Last Updated on 2025年12月28日 by 菅間 大樹

車いすを利用している方が転職を考えるとき、向いている仕事(適職)は何か、続けられる仕事は何かと迷われることもあるのではないでしょうか。仕事で苦労している方がいらっしゃる一方で、自分にあった仕事を見つけることで楽しく仕事が続けられているという話も耳にします。

今回は、車いすを利用しながら働いている方78人の体験談やアンケートから、働きやすい職場、業界、業種を調査・分析いたしました。車いすを利用している方に人気の仕事や満足度の高い職場、おすすめの業界や業種など、実際の分析データとともにご紹介していきます。

車いすを利用していることは同じでも、生活状況や働き方などにより悩みはそれぞれだと思います。ご自身の特徴などと見比べながら転職のヒントにしてみてください。

目次

  1. 車いすを利用している方の職場に対する満足度
  2. 車いすを利用している方にとって満足度が高い職場
  3. 車いすを利用している方にとって満足度が低い職場
  4. 車いすを利用している方におすすめの業界
  5. 車いすを利用している方におすすめの職種
  6. 車いすを利用している方の転職活動の進め方
  7. まとめ

1.車いすを利用している方の職場に対する満足度

まずは満足度の高い職場について、その傾向をみてみましょう。

※アンケート「あなたはその会社の就労環境に満足していますか?」を集計して割合を抽出

このグラフは、今回アンケートに回答してくださった方の職場に対する満足度の割合を表したものです。

・とても満足している 15%
・満足している    41%
・満足していない   9%
・全く満足していない 10%

という結果になりました。
半数以上の方が職場に対して満足していることが分かります。

では、「満足度が高い職場」にはどんな特徴があるのでしょうか?

2.車いすを利用している方にとって満足度が高い職場

次のグラフは、車いすを利用している方の職場に対する満足度が高いと答えた方の理由を集計した結果です。

※アンケート「あなたが答えた満足度について理由を教えてください」を分類しプラス評価している内容を集計して割合を抽出。5人未満の少数回答は除く。

満足度が高いと感じる1番の理由は「施設や設備が整っている」

車いすを利用する方が働く際には、職場の施設や設備が働きやすいよう整っていることが必要不可欠です。トイレやちょっとした段差、道の広さなど一般の方には何ともないことでも、車いすを使用している場合は働きやすさに直結します。施設や設備が整っていることは職場の満足度が高いと感じる上で必須と言えるのではないでしょうか。

では「施設や設備が整っている」職場に関して寄せられたコメントを見ていきましょう。


上司に相談し、トイレの改造を始め、車椅子で働けやすい環境に対応して頂いた
自動車・運輸・輸送機器、エンジニア・技術職

バリアフリーで車椅子動線が確保され、病気についての理解があったから
医療・福祉・介護、福祉関係、男性

物のしまう場所の変更とレイアウトの変更。車椅子で移動しやすいところに座席がある
団体・連合会・官公庁、一般事務、女性

設備やスペースには不自由がなく、通勤手段も自家用車の利用が認められていること
化学・素材、軽作業、男性

コメントからは、「施設や設備が整っている職場」とは以下のような職場だとわかります。

  • 車いすでも利用しやすいトイレがある
  • 職場内をスムーズに移動するための動線が確保されている
  • 物の置き場所やレイアウトが工夫されている

また、車いすを利用している方は、通勤に関する悩みを多く取り上げています。職場の中の設備が整っているだけでなく、車通勤の可否や職場までの距離なども重要になりますね。

一番上に紹介したコメントで「上司に相談し、トイレの改造を始め、車いすで働けやすい環境に対応して頂いた」というものがありました。働きやすい環境が整っていない場合は、車いすの方の雇用に合わせて設備の改装を施してくれるのが理想ですが、全ての職場でそのような対応ができるとは限りません。
しかし、大きな改装ができなくても、物の配置や周辺の動線を確保してくれるなどの対応は満足度の高さにつながります。

では次に、満足が高い職場の2番目の理由について見ていきましょう。

満足度が高い職場の「2番目の理由」:病気や障害に対して理解がある

設備と制度が整っていても、上司・同僚の理解と相談しやすさがなければ継続就労は難しい、という指摘が目立ちます。合理的配慮の相談窓口こまめなフィードバック席配置や備品調整への迅速対応など、心理的安全性を担保する職場は満足度が高い傾向です。


