【内容情報】(出版社より)

優生学はかたちを変え、何度でも甦る
一度は封印されたはずの「優生学」が奇妙な新しさをまとい、いま再浮上している。優生学とは「優秀な人間の血統のみを次世代に継承し、劣った者たちの血筋は断絶させるか、もしくは有益な人間になるよう改良する」ことを目的とした科学的社会改良運動である。
かつて人類は、優生学的な思想により「障害者や高齢者、移民やユダヤ人といったマイノリティへの差別や排除、抹殺」を繰り返してきた。日本では「ハンセン病患者の隔離政策」がその典型である。
現代的な優生学の広がりに大きく寄与しているのが「科学の進歩」や「経済の低迷」、そして「新型コロナウイルスの感染拡大」だ。新型コロナウイルス感染症の本当の恐ろしさは、病気が不安を呼び、不安が差別を生み、差別が受診をためらわせることで病気の拡散につながっているところにある。
今こそ優生学の歴史を検証し、現代的な脅威を論じる。

●養老孟司氏、内田樹氏、推薦!
●優生学の歴史から、ゲノム編集や行動遺伝学など最先端の生物学研究までを解説
●新型コロナウイルス感染症が持つ「三つの顔」とは

目次より
第一章 甦る優生学
積極的優生学と消極的優生学/マルティン・ニーメラーの言葉/「神聖な義務」論争 ほか

第二章 優生学はどこから来たのか
「優れた血統」への欲望/ダーウィン進化論の誤用/改良と断種 ほか

第三章 ナチス・ドイツの優生政策
優生学と人種主義の融合/T4作戦/ナチス・ドイツと現代日本の類似点 ほか

第四章 日本人と優生学
日本の優生学の源流/「国民優生法」の成立/日本の「優生保護法」とナチスの「遺伝病子孫予防法」の共通点 ほか

第五章 無邪気な「安楽死政策」待望論
嘱託殺人/「役に立つ」という言葉が切り捨てるもの/「安楽死」と「尊厳死」はどこが違うのか ほか

第六章 能力や性格は遺伝で決まるのか
知能はどれほど遺伝するのか/ゲノム編集の問題点/エンハンスメントと優生学 ほか

第七章 “アフター・コロナ”時代の優生学
浮き彫りになった「健康格差」/チフスのメアリー/生権力/新型コロナウイルス感染症が持つ「三つの顔」 ほか

【著者略歴】
池田清彦(いけだ きよひこ)
生物学者、評論家。早稲田大学名誉教授、山梨大学名誉教授。1947年、東京都生まれ。「構造主義生物学」を提唱。縦横無尽に展開される論説はテレビ番組でも人気を誇る。
『進化論の最前線』(集英社インターナショナル)、『本当のことを言ってはいけない』(角川新書)、『自粛バカ』(宝島社)など著作多数。

  • 発売日 : 2021/4/7
  • 新書 : 208ページ
  • ISBN : 978-4797680690
  • 出版社 : 集英社インターナショナル
  • 言語 : 日本語

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Written by

今井 靖之

findgood編集者、ライター。

大手電機メーカーで半導体電子部品のフィールドアプリケーションエンジニア、インターネットサービスプロバイダのプロモーションやマーケティングに従事。以後フリー。

身内に極めて珍しい指定難病者を抱える。

神奈川県川崎市在住。サブカルヲタク。「犬派?猫派?」と聞かれたらネコ派、猫同居中。