Last Updated on 2025年12月16日 by 菅間 大樹

企業の力で、障がいのある子どもの体験機会を拡張するイベントを実施

2025年7月26日、認定NPO法人 D-SHiPS32、東京都立花畑学園、そして大和証券グループ従業員組合が協働し、特別支援学級の児童と保護者を対象とした「ダイワハートフルフェスティバル in 花畑学園」を開催しました。

このイベントは、障がいのある子どもたちの体験の幅を広げるとともに、保護者が安心して休息できる時間を確保することを目的としています。大和証券グループの従業員ボランティア約100名が参加し、1世帯に1名が寄り添うことで、家族が無理なくイベントを楽しめる環境が作られました。

イベント全体の集合写真

従業員ボランティアが寄り添い、安心と笑顔を支える

イベント会場となった花畑学園の体育館は、夏祭り会場に見立てられ、子どもたちは輪投げ、トントン相撲、ボウリングといった多様なアクティビティを体験しました。さらに、大和証券グループ所属のパラ卓球日本代表選手との対戦や、ジャグリング全日本2位によるパフォーマンスも披露され、スポーツとアートが融合する特別な一日となりました。

体育館での交流と車椅子の子供の様子

当初の目的は保護者が子どもから離れて休息する時間を提供することでしたが、実際の参加状況では、保護者だけでなくきょうだい児や祖父母を含む家族全体が、安心して共に楽しむ姿が多く見られました。家族単位で自然に参加できる環境が整ったことは、インクルーシブなイベントの成果と言えるでしょう。

イベントでは、スタンプラリーなど、子どもたちが楽しめる工夫も凝らされていました。

スタンプラリー用紙

本イベントの体験設計は、D-SHiPS32が展開する「おやポート」プロジェクトの理念と一致しています。「おやポート」は、障がいのある子どもを育てる家庭が抱える日常的なケアの負担を背景に、保護者が安心できる時間を持つこと、そしてきょうだい児が親を独占できる時間を持つことを目指す取り組みです。

本イベントは、「家族にとって無理のない関わり方」と「保護者の心理的負担を減らす仕組み」を企業と共に実現した事例となりました。

「おやポート」プロジェクトの詳細については、以下のリンクをご覧ください。
おやポートについて

調査データが示す保護者負担の背景:放っておけない課題に、企業と共に挑む

障がいのある子どもを持つ家庭では、保護者に大きな負担がかかっている現状があります。2024年12月から2025年1月に認定NPO法人フローレンスが実施した調査では、以下のような結果が示されています。

  • 保護者の約9割が学校付き添いを経験している。

  • 約6割がその際に心身の負担を感じていると回答している。

  • 医療的ケアの約9割が第三者による代替が可能であるにもかかわらず、代替機会は不足している。

出典:認定NPO法人フローレンス「都内在住の障害児・医療的ケア児家庭の学校付き添い実態調査」(2024-2025)

子どもの体験機会と保護者の休息を両立できる取り組みは、まだ十分に多くありません。今回のイベントは、企業との連携がこの課題解決の一手になり得ることを示しました。

卓球ゲームを楽しむ参加者とスタッフ

企業が関わるからこそ広がる、子どもの選択肢

D-SHiPS32は、企業との協働を通じて、障がいのある子どもの体験機会を拡張する取り組みを推進しています。障がいの有無にかかわらず、子どもたちが自らの興味関心に基づいて挑戦できる環境を整えることは、次世代の育成において非常に重要です。

パラスポーツをはじめとする多様な体験機会は、子どもの自己肯定感を高め、将来の選択肢を広げることに繋がります。しかし、家庭や教育現場だけでこれらの機会を十分に提供するには限界があるのが現状です。

企業が社会貢献活動に参画することで、以下の効果が期待されます。

  • 人的資源の活用: 従業員ボランティアによる支援が提供されます。

  • 専門性・ネットワークの提供: 企業が持つ専門知識やネットワークが活用されます。

  • 社会的認知の向上: 取り組みの社会的な認知度が高まります。

これにより、これまで提供が難しかった質の高い、あるいは量の多い体験機会を子どもたちに届けることが可能となります。

また、企業にとっても、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)への理解促進、部門を超えたチームワークやエンゲージメントの向上といった効果が期待できます。これは人的資本投資の観点からも有用であり、企業価値向上とCSR/サステナビリティの深化に貢献する取り組みと位置づけられます。

スタッフと参加者の交流の様子

D-SHiPS32は、企業との共創を通じて、障がいのある子どもの成長機会が限定されない社会の実現を目指し、体験の選択肢が継続的に広がる仕組みづくりを進めていくとしています。

参画企業募集

D-SHiPS32では、従業員参加型の社会貢献プロジェクトを検討している企業を募集しています。企画設計、研修開発、当日運営まで伴走するとのことです。関心のある企業は、以下の問い合わせ先までご連絡ください。

認定NPO法人 ディーシップスミニについて

認定NPO法人 ディーシップスミニは、理事長の上原大祐氏を中心に、「障害があってもなくても、誰もが楽しい体験を通じて社会課題を身近に感じ、共に行動できる未来を創る」ことをビジョンに掲げています。子どもたちが自分を好きになれる「きっかけ」を作り、パラスポーツを身近に感じられる環境を広げています。違いに対する先入観や無関心をなくし、夢を持ち叶えられるという自信を親子に届け、障害を持った子どもたちの可能性を制限しない社会を目指して活動しています。

認定NPO法人ディーシップスミニ 公式ウェブサイト

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77