3. 車いすを利用している方にとって満足度が低い職場

アンケートの自由記述からは、以下の特徴が不満・離職要因として繰り返し挙がりました。

  • バリアフリー未整備:段差・狭い通路・非対応トイレ・エレベーター未設置など、物理的障壁が日常的な業務に直結して支障となる。
  • 通勤配慮の欠如:ラッシュ時の乗車困難、マイカー通勤不可、時差出勤や送迎がないなどで出社自体が負担になる。
  • 理解不足や不適切な対応上司・同僚の無理解、ハラスメント、配慮依頼への後回し/否認などで心理的負担が増幅
  • 長時間同一姿勢の強要:体圧・褥瘡・貧血リスクへの配慮がなく、休憩・体位変換の自由度が低い

4. 車いすを利用している方におすすめの業界

アンケートの就業先と満足理由の傾向から、次の業界が比較的働きやすいと考えられます。

  • 官公庁・公共団体バリアフリー整備が進んだ庁舎障害者雇用の受け入れ体制事務系配置が多く心理的安全性が高め。
  • IT・通信在宅・ハイブリッド勤務が浸透成果ベースで評価されやすい。機器・ソフト面の合理的配慮が取りやすい。
  • 医療・福祉・介護関連の事務部門障害理解が高い通勤・動線配慮の慣れがある。
  • メーカー/研究機関(オフィス部門)設備改修への投資判断が比較的進み、席配置・動線変更などの物理的配慮が通りやすい。

※各業界でも建物の新旧部門特性により差があるため、**現地見学(バリアフリー確認)**が有効です。


5. 車いすを利用している方におすすめの職種

アンケートの就業実態から、座位中心・PC中心時間調整が可能な職種が選ばれています。

  • 一般事務/経理/総務/人事(事務系全般)通路・席配置の調整で継続しやすく、体位変換や小休憩を取り入れやすい。
  • カスタマーサポート/インサイドセールス在宅化との相性が良く、音声・チャット中心で働ける。
  • ITエンジニア/Web制作/データ分析成果基準で評価されやすく、フルリモートの選択肢も拡大。
  • 企画・広報・編集・ライティングコンテンツ制作は在宅と相性が良く、勤務スケジュールを調整しやすい。

6. 車いすを利用している方の転職活動の進め方(アンケート実例に基づく手順)

アンケートの成功事例・アドバイスから整理した実践手順です。

① 条件の棚卸し(必須条件/あると良い条件の分離)

  • 必須:段差解消・エレベーター・多目的トイレ通路幅机周りスペース車通勤可/時差出勤など。
  • 望ましい在宅併用相談窓口ジョブコーチ休憩の取り方の柔軟性

② 情報収集と現地確認

  • 求人票だけでなく、ビル図面・トイレ仕様・入口動線を人事に確認。可能なら面接前見学で動線テストを行う。

③ 合理的配慮の事前合意

  • 席配置変更/備品追加(昇降デスク・手すり)/在宅比率/時差出勤など、入社前に合意形成

④ 通勤計画の策定

  • ルートの混雑回避送迎や駐車場の確保、**雨天時の代替策(ポンチョ等)**も準備する。

⑤ 面接での伝え方

  • できる業務/必要な配慮/自助工夫をセットで伝える。「課題→対策→成果」の順で具体例を提示。

⑥ 入社後の運用

  • 定期的な振り返り(動線・体位変換・休憩の取り方)を上司と共有し、小さな改善を積み重ねる。


7. まとめ

  • 満足度の鍵は、設備(ハード)+制度・理解(ソフト)の両輪。トイレ・動線・席配置などの物理的整備に加え、在宅・フレックス・時差出勤や心理的安全性がそろう職場は満足度が高い。
  • 業界・職種選択では、官公庁・IT・医療福祉の事務など、バリアフリーが進んでいて在宅とも相性が良い領域が狙い目。
  • 転職活動は、必須条件の明確化→現地確認→合理的配慮の事前合意の3ステップで、通勤計画面接での具体的な伝え方を準備すると成功率が上がる。

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77