農できる設計が採用されています。ご家庭で個人利用される場合は、ポータブルスロープの持参や、事前に農園の車いす対応状況を確認することが推奨されます。
Q3. きょうだい児と一緒に参加する場合、どのような配慮があると良いですか?
A3. きょうだい児自身もイベントの主役として楽しめるプログラム作りが大切です。障がいを持つお子さんへのケアだけでなく、きょうだい児同士がのびのび遊べる時間や、保護者の方と触れ合える時間を意識的に設けることで、家族全員の満足度が高まるとされています。
Q4. イベントへの参加申し込みや問い合わせはどこからできますか?
A4. イベントの公式ページ( https://co-co-lon.com/event/potato2026/ )またはCOCOLON事務局のメールアドレス( info@co-co-lon.com )より問い合わせが可能です。定員(10組40名)が設定されているため、参加をご希望される方は早めの確認をおすすめいたします。
まとめ:障害の有無を超えて誰もが自然と触れ合える社会を目指して
「かたぎりさんちのいもほりツアー」は、不整地やトイレ設備といった物理的な壁を、専門職の知見と地域・企業の協力によって乗り越えた先進的なバリアフリー体験モデルです。
車いすやバギーのまま秋の味覚に触れる体験は、子どもたちの五感を刺激するだけでなく、ご家族全体の笑顔や社会とのあたたかい繋がりを生み出す契機となっています。
障害福祉分野におけるこうした取り組みが広がることにより、誰もが自分らしく外出を楽しめるインクルーシブな社会の実現へと一歩近づくことが期待されています。今後のイベント情報やコミュニティの活動に関心のある方は、ぜひCOCOLONの公式サイトをチェックしてみてください。

