Last Updated on 2023年6月28日 by 菅間 大樹
後継者不足の職人技を福祉につなぐ「伝統×福祉」の伝福連携活動を実践するクリエイティブ・シェルパによる、障がいのある若者たちが職人技を身につけて制作した「江戸仕立て都うちわ千鳥型(千鳥うちわ)」の作品とパネルの展示紹介が、渋谷区役所で行われています。
江戸仕立て都うちわ千鳥型(撮影:JAPAN MADE)
全国各地に職人的資質のある異才の若者たちがいます
日本が誇るべき職人技は、需要減と担い手の高齢化により衰退の一途を辿っています。コロナ禍の影響で「これ以上の維持継続は難しい」と、廃業を検討している伝統工芸職人が全国に4割いるというアンケート結果もあるほどです。継承されずに最後の職人がいなくなると、その技術は再現できなくなってしまいます。
一方で、こだわりが強く、集中力があり、細かい反復作業が得意な障がい特性のある若者たちが全国各地にいます。職人的資質に恵まれた彼ら彼女らは、コミュニケーションが苦手なため一般社会での就労が難しく、社会との接点を得ることも容易ではありません。
特別支援学校・特別支援学級などを卒業後、障害者施設に通所して軽作業などをしている方々も多くいらっしゃいますが、施設に通えなくなってしまう方もいます。
伝統的な職人技とつながる機会はまずありません。
渋谷区×伝福連携活動紹介パネル
千鳥うちわの職人技を受け継ぎ、若者たちに技術伝授しています
そのような全国各地の障害者施設を、羽塚順子(クリエイティブ・シェルパ共同代表)が訪問しながら、職人的才能に恵まれた方々の可能性を活かせないかと、2018年、江戸仕立て都うちわ千鳥型(千鳥うちわ)の関東で最後の職人である加藤照邦氏に技術伝授をお願いして藤田昂平(クリエイティブ・シェルパ共同代表)が直伝を受けました。東京都渋谷区においても、障がいのある若者たちに講座形式での技術伝承を行っています。
現在、千鳥うちわのパーツを「和紙」「竹骨」「柄(木工の持ち手)」と3つに分け、各作業を得意とする関東近郊の障害者施設が担当し、和紙原料となる楮(こうぞ)の木を剥いだり、真竹(まだけ)の新月伐採といった、資材調達から制作までを分業して進め、出来上がった3つのパーツを一枚の作品に仕上げています。
渋谷区では、渋谷区手をつなぐ親の会、特定非営利活動法人絆の会(福祉作業所ふれんど)などの協力を得ながら、継続して「竹骨の貼り加工」と「柄(持ち手)の磨き加工」を実施、職人と呼べるレベルの若者が育っています。
また、職人技指導のみではなく、ご本人たちのやる気を尊重し、ものづくりや手仕事の楽しさ、講座の場や関係性の心地よさ、見学に来られる方とのコミュニケーションの喜びなどを感じてもらいながら、障がいのある方々のもう一つの安心できる居場所としての役割も担っています。
毎回の講座を心待ちにして、笑顔で通ってくる個性豊かな受講者もいます。
海外からの受注、グッドデザイン賞・三井ゴールデン匠賞(奨励賞)などを受賞
千鳥うちわの作品は、世界的にも高い評価をいただいており、フランス・パリで人気のクリエーションユニット、バルボステさんで展示販売いただいたり、イタリア・ミラノで活躍されている日本画家、奥村祥子氏の個展でコラボ作品を展示いただくなど、海外にも羽ばたいています。
日本においては、作品レベルの高さに加えて、障がいのある方が実践しているまだ数少ない伝福連携の取り組みモデルとして、三井ゴールデン匠賞(第四回2022 奨励賞)、グッドデザイン賞(2020)などをいただいています。
ミラノでの日本画家コラボ作品
布多天神社(調布市)神楽殿での展示
クリエイティブ・シェルパ
https://creativesher.thebase.in
第四回三井ゴールデン匠賞ファイナリスト
https://mgt.mitsuipr.com/about/winner.html