なぜ今、「スポーツと人権・多様性」の議論が必要なのか?
アジア45の国・地域が参加する愛知・名古屋2026アジア競技大会は、スポーツを通じた国際交流や相互理解、平和を促進する貴重な機会です。しかし、スポーツ界全体では、ジェンダー、セクシュアリティ、国籍、人種、障害、宗教などを理由に、スポーツの場から遠ざけられたり、ハラスメントやアスリートのメンタルヘルス問題が深刻化するなどの課題が指摘されています。
特に近年は、トランスジェンダー女性に加え、性分化疾患(DSD: Differences of Sex Development)のあるアスリートをめぐり、その人権が十分に保障されないまま、競技カテゴリーのあり方が議論されるケースも見られます。このような状況において、誰もが安心して参加できるスポーツ環境をどのように実現していくかは、喫緊の課題と言えるでしょう。
アジア地域では、LGBTQ+に関する法制度や社会的受容の状況が国ごとに大きく異なり、スポーツへの参加機会や安心・安全の確保にも差があるのが現状です。本フォーラムは、欧米のモデルをそのまま持ち込むのではなく、アジアの多様な文化や社会の中で、スポーツを通じた人権・多様性・包摂についてどのような連携や取り組みができるのかを、真剣かつ前向きに話し合う場となります。
全4セッションで深掘りする「インクルーシブなスポーツ環境」
本フォーラムでは、アスリートの経験談から法整備の課題、スポーツ団体の具体的なアクションまで、多角的な視点から議論が展開されます。各セッションの詳細と登壇者を紹介します。
第1部:アスリートと考える安心・安全なスポーツ空間づくり
スポーツ現場におけるハラスメント防止や多様な身体・アイデンティティへの理解を通じて、誰もが尊重されるセーフスポーツ環境のあり方を考えます。
-
登壇者:
-
髙橋 藍氏(公益社団法人日本ボクシング連盟 理事/元シュートボクシング日本フライ級王者)
-
藤岡 奈穂子氏(順天堂大学大学院 博士前期課程/ボクシング世界5階級制覇王者)
-
川村 慎氏(一般社団法人 Japan PDP 代表理事)
-
-
モデレーター:小塩 靖崇氏(東京大学スポーツ先端科学連携研究機構 特任講師)
第2部:アジアのアクティビストと考える法整備とLGBTQ+
アジア各国・地域のLGBTQ+を取り巻く法制度や社会状況は多様です。本セッションでは、各国の課題と実践を共有し、アジアの文脈に根ざした権利保障や市民社会の役割について議論します。
LGBTQ+とは、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)、クィア/クエスチョニング(Q)の頭文字を組み合わせた言葉で、性の多様性を表す総称。「+」はこれらに含まれない多様な性のあり方を示すものです。
-
登壇者:
-
Riska Carolina氏(ASEAN SOGIE Caucus アドボカシー・オフィサー)
-
Manisha Dhakal氏(Blue Diamond Society〈ネパール〉事務局長)
-
松岡 宗嗣氏(一般社団法人fair 代表理事)
-
-
モデレーター:西山 朗氏(一般社団法人LGBT法連合会 参事)
第3部:分断が深まる時代に、スポーツは何ができるのか
スポーツは多様性やインクルージョン(多様性を受け入れ、一人ひとりが尊重され、能力を発揮できる環境を創り出すこと)を推進する場として期待される一方で、ジェンダー、セクシュアリティ、人種、宗教などをめぐる対立や分断が可視化される場にもなっています。国際オリンピック委員会(IOC)が発表した遺伝子検査導入の方針なども踏まえ、より包摂的なスポーツと社会のあり方を考えます。
-
登壇者:
- Payoshni Mitra, PhD(Human of Sport 代表理事)
-
モデレーター:野口 亜弥氏(成城大学 スポーツとジェンダー平等国際研究センター 副センター長)
第4部:スポーツ団体のプライドアクション
近年、スポーツ界では、ハラスメントや差別を防ぎ、選手をはじめとする関係者の安全と尊厳をいかに守るかが重要な課題です。本セッションでは、国内外のスポーツ団体によるセーフガーディング(ハラスメント、虐待、差別のリスクから参加者を保護するための政策や実践)やLGBTQ+インクルージョンの取り組みを共有し、競技現場、職場、ファンコミュニティにおける包摂的な環境づくりについて議論します。
-
登壇者:
-
日比野 暢子氏(桐蔭横浜大学大学院スポーツ科学研究科 教授/日本サッカー協会「Access for All」ワーキンググループリーダー)
-
杉山 文野氏(公益財団法人日本オリンピック委員会〈JOC〉理事/公益社団法人日本フェンシング協会 理事)
-
-
モデレーター:多田 雅之氏(公認会計士)
イベント参加詳細と主催団体について
「スポーツ・多様性・社会を考えるアジア対話フォーラム」への参加は、現地またはオンラインで可能です。障害福祉に関わる方々、アスリート、研究者、企業関係者、学生など、幅広い層の参加が期待されます。

開催概要
-
名称:スポーツ・多様性・社会を考えるアジア対話フォーラム(Asia Dialogue on Sport, Diversity and Society)
-
日時:2026年9月20日(日)11:00~18:30
-
会場:名古屋国際センター NIC別棟ホール/オンライン配信
-
アクセス:地下鉄桜通線・東山線「国際センター駅」直結(愛知県名古屋市中村区那古野一丁目47番1号)
-
参加方法:現地参加またはオンライン視聴
-
参加対象:スポーツ関係者、アスリート、研究者、人権・LGBTQ+に関わる活動者、企業関係者、市民、学生、報道関係者
-
詳細・参加申し込み:
主催団体:NPO法人プライドハウス東京
本フォーラムを主催するNPO法人プライドハウス東京は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を契機に、LGBTQ+に関する理解を広げることを目指して立ち上がったプロジェクトです。現在は「ともに学ぶ」「ともに支える」「ともに動く」をテーマに、協働プログラムの企画・実施や多様性に関するイベント・コンテンツを提供しています。
2020年10月11日には、新宿御苑駅近くに日本初の常設大型総合LGBTQ+センター「プライドハウス東京レガシー」を開設し、運営しています。
-
公式ホームページ:https://pridehouse.jp/
-
プライドハウス東京レガシー:https://pridehouse.jp/legacy/
共催・協力、助成、後援
-
共催・協力:NPO法人ASTA、名古屋レインボープライド、ほか
-
助成:日本財団
-
セッション助成・協力:Heinrich Böll Foundation(第2部)/成城大学スポーツとジェンダー平等国際研究センター(SGE)(第3部)
-
後援:公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)
まとめ:誰もが輝けるスポーツの未来へ
「スポーツ・多様性・社会を考えるアジア対話フォーラム」は、愛知・名古屋2026アジア競技大会という国際的な舞台の裏側で、スポーツが持つ本来の価値と可能性を再認識する機会となるでしょう。障害の有無、性的指向、性自認などにかかわらず、誰もが安心してスポーツを楽しめる環境づくりは、社会全体のインクルーシブな発展に繋がります。このフォーラムでの議論が、より多くの人々がスポーツを通じて繋がり、互いを尊重し合える社会の実現に寄与することが期待されます。



