パニック症は「治る病気」:精神科医が伝える希望のメッセージ

パニック症は、多くの人が誤解しているかもしれませんが、「治る病気」です。本書の著者である精神科医・坂元薫氏は、長年の臨床経験から、パニック症が適切な診断と治療によって克服できることを力強く伝えています。パニック発作を繰り返していても医療機関を受診しない人や、正しく診断されないケースもまだ多いのが現状です。これは、パニック症に関する正しい知識が社会に十分に浸透していないことが一因かもしれません。

治療には発作を防ぐ方法があり、予期不安や広場恐怖、他の精神疾患も併行して治療可能です。治療期間は長期にわたることもありますが、着実に快方へと向かうことが期待できます。一方で、不適切な治療は逆効果になることもあるため、専門家による適切なケアが不可欠です。

パニック発作のサインと症状:早期発見が回復の鍵

パニック発作は、突然、激しい恐怖感や不快感とともに、以下のような身体的・精神的症状のうち4つ以上が同時に現れる状態を指します。心臓のドキドキ、汗、震え、息苦しさ、窒息感、胸の痛み、吐き気、めまい、寒気やほてり、しびれ感、現実感の喪失、コントロールを失う恐怖、死への恐怖などです。これらの症状は、心電図や採血などの身体検査では、頻脈を除いては異常が見られないことが多いのが特徴です。

パニック発作は、健康な人にも起こりうるもので、病気を発症した際に「まさか自分に限って!」と思う人は少なくありません。ストレスの感受性が高い人が発作を起こしやすい傾向があり、「不安体質」と表現されることもあります。早期にこれらのサインに気づき、適切な医療機関を受診することが、回復への重要な第一歩となります。

放置は禁物!パニック症と他の精神疾患との関連性

パニック症は、放置すると症状が高度化してしまう可能性があります。パニック発作が頻繁に起こる前に治療を開始していれば、うつ病、全般性不安症、社交不安症、特定の恐怖症、心的外傷後ストレス症(PTSD)、強迫症、分離不安症、気分変調症、双極症などの他の精神疾患の併発を避けられることもあります。しかし、治療をせずに放置する期間が長くなると、これらの疾患を併発する可能性が高まり、パニック症とは異なる症状が現れ、治療が難しくなる「難治化」のリスクが高まります。

複数の精神疾患を併発した場合、本人だけでなく医療者にも気づかれにくいことがあり、それが治療の遅れにつながることもあります。震えや汗が止まらないといった症状だけでなく、憂うつな気分や興味の喪失、意欲の低下などが2週間以上続く場合は、うつ病を合併している可能性も考えられます。早期の受診と適切な診断が、症状の悪化を防ぎ、回復を早める上で極めて重要です。

医師との二人三脚で挑む治療:信頼関係の重要性

精神疾患の多くは、正しい診断と治療によって改善が期待できます。その回復への第一歩となるのが、医師による丁寧な問診です。問診では、いつ頃から、どんな時に、どのような症状があるかといった詳細な症状についてだけでなく、精神疾患やその他の病気の既往歴、現在服用中の薬、家族構成や仕事の状況、生活習慣など、プライベートな内容にまで踏み込んで質問されます。

体調や症状について詳しく伝えられないと感じるかもしれませんが、医師には守秘義務があるため、安心して話すことができます。医師と患者が信頼関係を築き、二人三脚で治療を進めることが、克服への道を確かなものにします。わからないことは遠慮なく質問し、医師の話に耳を傾ける姿勢が大切です。

日常生活でできるセルフケア:自律神経を整える習慣

回復と克服への道筋には、医療機関での治療だけでなく、日常生活でのセルフケアも非常に重要です。本書では、自律神経を整え、リラックス状態を継続させるための具体的な生活習慣のアドバイスが充実しています。最初から全てを完璧にしようとせず、まずはどれか一つでも見直すことから始めるのが良いでしょう。一つ改善できれば、それが次の改善へとつながっていきます。

見直したい5つの習慣として、以下の点が挙げられています。

  • 考え方:曖昧なことを受け入れる、「よいこと」を探す、物事を客観的に見る、「だったらいいな」という感覚を持つ。

  • 睡眠:意識的に睡眠や休息をとる、毎日決まった時間に起き朝日を浴びる、寝る90分ほど前に湯船に浸かる。

  • 食事:1日1.5〜2リットルの水を飲む、塩分・甘いものをとりすぎない、カフェインレスを心がける。

  • 運動:仕事や家事の間にストレッチ、体を伸ばす運動と呼吸、定期的な軽い運動(ジョギングなど)、腕を大きく振り大股で歩く。

  • 姿勢:お腹と背中をくっつけるイメージ、背筋を伸ばす、スマホなど下を向く状態を減らす、深い呼吸(吐くことをより意識する)。

これらの習慣は、体内時計のリズムに合わせた生活を送ることで、体のあらゆる機能を正常に働かせることを目的としています。「なにがなんでも規則正しい生活をしなければ」と強迫的に思うのではなく、「だったらいいな」という柔軟な気持ちで取り組むことが、心身の健康につながります。

書籍『図解 いちばんわかりやすいパニック症』の全貌

本書は、パニック症の実態から診断、治療、そして回復と克服への道を網羅的に解説しています。読者が自身の状態を理解し、適切な行動をとるための手引きとなるよう、多岐にわたるトピックが図解でわかりやすくまとめられています。

新刊情

※電子書籍は6月以降に発売予定です。詳細は各電子書籍ストアでご確認ください。

著者紹介:精神疾患医療の第一人者、坂元薫氏

本書の著者である坂元薫氏は、1956年東京生まれの精神科医です。東京科学大学(旧 東京医科歯科大学)医学部を卒業後、現在は赤坂クリニック院長を務めています。気分症や不安症の臨床と研究に長年従事しており、その知見は多岐にわたります。臨床現場での実務や研究に加え、講演活動や著書を通じて、心の病に対する「正しい知識の普及」に力を入れています。その活動は、多くの人々が精神疾患と向き合い、回復への道を見つけるための大きな支えとなっています。

まとめ

パニック症は、決して一人で抱え込む必要のある病気ではありません。適切な知識と支援があれば、誰もが回復し、克服できる可能性を秘めています。精神科医・坂元薫氏の最新刊『【読む常備薬】図解 いちばんわかりやすいパニック症』は、そのための具体的な道筋を示してくれる一冊です。もしご自身や大切な人がパニック症の症状に悩んでいるなら、ぜひ本書を手に取り、回復への一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。正しい知識と理解が、より穏やかで豊かな生活へとつながるはずです。

 

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
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