難病と共に働く「RDワーカー」とは?新しい働き方の概念を解説

「RDワーカー」という言葉は、難病や慢性疾患を抱えながらも社会参加を望む人々を指します。彼らは、既存の支援制度の枠組みからこぼれ落ちてしまうことが少なくありません。NPO法人両育わーるどは、この現状を「氷山モデル」に例え、表面化している難病の陰には、診断の有無に関わらず症状に苦しむ人々が隠れていると指摘しています。

難病者定義の氷山モデル

難病者が直面する「3つのRare(不足)」とは?支援制度の現状と課題

難病を抱える人々が社会で働く上で直面する課題は、「3つのRare(不足)」としてまとめられています。

支援制度が少ない Rare 社会の認知が少ない Rare 働く選択肢が少ない Rare

  • 支援制度が少ない: 障害者手帳の対象外となるケースが多く、公的なサポートが届きにくい現状があります。
  • 社会の認知が少ない: 外見からは分かりづらい体調のゆらぎが、周囲に正しく理解されないことがあります。
  • 働く選択肢が少ない: 「フルタイムか、退職か」という二択を迫られ、体調に合わせた柔軟な働き方が選べない状況が見られます。

慢性症状の強い難病者の就業率は32%に留まっており、多くの方が「働きたい」という意欲を持ちながらも、社会との接点を失っていると報告されています(難病者の社会参加白書2021より)。

RDワーカーをサポートする具体的な取り組み:相互理解ツールと社会啓発活動

NPO法人両育わーるどは、これらの課題を解決するために多岐にわたる活動を展開しています。

RDワーカーと職場をつなぐ「RDコンパス」「わたしのトリセツ」「RDログ」

難病を抱える人々と職場との相互理解を深めるためのツールを提供しています。

  • RDコンパス: 働くRDワーカーと職場をつなぐ相互理解サポートサービスです。企業や支援機関が当事者の状況を正しく把握し、適切な配慮を行える環境を整えます。
  • わたしのトリセツ: 自身の体調の波や必要な配慮を言語化し、職場でのコミュニケーションを円滑にするためのツールです。
  • RDログ: 日々の体調と業務負荷を可視化するアプリで、データに基づき持続可能な働き方を提案します。

難病者の社会参加を促す理解啓発・アドボカシー活動

持続可能な共生社会を実現するため、以下の活動を通じて社会への提言を行っています。

  • 地方議員勉強会を6回開催し、20自治体で40回を超える議会質問に繋がり、自治体での難病者採用が広がるきっかけとなりました。
  • 『難病者の社会参加白書2025』を4,050冊発行し、約3,800冊が全国へ配布されました。
  • 企業、大学、高校でのセミナー開催、登壇、メディア展開を通じて、理解啓発活動を積極的に行っています。

難病があっても自分らしく働ける未来へ:3つの就業タイプが当たり前に

NPO法人両育わーるどが目指すのは、「RDワーカー」が特別な存在ではなく、多様な選択肢の一つとして当たり前の働き方となる社会です。以下の「3つの就業タイプ」に整理することで、当事者と雇用側の双方の不安軽減と柔軟な働き方の普及を目指しています。

症状の変動タイプ 働き方のヒント

  • ゆるゆる変動: 数週間から数ヶ月単位で体調変動が緩やかで、比較的安定して働くケースが多いタイプ。過重労働や過度なストレスを避けつつ、フルタイム勤務も可能な働き方です。
  • そこそこ変動: 数日単位で体調が波のように上下しやすいタイプ。体調を安定させるために、半日勤務などの時短勤務やフレックスタイム制を組み合わせた働き方が望ましいとされています。
  • せかせか変動: 1日の中でも体調の変動が大きいタイプ。基本的に体調は優れないものの、集中できるタイミングを見計らって高負荷な業務を行い、柔軟に休養を取る超短時間・スーパーフレックスな働き方が提案されています。

RDワーカーという働き方が世の中に広まることで、難病や慢性疾患を抱えていても、自分らしさを尊重しながら社会と繋がれる未来が期待されます。

NPO法人両育わーるどが描く「誰もが望むように生きられる社会」

NPO法人両育わーるどの理事長は、医療やテクノロジーの進展により「難病と就労」が新たな可能性を迎えていると語ります。自治体や民間企業で柔軟な採用事例が増え、国の制度も変革期にありますが、依然として「制度の狭間」や「実態とイメージの乖離」という課題が根深く存在しています。

「ヤングケアラー」のように、「RDワーカー(Rare Disease Worker)」という言葉を提唱し、その存在を可視化することを目指しています。病気という制約を抱える人が働きやすい社会は、育児や介護など、あらゆる事情を持つ人々にとっても働きやすい社会になるはずです。RDワーカーが、次世代の「新しい働き方」を社会に提示していく存在となることが期待されています。

NPO法人両育わーるどは、「誰もが自らの望むように生きられる社会」を目指し、難病者の社会参加を後押しする理解啓発・アドボカシー活動を行っています。詳細については、以下の公式サイトをご覧ください。


Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77