アスリートからメーカーへ:マイク・シュルツ氏の挑戦
シュルツ氏は、常に一流アスリートとしての顔と、ものづくりの担い手としての顔を併せ持っていました。2008年のスノーモービル事故で片足を失った後、彼はスノーボード競技に耐えうる義足を自ら設計・製作しました。2010年に設立されたBioDapt社は、現在、パラスノーボード・ワールドカップをはじめとする国際パラスポーツ大会に出場する世界の下肢切断アスリートの約90%を支援しています。
コルティナで開催される大会では、シュルツ氏が開発した義肢装具を着用する約25名の選手が出場する予定です。技術の進歩に伴い、エリート競技向け義肢装具の最適化の可能性はさらに広がっており、再現性のある製造、耐久性、修理性、そして様々な環境下での一貫した性能が求められています。
Autodesk Fusion®が義肢設計に革新をもたらす
シュルツ氏は、最後の競技を前に、Autodesk ResearchおよびFusionチームと協力し、長年にわたる義肢開発データや既存のCADモデルをFusionに統合しました。これにより、BioDapt社の設計データがクラウド上で一元管理されるFusion Hubを構築し、設計の信頼性を高めています。
チームは、シュルツ選手の足首フレームとバインディングブレースの改良を最優先課題としました。3Dプリント時間を延長することなく剛性を高め、寒冷環境下での性能と耐久性を最適化。さらに、複数のBioDapt下肢モデルに対応できる穴パターンを追加することで、複数のバージョンを製造する手間を軽減しました。
Fusionの設計・シミュレーション・製造を統合したワークフローにより、シュルツ氏はトレーニングと大会の合間でも迅速な設計反復が可能になりました。その結果、トレーニング中の耐久性が向上し、アップデート以降、部品の故障は発生していません。これは、繰り返し衝撃を吸収する部品にとって重要な進展です。
エリート競技から広がる支援の輪
この提携のインパクトは、エリート競技の枠をはるかに超えるものです。世界保健機関(WHO)の調査によると、世界では25億人以上が1つ以上の補助器具や支援製品を必要としていますが、一部の国ではその利用率がわずか3%に留まっています。BioDapt社の取り組みは高性能スポーツ分野から始まっていますが、その技術は汎用的な設計および製造の問題解決に貢献し、複雑で高性能な製品をより多くの人々が利用できるようにすることを目指しています。
パラアスリートの競技の最前線を支える設計効率、製造性、データの一貫性における進歩は、医療機器から産業機械、建築製品、さらには次世代コンシューマー製品に至るまで、幅広い分野に応用される可能性があります。これらの技術は、信頼性の向上、コスト削減、そして大規模な普及の実現に貢献するでしょう。
今後は、2028年ロサンゼルス大会およびその先を見据え、金属3Dプリントを活用した高度な足首フレーム設計、モーションキャプチャおよび埋め込みセンサーデータの統合による高度解析、FusionのAI機能による設計改善案の自動生成および評価などが今後の研究領域として挙げられています。
両社のコメント
シュルツ氏は、「私のキャリアには常に二つの側面、競技とものづくりがありました。競技を退く今、これまでの経験を次世代のアスリートの支援に活かせることに興奮しています。Autodeskとの協業により、力の伝達の仕組みや材料の疲労箇所をより深く理解できるようになりました。小さな設計変更が、一人だけでなく多くのアスリートに確かな違いをもたらします。私たちの挑戦は、まだ始まったばかりです。」と語っています。
Autodeskの設計・製造担当エグゼクティブ バイスプレジデントであるジェフ・キンダー氏は、「Fusionにより、設計と製造を単一のクラウドベース プラットフォームに統合し、チーム・データ・ワークフローを連携するとともに、AIを活用してコンセプトから生産までの開発を加速します。この統合アプローチにより、あらゆるアスリートが使える高性能な義肢装具イノベーションの再現可能なモデルを生み出します。」と述べています。
BioDapt社とAutodeskについて
BioDapt社は、2010年にマイク・シュルツ氏によって設立されました。負傷兵やアスリート、そして再び活動的な生活を目指す切断者を支援するため、特許取得済みのリンケージシステムとFOX製マウンテンバイク用ショックアブソーバーを採用した耐久性と汎用性に優れた機械式膝関節を開発しています。
Autodeskは1982年に設立された「デザインと創造」のプラットフォームカンパニーです。建設、製造、メディア & エンターテインメント業界における業務の効率化・自動化を促進するソリューションを提供し、より良い未来を築くべく、新たな可能性に挑戦するすべてのイノベーターを支援しています。
関連情報
- 世界保健機関(WHO)の調査: https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/assistive-technology
- Autodesk 公式サイト: https://www.autodesk.com/jp

